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INTERVIEW

Overseas

POP ETC

2016年02月号掲載

POP ETC

Member:Christopher Chu(Vo)

Interviewer:吉羽 さおり

-普段の曲作りでは、メロディ、フレーズ、歌詞、あるいは雰囲気など、どういった順番で曲が生まれることが多いですか。弟さんが先に曲を作ってそこにあなたが歌詞をつける形?

実はあの曲(「I'm Only Dreaming」)はレアケースで、通常は同時進行なんだ。何もないところから曲を作るのが好きだからね。特に今は自宅でレコーディングしているから、何か思いついたらすぐトラックを作るんだ。歌詞を書くときに、インストの部分も思い描きながら書いているからね。そのラフ・バージョンをすぐに作って、それができたらみんなに聴かせる。そこから本格的な手入れやレコーディングが始まるんだ。僕が最初に思いついたアイディアは、完成した曲の20%くらいかな。「I'm Only Dreaming」はJonがすでにバッキング・トラックを作っていて、僕がそれをとても気に入ったんだ。

-そのレアケースも、日本に住んでいたという特別な状況のたまものかも知れませんね。

それは間違いないね。弟から送ってきたトラックだったのも大きかった気がする。日本に住んでいたときは、家族や(本国の)友達が一緒だったらよかったのにと思うことがいっぱいあったからね。僕が日本で得た経験をみんなとシェアできればよかったなんて思って。でも日本は遠いし、飛行機代も高いし。だからJonと作業ができて、あいつはニューヨークにいたけど、繋がっている感じがして嬉しかったんだ。

-Twitterでは、日本語でツイートしたりもしています。日本語の音、語感というのも曲へのきっかけになっているんでしょうか。何か、面白いなと思った言葉はありますか。

もちろんあるね。日本によく行き始めたころは、とにかく音の響きにワクワクしたよ。そのあとだんだん言葉がわかるようになってきて、ニュアンスの違いが多彩な言語だなと思った。ひとつのものを表現する単語もたくさんあるし、英語には存在しないような、意味が極めて限定されている単語もいっぱいあるしね。英語から入るととても興味深いんだ。英語にない単語でも......例えば僕は"ナツカシイ"という言葉がとても好きなんだけど、それを正確に言い表せる英語の単語が何なのかわからないんだ。

-たしかに"nostalgic"とはちょっと違うような気はしますね。言いたいことはわかります。

そう、僕もそう思うんだよね。いろんな人に"nostalgicじゃないの?"って言われたけど、何かが違うんだよな。その単語の使い方を観察していると、何となく違う感じがするんだ。そういう、英語と新しく学ぼうとしている言語の狭間にあるような言葉を知るとワクワクするよ。ソングライターとしてもミュージシャンとしても、常にそういう興味深い物事や、言葉を超えたところに存在する情緒を探し求めているからね。だから日本語の言語にもとても興味があるんだ。

-あなたの日本語のツイートはパーフェクトだと付け加えておきます。ちゃんとご自分の感情を伝えられていると思いますよ。漢字も駆使していますしね。

よかった。そうなるように努力はしているよ(笑)。

-これまでに日本のアーティストともコラボレーションを行ってきて、今回のアルバムでもボーナス・トラックでGalileo GalileiのTrack.12「Jonathan」のアコースティック・カバーや、尾崎雄貴貴(Galileo Galilei)が日本語バージョンで歌った「Please, Don't Forget Me」も収録されました。特にGalileo Galileiとは作品のプロデュースからともにツアーをしたりと親交もより深くなっています。あなたにとって彼らはどういったバンドですか。また、今回なぜ、日本語で歌ってもらおうと?

