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INTERVIEW

Japanese

FLiP

2014年10月号掲載

FLiP

Member:Sachiko (Vo/Gt)

Interviewer:沖 さやこ

-サウンドの構築は『GIRL』の3曲に反映されていると思います。4人の音の精度がひとつひとつ上がって、4人の音が重なったときに立体になっている。

ああ、良かったぁ(笑)。4人の音それぞれが隙間を持っていて、その音のかみ合わせによってひとつのグルーヴになる、という感覚で作っているので、ひとつひとつのフレーズに意味を持たせてました。だから音の(周波数)帯域も"右から聴こえるYuko(Gt/Cho)の音がロー・ミッド(※周波数帯域のうちの中低音域)を出してたら私はハイの成分を強めにしよう"みたいな考えかたをしてて。レンジの広いものは気持ちいいから。デモのときからそれは考えていたので、レコーディングもスムーズにいきました。今どんどんバンド自体がクリアに、シンプルになっているからこそ、音でどれだけ引き付けることができるかな?というのをすごく考えてるんです。

-それは"挑戦"なのでしょうか。

んー......どっちかというと"より素を出そう"って感じかな。今まで、FLiPのやりたいことをやってきたことは嘘じゃないし、それは胸を張って言えることだし、あれがあったからこそ今回土台が固めきれたし、バンドの存在意義を作ることができたので。それとはまた別に、同じ人間の中にある、違った1面をもっと出そうと思ったんですよね。今まではダークな1面が自然と出てたから、それだけしかない人間だと思われていたかもしれないんですけど、FLiPのメンバー全員、かわいいものはかわいいって言うし......何より女の子だし。そういう面があるのに出さないなんて窮屈だよね、と思って。私たちは今年26歳で、もう年齢的にも"女の子"というよりは"女性"じゃないですか。だから自分たちが本来持っている女性らしさをもっと出していきたいと思いましたね。ライヴの見せかたも"女の人として"というのを考えて。

-FLiPはもともと女性としての強さや品をしっかりと掲げていたから、そういう意味でも"素"という表現はやはりぴったりだと思います。かっこいいもの、素敵なものを作ってきたのが今までのFLiPなら、今回はそれらを作ってきた体でもって表現をしているんでしょうね。

ほんとにそうです(笑)。ずーっと同じものを表現していくのって、FLiP的にはすごくストレスなんですよね。"またこれか"と思ってしまうのは、クリエイティヴじゃないというか。やっぱり、バンドを始めたときの新鮮な感覚を取り戻したかったんですよね。そういうふうに音を楽しみたいと思ったからこそ、私の内面も変わってきた――それはメンバーも感じているみたいで"解放的になったね"って言われたりして。あと"客観視"はすごく大切にしているんです。できる限りの客観視をしようと心がけていて。完成したら1日2日寝かせて、最近自分が好きなアーティストを聴いているという普段のライフスタイルでの流れで自分のデモを聴いて、そのときにいいと思うか、もうちょい行けるなと思うか――自分やバンドの中で完結しないように、世の中に出たときの感覚で聴くようにしてて。

-自分の"素"を"世の中"という広い場所に出そうという決意。それは大きな変化と言っていいですね。

めちゃくちゃ大きいですね。それができるようになって、人とコミュニケーションを取ることも前よりだいぶ楽なんです(笑)。例えば、自分が発言したことに対して意見を言われたときに、それが否定的な意見だったとしても"そう思われるのもわかる"と思えるようになって。いろんなことが素直に受け止められるようになったんですよね。だから余裕が出てきたんじゃない?と言われることもあるんですけど......自分に満足しているわけじゃないからそんなに余裕ぶっこいてられないんですけど(笑)。前よりはそうなってきてるかなと思います。

-Sachikoさんが人間的にも、自分自身のもともと持っているものを受け入れられるようになってきているのかもしれないですね。だからこそこういう音楽が生まれたんだと思います。

そうですね。それはある。だから歌詞も、同性に対する気持ちの伝えかたをシンプルにしないといけないなと思ったんですよ。もっと女友達に相談されているとき、自分自身が抱く感情や、自分自身が言える言葉......その温度感で歌詞が書きたいなとすごく思って。......そもそも私は相談しやすい人間、しにくい人間、どっちなんだろう?と思って。"私はなかなか閉鎖的な人間だから、超仲のいい女の子しか相談してこないだろうな......でも、そんな自分じゃ悩んでいる同性の子とか、恋愛で躓いた子とかを歌で勇気付けられるわけないじゃない!"と思って。だから自分自身の好きなところを増やそうとも思ったし、自分のどこを自分は好きになれるんだろう?とも思ったし。"やだな"と思うところもあるけど、そこばっかり見るんじゃなくて、もっと伸ばせるところはどこかな?って。そういう客観視もたくさんしました。そういうふうに気持ちを持っていって、自分自身を認めることができ始めてから、心の中がすっぴんになってきてるのかなと思いますね。メンバーとの音楽以外の日常会話も、本当に肩の力を抜いて喋れるようになりました。

-今までずっとバンドを引っ張っていかなきゃいけない、と気を張っていたところもあったでしょうしね。Sachikoさんが人を頼れるようになったのは大きいですね。

......あ、頼ると言えば。去年FLiPが、PIZZA OF DEATH傘下のJun Grey Recordsが出した『And Your Birds Can Sing』というガールズ・バンドを集めたコンピに参加させてもらって、ライヴもやって。そこにKenさんが"Kenco Yokoyama"名義で参加してて(笑)、それをきっかけにKenさんと仲良くなれたんです。KenさんがFLiPを後輩バンドとして見てくれてて"なんでも相談してきなよ"と言ってくれて......今年の頭まではずっと悩んでいたので、自分の中で解決しきれない感情が渦巻いたとき、Kenさんに相談させてもらってたんです。"目の前のことなんてどうでもいいや、と思ってしまう自分がいて、それに罪悪感がある"と言ったら"そう思うことも大切よ""何もかもしっかりやりすぎようとすると自分が壊れる"と言ってくれて。Kenさんは後輩に伝えていきたい、教えていきたいと言っていて。いろんな時期を越えている人だからこそ、言葉の重みが格別で。スッと入ってくるというか。そういう出会いもあったからこそ、よりクリアになれたのはありますね。