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INTERVIEW

Japanese

Yellow Studs

2014年06月号掲載

Yellow Studs

Member:野村 太一 (Key/Vo) 野村 良平 (Gt) 植田 大輔 (Ba) 田中 宏樹 (Dr)

Interviewer:山口 智男

-今回はどんな作品にしたいと考えたんですか?

太一:今回と言うか、毎回ですね。毎回、売れろって考えながら作ってます。妥協は一切なしで。前回は1ヶ月、俺が部屋に閉じこもって12曲完成させたんだっけ。今回は3、4ヶ月?

田中:そうですね。去年の12月ぐらいから作りながらレコーディングしていきましたね。

良平:コンセプトっていうのは特になかったんですけど、とりあえず前作よりもいいものを作らなければってことだけでしたね。結果、全メンバーの成長が見える作品になりました。

田中:タイトルが先に決まってたんだよね。

良平:うん。それも何か、うちらのことを知らない人が聴いてびっくりするような目覚まし的なイメージで、"これ、かっこいい!"と思わせるものにしようってタイトルだけ俺が勝手に決めちゃいました。

田中:憤りや怒りがありつつね?

良平:うん。

-憤りっていうのは......。

良平:売れない憤りです(笑)。売れないって言うか、思ったより反応がないと言うか。全力でやってるにもかかわらず。着実にお客さんは増えてるけど、もっとっていうね。それはうちらの力不足もあるんですけど、もっと来いよって。そのためには、もっといい作品を作らなくちゃってイライラしてまして。

-アラームになり得る作品にしようってところで、具体的にどんなことをやったんですか?

太一:ウケ線の曲を入れようっていつも思うんですよ。お決まりのコード進行ってあるじゃないですか。そのお決まりのコード進行でやれば、日本人の耳に張りつきやすい歌はできるんでしょうけど。

田中:ドラムはとりあえず4つ打ちにしてみようかみたいなね(笑)。

太一:でも、なんだかんだウケ線の曲ってやってるとつまらなくなるんですよね。だから具体的に何をやったってことはないです。今回も単純に全力でつくりました

-アルバムを聴きながら、今、世の中にあふれているうすっぺらい、くそつまらない曲に対する憤りが伝わってきたんですけど。

太一:その気持ちの裏では、それを売ってる人はすごいなとも思うんですよ。ホント、たいしたもんだなって。でも、たいしたことは歌ってないじゃんって奴らが売れちゃったりしてると、えぇ!?ってなりますよね。たいして良くないじゃんって、それはもちろん個人的な感想なんですけど、何でこれが受け入れられるんだろうって思うと、その矛先がオーディエンスに向かうわけですよ。わかります?レゲエは好きなんですけど、レゲエ好きな奴は嫌いとか、ヒップホップは好きなんだけど、ヒップホップ好きな奴は嫌いとか。

-ああ、それすごいわかるなぁ(笑)。

太一:その八つ当たり先が段々でかくなってきた。

田中:でかくなって、社会になってきた。「脱線」って曲なんかはまさにそうですよね。楽曲と言うよりも人間そのものに憤りを感じるようになってきてますよね(笑)。

-だから、『Alarm』ってタイトルは今の世の中に警鐘を鳴らすって意味なのかなと思ったんですよ。

太一:かっこよく言えば、そうなんでしょうね。でも、メンバーで選挙、何人行った? 俺は行ったけどね。そういう奴らが言えないですよね。社会に警鐘を鳴らしてるなんて。

田中:でも、「けど」ですよね。

太一:そう。けど、たとえば大学を卒業して、就職してお金を稼ぎましたっていうのが大衆が認める社会人ですよね。高学歴だったら高学歴なほど、いい企業に入れる。じゃあ、君たちの幸せは大企業に入って、いい給料をもらって、金曜日に飲んで、車を買うってことなのかい? それがステイタスなのかい!?って。もちろん、就職してる人は就職してる人で偉いんですよ。素晴らしいと思います。バンドマンなんて社会のダニですからね。

