Japanese
FLiP
2014年10月号掲載
Member:Sachiko (Vo/Gt)
Interviewer:沖 さやこ
-FLiP第2章の幕開けは、まず7月に配信限定リリースされたTrack.3「MADONNA」ですが、この遊び心たっぷりの譜割りは"楽しみたい"というのがわかりやすく表れていますね。日本のものを洋物に変換させているというか。
それは意識しました。どれだけ洋楽を聴いて影響されても、日本人らしさは自然と出るものだと思うし。どれだけ自分が好みだと思える譜割りやサウンドを作れるかとか、そこは徹底的にやりたいなと思ったので。曲は基本的に直感的に作るんですけど、途中で客観視をして"ここは歌謡っぽいな"と思ったらそのメロディは変えて。それは自分ひとりでおうちで曲作りをしていたからこそできたことでもあるなと思います。
-Skream!で連載なさってるコラムにも"Pro Toolsをゲットした"と書いてらっしゃいましたものね。シンセはSachikoさんが弾いてらっしゃるようですが、シンセを入れるのはデモの段階から考えてらっしゃったんですか?
考えてました。Pro Toolsを導入したタイミングでシンセも手に入れて。でもシンセに飲み込まれたくなかったので、あくまで4人の出すロック感の中にプラスアルファで入れられたらいいなと思って。たぶんアレンジャーさんが入ったらきっとガラッと違う(シンセがメインになるような)ものになってたと思うので、それはしたくなくて。今は第2章のFLiPのサウンド感をまず自分たちで作らなきゃいけない、それがないと次に進めないというのはあったんで。"メンバーすらドキッとさせられるものを作れなかったら誰がFLiPのライヴ行きたいと思うの? それが作れなかったら自分は音楽なんて辞めたほうがいい"と思ってたから(笑)、デモを聴いてメンバーがすぐ"これやりたい""すぐスタジオ入って演奏したい"とメンバーが言ってくれたときはすごく嬉しかったです。お客さんが"FLiP変わったね"と言ってくれるということは、その人をドキッとさせられているということだと思うし。そういうものを与えたいんで。
-歌詞にある"未完成でいたい""有り触れた愛は要らない"は決意表明ですね。
そうなんですよね(笑)。この3曲の中で1番最初に歌詞を書いたのが「MADONNA」なので。その次が「GIRL」、最後が「BURROW」。なのでこのシングルは気持ちが変化していく過程がすごく出ていると思います。"未完成でいたい"というのは、余白を持った人生の方が楽しいなと思って。常に自分に可能性を感じている方が楽しいじゃないですか。"次はあれができるかも""自分のここをもっと伸ばせるんじゃないか、そしたらもっと個性的になるんじゃないか"とか。自分に期待している人の方が輝いていると、客観的に見ても思うんですよね。
-Track.1「GIRL」は女性らしさを芯に持つFLiPが女性に向けたメッセージ・ソングですが、そのメッセージの先は女性でないといけなかった?
感覚というのは男女共通のものもあるけど......私、P!nkやKaty Perryも大好きで、P!nkの「Fuckin' Perfect」にすごく感動して。歌詞の和訳には"死ぬほど美しいのよ、そういう可能性を秘めているのよ"みたいなことが書いてあって、PV見ながら泣いてしまって。それくらい力強い人間に惹かれる自分がいるからこそ、私も誰かのそういう存在になりたいなと思ったんですよね。だからより女の子の気持ちにフォーカスをあてて。この曲はなんの抵抗もなく"あ、「GIRL」だな"と思いました。やっぱり同性同士の気軽に飲みに行けるフランクな関係とか、気負わずに付き合える関係とか、深夜に電話したくなって電話しちゃうとか......大切だなと思うし。そういう独特の感覚は、同性同士だからあるものだと思うんですよね。そういう気持ちを大切に作りました。(リスナーと)心の距離が近づいたらいいな......というか、自分から付き合っていきたいと思ったんです。
-「GIRL」と「MADONNA」は4人の呼吸が合わさってひとつのものを作り上げているけれど、Track.2「BURROW」はギターが引っ張るアプローチなので、3曲の中では変化球でもありますね。
「BURROW」のデモは、実は「MADONNA」ができるもっと前からあって。でも、完成していった順序は「MADONNA」、「GIRL」、「BURROW」なんです。「BURROW」は"まだ物足りないんだよね"ってデモをバンドでブラッシュ・アップして、そこから私が筋道を立てて展開を変えたりして。だからある意味、今までのFLiPの匂いも残っているというか。この3曲を並べて聴くと不思議な感覚になりますね。"「BURROW」濃いな!"って(笑)。シングルだけど、面白いものになったと思います。
-そうですね。素のご自分でありつつも、素を表現するために変化はいろいろあって。歌詞も今まではご自分の深いところを掘り下げて言葉を書いていたけれど、"客観視"の要素は強いと思います。
歌詞は変えました。書くときの気持ちの落としかたの深さを、少し浅くしたんですよね。今まで、特にバラードは泣いてなんぼくらい深いところを歌っていたので(笑)、スーパー落ち込んでいる人が聴くと気持ちいいのかもしれないけど、通勤時とか登校中に聴くとなると少しヘヴィかな......って内容だったから。でもそれが自分だったし、それがやりたくてやってた――寧ろその書きかたしかしたくない!って意地を張ってて(笑)。だから重いとか暗いとか言われたところで"だから何?"みたいな感じだったんですけど、今はサウンドも違った視点からFLiPの素を出せているからこそ、歌詞も同じ目線で書きたいなと思って。もっと日常スタイルというか、ライフスタイルにフォーカスをあてました。音楽も、こうやって(人と)喋ってるときと同じような感覚でできたらいいなって。日記を書く感覚で歌詞を書きたいなと思ったんですよね。でも根底が180度変わったわけではないので。......やっぱり暗いものも好きだし(笑)。でも普通に浮遊感のあるものも好きですし。今FLiPがやりたいこと、自分がやりたいこと、言いたい言葉は違うところにある――その引き出しかたはまだ過程だなと思います。
-"こういう面も出せるようになってきたんだよ"ということですよね。
うん。みんなにはそういう感じで受け取ってほしいですね。FLiP自体が「GIRL」や「MADONNA」を出したことに抵抗が何もないんですよね。だからみんなが"変わった"とざわついているのと若干温度差はあるんです(笑)。まあそう言われるかもしれないけど、自分たちにとっては内にあった一面のひとつだから。無理して作って出しているものでもないし、第2章になったからといってリセットしたわけじゃないし。あくまで今までの延長線上なんですよね。これまでのソリッドな音が良かったという人もいるとは思うんですけど、そういう人たちにも"変化していくFLiPっていいよね"と言ってもらえるものを作っていきたいと思います。わたしが個人的にロックだと思うことってネガティヴ要素をどれだけポジティヴにできるかってことで。"未完成"はマイナスな響きだけど、それをプラスにできるのがロックだと思うし。"気持ちひとつだな"というのは自分自身が体感しているので。それを体現していけたらいいなと思います。
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