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INTERVIEW

Japanese

FLiP

2014年10月号掲載

FLiP

Member:Sachiko (Vo/Gt)

Interviewer:沖 さやこ

FLiP、新章突入である。だがそれは前章を捨てたわけではなく、"鎧を脱いだ"という表現が正しい。8年に渡るバンド人生、26年に渡る女性としての人生をかけて、FLiPが描いた「GIRL」「BURROW」「MADONNA」の3曲は非常に風通しの良い、健全なロック・サウンドだ。バンドとしては初めてシンセを導入し、純粋かつ新鮮な心で音と戯れた、自由度の高いシングル『GIRL』。ここに至るまで、バンドのメイン・コンポーザーでありフロントを担うSachikoは、人生最大の苦悩に直面していたという。だが人々の支えでそれを乗り越えた彼女は、快活に、そしてまっすぐ前を見て話をしてくれた。

-まずは昨年リリースなさった3rdフル・アルバム『LOVE TOXiCiTY』のツアー・ファイナルである、FLiP初のSHIBUYA-AXワンマン以降から、EMI Recordsの移籍までの流れを教えていただけますか?

バンド的にも個人的にも2013年は"やり切った"という感じが強くて、上半期から悶々とし始めて、SHIBUYA-AXワンマンはFLiPの第1章が完結した、みたいな感覚で。だからこそ"次、何ができるんだろう?"というのをすごく......AX手前くらいから考えていて。でもいきなり次のイメージが頭の中にあったかというとそうではなく、その真逆で。何もなくて。これまでアウトプットし続けていて、私の感覚のスポンジがカラッカラになっていた。......だから"吸収したい"と思って、自分ひとりの時間を設けさせてもらって。年明けから洋邦関係なくいろんな音楽を、今までとは違った、突っ込んだ聴きかたで聴いたり。アマチュア、インディーズ、ライヴハウス、大きいホールとか関係なく、いろんなライヴに足を運んだり。移籍の話が決まりそうなときに、FLiPの第2章が見えてきていたので、モチベーションの上がっていく流れと共に環境が固まっていく感じがあって、すごくタイミングが良くて。そこからデモ音源を作って、メンバー的にも"もっとひとつにならなきゃいけないよね""自分たちが何をしたいかちゃんと認識して、共有しないといけないよね"って、メンバー内での話し合いも前以上にするようになりました。そこからFLiPの第2章が見えてきた......という感じですかね。

-"やり切った"というのをどこでお感じに?

色でいうとすごくダークめな、ブラックとか、紺色とか......そういう世界観を出し切ったなと思ったんですよね。なのでこれまでFLiPで出していたカラーが出尽くしたというか。その原動力でもある火が消えていった感覚だったんですよね。

-それは"やりたいことがない"ということ?

そういう言いかたもできます。だから、やりたいことが思い浮かばない、何をしたいかわからないという恐怖心もあったんです。だから"あ、これスランプだ"と思って。デビューさせてもらって3年、バンド始めて8年......当時25歳で、25年間生きてきて、今までで1番きついなと思った時期だったんですよね。スランプって何もイメージできないから、感覚がゼロなんですよね。何を聴いても響かない、わくわくしない。そういう自分が1番怖くて。でもこのまま自分が自分に諦めたら、自分に背を向けたら、バンドに背を向けたら、音楽に背を向けたら、自分どうなってしまうんだろう? とすごく怖くて......。

-音楽を辞める選択肢も。

......あったかもしれないですね。このままこの皆無さがずっと続いたら......と思うと。だって、自分自身に希望がない人が、歌を歌ったところで誰を幸せにできるんだろう? と思ったし。音楽が好きで、バンドが好き。だけどその気持ちとモチベーションが比例してないと、とても苦しいんですよ。メンバーを裏切ってバンドを続けているような感覚だったから、そんな気持ちでやるのはすごく嫌で。だからこそ"どうしたいの、自分?"と向き合って、メンバーに"今の自分の気持ちや思っていることを言わなければだめだ"とすごく思って。だから腹の底から思ってることを1番言えた瞬間だったかもしれないですね。

-メンバーのYukoさん、Sayakaさん、Yuumiさんはなんとおっしゃっていましたか?

"Sachikoがからっぽになってしまうのは理解できる"と言ってくれて。去年作った3rdフル・アルバムはセルフ・プロデュースだったから、メンバーでジャッジするのが当たり前じゃないですか。その中でも曲も詞も書いているわたしが、どれだけパワーを使えるか、どれだけイメージを巡らせることができるかは重要で......そういうことをメンバーはわかってくれてて。"ああいうことをやったんだから、尚更理解できる。だから急かしたくない"と言ってくれて......。"見守っていたい"というのは"あ、まだ頑張れるな"と思った言葉でした。本っ......当にメンバーの大切さが沁みて。自分ひとりだったら乗り越え切れなかった。わたしは"曲が書けない""歌詞が書けない"というのをあんまり言わないようにしてるんですけど、口に出さなくてもメンバーは感じ取ってくれてた。

-メンバーの皆さんの支えがあってこそ、いろんなものを吸収していこう、と思えるようになったんですね。

そうですね。"インプットする時間をください"と言ったら、メンバーもチームも首を縦に振ってくれて、自分にプラスになるであろうことに対して、積極的にアクションを取っていくようになりました。......FLiPって、男勝りとか、骨太とか、そういう言葉がついてきてたじゃないですか。そういう、できあがったFLiPのカラーの上にプラスして何が入れられるか?と考えながら今まではインプットしてたんですけど。その基盤が自分の中で完結してしまったから、それありきじゃなくて、フル・チェンジというか。一度気持ちをまっさらにして、シンプルな自分で、シンプルな気持ちで――これまでがどうのこうのじゃなくて。"もっと音で遊ぼう!"とか、どれだけ自分たちの音楽にわくわくできるかとか、そういう新鮮さがすごく欲しくて。......やっぱり自分たちが誰よりも1番バンドに期待をしていたい。それで、自分たちの好み、ルーツに立ち返ろうと思って。私は小学生のころから洋楽のポップスとかをずっと聴いていたので、とにかくその嗜好に寄ったものをあさってました。おうちでアメリカのラジオをネットで聴いて、それを1日中浴びて......これ好き、これかっこいい、この音色(おんしょく)いいな、このドラムのキックの音いいな、このパンの振りかたいいな――本当にそういう細かいところまで聴いて、サウンドの構築のしかたをもうひとつ作り出したというか。それで新たにFLiPのやりたいことが見えはじめてきたんです。