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LIVE REPORT

Japanese

FLiP

Skream! マガジン 2015年04月号掲載

2015.02.25 @渋谷eggman

Writer 沖 さやこ

2015年10月6日に結成10周年を迎えるFLiPが、10周年記念のプロローグとして2月に東名阪ツアーを開催。そのファイナルである東京公演に足を運んだ。

エレクトロの登場SEが流れるとクラップが湧き、その音から微かに「GIRL」のコーラスが聴こえる。ステージに登場したSachiko(Vo/Gt)がクールに「GIRL」のイントロのクラップを刻むと、フロアもそのリズムに合わせて手を叩く。音が止まると同時に4人の歌声が響いた。堂々と安定感のあるサウンドで昨年リリースした移籍第1弾シングル『GIRL』の3曲を披露する。「BURROW」はYuko(Gt/Cho)のソロとSachikoのシンセが互いを刺激しながら混じり合い、「MADONNA」は強さと穏やかさを持った音でフロアを掌握。2014年に第2章を迎えたバンドが、その新章をしっかりと自分たちの身体に染みこませてきたことを演奏で証明する。

観客からのあたたかい声援に、Sachikoは"今日絶対楽しいよね!"と満面の笑顔を浮かべる。まったりとラフに話す彼女たちを見ていて、思わず顔がほころんだ。するとSachikoが"みんなと一緒にこれからタイム・スリップしていきたいと思います"と言う。どうやらアルバムから数曲ずつ、順々に演奏していくとのことだ。"まずは1stフル・アルバムの『未知evolution』から"と、太いグルーヴで魅せるライヴ定番曲のひとつ「平成ジュラシック」を投下。フロアのシンガロング、コール&レスポンスも熱く響く。eggmanという会場の仕様も影響してか非常にアットホームな空気で、会場にいる人物が思い思いに楽しんでいる様子が非常に爽快だ。Sayaka(Ba)の低音が躍動感を生む「す・て・きReaction」。Yukoはギターを奏でながら頭を大きく振り上げ、ロング・ヘアーで美しい曲線を描く。初期の楽曲はキーが高いものが多いゆえ、Sachikoのヴォーカルもキュートでセクシーなハイが耳に残る。「ライラ」では、歌っていない人間はいないんじゃないか、というくらいフロアから自分自身を解放するように熱い歌声が響き、それに負けじとビートを刻むYuumi(Dr)のドラミングが花火のように鮮やかだ。

MCではフロアを適度に巻き込みつつ、4人で制作期間の裏話などを話す。まさかのエピソードに、熱心なファンも驚きのリアクションだ。続いてのセクションでは2ndフル・アルバム『XX emotion』の楽曲を披露。「エミモア」はCDとは別バージョンのアレンジでフロアを沸かすと一転、切ないメロディをSachikoが泣き出しそうになりながら情感たっぷりに歌い上げる「ホシイモノハ」は、彼女の歌をしっかりと支える楽器隊の力強さも美しい。ディープで繊細な音を作ると、そこから夜が明けていくようにドラマティックに繋いで「Everything is alright」へ。USインディーの香りのギターが心地よい。Sachikoのヴォーカルも優しく明るく、大きく響く。昔のFLiPならこんなライヴしてないだろうな、と思ったが、すぐに"もしかしたらバンドを始めたばかりのころ、FLiPはこんな感じだったのかもしれない"とも思った。この日は彼女たちの、4人で音楽を鳴らす楽しみが音の隅々にまで通っていて、バンドが10年を迎え、力を蓄えたうえでの等身大の音を出せることは、とても素晴らしいことだと噛み締める。フロアをすべて取り込むような包容力に見惚れた。『XX emotion』の裏話ではアルバム・タイトルが生まれた経緯や、Yuumiの号泣事件(?)などが明かされ、会場内のあたたかい雰囲気は壊れることがない。

続いてはインディーズ以来のセルフ・プロデュース作である3rdフル・アルバム『LOVE TOXiCiTY』から「Raspberry Rhapsody」「Log In "Rabbit Hole"」「Bat Boy! Bat Girl!」を披露。アンサンブルにしてもメロディにしてもリフの強さにしても、やはりこのアルバムの楽曲は、1枚目と2枚目を経て完成したFLiP第1章の金字塔であることを噛み締める。特に「Bat Boy! Bat Girl!」のグルーヴやパワーはロック・バンドとしての強さが鋭く輝き、ラストのYuumiによる怒涛のツイン・ペダルもお見事だった。Sachikoはこのアルバムについて"全身全霊という言葉がしっくりくる。音楽ができなくなるくらい出し切ってやる!と思って作った""このアルバムが出せたからFLiPの第2章が幕を開けられた"と語る。そして"今のFLiPが最高に好き。これまでにないくらいFLiPが大好きなんです!"と、とても晴れやかな表情で言うと、フロアから大きな歓声が沸いた。

そして"これからのFLiPを届けたいと思います"と新曲を2曲演奏した。前者はコード弾きがヴォーカルを活かすスケール感のある楽曲で、後者はギターの音色の映えたシンガロングできる楽曲。少しPiNKの匂いもある。どちらも第2章へと前進したからこそ辿り着けた楽曲だ。本編ラストは「カザーナ」。SayakaとYuumiのヘヴィなダンス・ビートにSachikoのシンセとYukoのギターが重なり、過去曲を最新型へと変貌させフロアに突きつけた。アンコールではLMFAOの「Party Rock Anthem」をカバーし、Sachikoのラップの完成度の高さに感服。ここまで太くパワフルなヴォーカルを彼女が発したのは初めてかもしれない。この要素はぜひともFLiPの楽曲に取り入れていただきたい! ラストの「ワンダーランド」は、歴史をすべて背負ったような重みと説得力のある4人の一体感と、フロアの気持ちが重なり、とても愛に満ちた音色だった。5月にミニ・アルバムのリリースも発表され、どんどん高まる祝祭ムード。FLiPの10周年の幕開けは、最後までひたすら笑顔の絶えぬ空間だった。だがこれはまだまだプロローグ。本当のパーティーはこれからだ。

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