-そんなことはないと思いますよ。

田中:僕らそういう意識は強いですね。

太一:ただ、それでもね。金を回さなかったら、経済を回さなかったら人間じゃないのかって言ったらそうじゃない。(東日本大震災の被災地である)女川のある一家がうちらの『Shower』ってアルバムがきっかけで、"またみんなが音楽を聴くようになれた。ありがとうごさいます"って。俺らのライヴで泣いてるお客さんを見てると、何かいろいろあるんだろうな。ひょっとしたら、どこかで俺らが自殺を止めてるのかもしれないって思うんですよ。そりゃ小さなライヴハウスでやってるから、武道館でやるような人たちと比べたらその数はたかが知れてるかもしれないけど、一応ね、求められてやってるから、がんばってやる価値はあるのかなって。バンドって1人でもかっこいいって言ってくれる人がいるとやめづらいんですよ。やめられない。それがどんどん増えてきた。音楽って人を助けることもあるし、人を殺す時もある。もう何にでもなりますよね。戦争の時、軍歌は戦争よいしょよいしょってなるわけだから。別にJohn Lennonみたいにラヴ&ピースみたいなことは言わないですけど、俺らがやってることがどうやら誰かを助けてるらしいぞって気持ちもあります。

田中:そのへんの想いは今回、「飴と鞭」に表れてますよね。

太一:誰にも相手にされなかった完全無所属のバンドの曲がCMソングに使われることになりましたからね(『Alarm』収録の「トビラ」がKIRIN氷結のCMソングに起用)。ひょっとしたら、バンドやってる若い子たちはメジャー・レーベルと契約することがゴールと考えてるかもしれないけど、メジャーでも客を呼べないバンドはごろごろいるし、2年で契約を切られて、おつかれさまバイバイっていうのが見えてる奴らもいる。もっとも、俺達はそういうゴールさえなかったんで、とりあえず死ぬまでライヴをやって、食えるところまで行くぞってやるしかなかったわけですけど、そんな俺たちを見てみろよって若い子たちには言いたいですね。

-アルバムを聴いて、僕はものすごく共感するところがあったんですけど、同時にユーモアもあるところがいいですね。たとえば、「鶴の恩返し」とか。

太一:ああ、あれはドラムの田中君の実体験。ただ、俺も似たような体験してるんで、9が田中君で、1が俺ですね。

-それとか、「僭越ながら」もそうなんですけど、ユーモアの中に悲しみが入り混じってるところがいい。

太一:たぶん飾らないで書くとそうなるんでしょうね。

-そういうところも聴きどころですね。

太一:生々しいですと書いておいてください(笑)。

-田中さんは今回、初めてレコーディングに参加したんですよね? 田中:Yellow Studsのレコーディングは初めてでしたね。

-ドラマーが代わって、どうでしたか?

太一:前のドラマーが全然違うタイプだったので、劇的に変わりましたね。良くなったところもありますし、悪くもなったところもあります。良くなったのは合わせやすいところ。悪いところはスネアの音のヌケが悪い(笑)。もうちょっと何とかしてほしい。

田中:それ、レコーディングの時、言ってくださいよ!

良平:いい意味で、普通のビートを叩いてくれる。

太一:でも、普通のビートって本当は難しいと思うんですよ。

良平:それがあるから歌詞もちゃんと聴き取れるし、ギターもベースも映える。

太一:でも、「秋晴れの空」って曲のドラムは、面白いの持ってきたなって思いました。田中君、クソマジメなだけのドラムじゃないんだって安心しました。本当にドラムとベースは命です。と言いながら、この間、ドラム抜きで3人で弾き語りやってきたんだけど。意外にウケが良くてね(笑)。

田中:たいぶ良かったみたいですねぇ。

-田中さんはどんな気持ちでレコーディングに臨んだんですか?

田中:僕はもう1stアルバムぐらいからのお付き合いなんです。

太一:もう10年だよね。

田中:その間、僕は他でバンドやってきたんですけど、Yellow Studsは本当にずっと好きだったんですよ。この10年で1番好きだと言えるバンドです。そういうバンドに参加できることになってプレッシャーがすごく大きかったですね。前のドラマーさんも、その前のドラマーさんも知り合いなんで、正直、自分ができることってあまりないような気もしてたんですけど、限られた中で精一杯やるしかないって思いました。リズム・トラックだけ聴いた時は不安でしたね。でも、ミックスまで行ったら、いい曲に思えたんでほっとしました。

太一:よくあるじゃないですか。ケーキが好きな人がケーキ屋さんで働いてケーキ嫌いになるみたいな話(笑)。それは今回、あるのかなって不安だったんだけど......。

田中:それは全然ないですね。これはいろいろなところで言ってるんですけど、Yellow Studsに参加したことは人生の中で1番楽しいと思える出来事なんですよ。

-アルバムがリリースされた後はツアーが待ってますね?

田中:全国6ヵ所7公演、ワンマンで回ります。

太一:怖いですよ。人が来るかどうか。去年のワンマン・ツアーは全ヵ所成功でしたけど、今回、全ヵ所成功する保証は1つもないので。まぁ、いつもと同じように全力でやってみます。