GGは素晴らしいバンドだよ。自分たちにとっては日本の文化を教えてくれる先生でもあるんだ。言語も音楽もね。それに、アルバム制作に携わるために日本に呼んでくれたり、本当にたくさんの機会を与えてくれた。最初はどういう感じになるかまったく見当がつかなかった。仲良くなれるかも、何が起こるかもわからなかったんだ。でもラッキーなことに出会ったそのときからすごく自然な形で親しみを感じたし、今じゃ個人的にも大の仲良しなんだ。それまでも他のバンドとコラボしたことはあったけど、必ずしもそういうふうになるわけじゃないからね。僕はとにかくGGが大好きで、メンバーが全員大好きなんだ。「Please, Don't Forget Me」はGGにとても大きな影響を受けているからね。一緒にやったときから。デモを聴かせたときにもとても喜んでくれて、それがアルバム作りを続けるためのインスピレーションにもなったんだ。それまで僕たち3人だけでずっとアルバム作りをやってきて、ときには自分たちの小さな世界に閉じこもってしまったような気分にもなっていたからね。誰も僕たちの曲を聴いていなくてさ。彼らが喜んでくれたことで、僕たち自身も期待が高まったんだ。それにGGのカバーはみんな好きだからね。それでユウキ(尾崎雄貴)が歌ったらいいんじゃないかと思って、ユウキに日本語の歌詞を書いてもらったんだ。そうしたら僕たちの日本のファンにとってもクールになると思ってね。

-その歌詞は英語の歌詞をもとに作ったものなのでしょうか。

そうだよ。基本的には翻訳だけど、日本語の詩的ないい言い回しがあったらそれにこだわらなくていいから、という話はしたんだ。さっきのニュアンスの話に通じるものがあるけどね。同じように、「Jonathan」も僕が英語の歌詞を作った。原曲の歌詞と似たようなフィーリングを伝えてはいるけど、ディテールが少しずつ違うんだ。

-聴き比べるのも、独立した曲として聴くのも面白そうですね。

そうだね。それが狙いだったんだ。それに日本用のボーナス・トラックは、日本のファンにとってスペシャルなものにしたかったからね。GGはアメリカではまだ知らない人が多いから、そういう意味でも意義あるものになったと思う。

-先ほどの質問とも重複してしまいますが、他のバンドをプロデュースした経験で、何か今回のアルバムやPOP ETCに活きていることはありますか。

もちろん! さっきの話になるけど、制作のプロセスを見ているだけでも大きなインスピレーションになったよ。日本のアーティストが全員そうなのかはわからないけれど、少なくとも僕が一緒に仕事した人たちはとても勤勉で、熱心だったね。みんな個性的だから、それぞれがまた違った形で影響を与えてくれているんだ。ヨウコ(菅野よう子)との仕事も最高だったね。幼いころにTVアニメ"カウボーイビバップ"をよく観ていたんだけど、彼女はその音楽を手掛けたんだ。僕が書こうとしていたタイプの音楽とは違ったけど、その多様性に惹かれたんだ。いろんなスタイルを用いているのに何を聴いてもヨウコだってわかる。それほど特徴的な声やフィーリングの持ち主だからね。彼女との仕事でそれを目の当たりにしたことにも大きな影響を受けたと思う。僕のヴォーカル指導もしてくれたんだけど、僕の声がどう聴こえるか、彼女から意見を聞くのはとても興味深いものがあったよ。今回ヴォーカルを録ったときもそのときのことをよく思い出していたな。歌い方にもいろいろあるからね。感情の伝え方も。そういう意味でヨウコには大きな影響を受けたんだ。

-つい最近も日本でのライヴはやりましたが、また今回のアルバムを携えてのツアーも考えていますか。

もちろん考えているよ! 具体的にいつになるかはまだわからないけどね。というのも、アメリカでも同じくらいのころ(※1月29日/日本は1月27日)にアルバムがリリースされるから、こっちでいろいろ予定があるんだ。今年はSXSWにも出るしね。でも、日本は言うまでもなく超プライオリティだから。日本にたくさん影響されて作ったアルバムだから日本でやりたいっていうのもあるし、僕たちは日本のファンのことをとても大事に思っているから、感謝の気持ちを表せる機会が欲しいんだ。アルバムのことがなくても日本は大好きだしね。早くまた行きたいっていつも思っているよ。できるだけ早い段階で行きたいから、レーベルにもずっとはっぱをかけているんだ(笑)。