Japanese
小南泰葉
2014年03月号掲載
Interviewer:天野 史彬
-資料には、「3355411」には"怒"の感情が付記されてますけど、この曲は発達した思考を持っているが故にエゴイスティックに悩み続ける人間の存在に怒りながらも、最後にはそんな愚かな人間の存在も許容し、肯定している曲っていうことですよね?
そうですね。もう、とにかく"人間って馬鹿だ!"って叫んでる曲なんですけど、自分に対しても怒ってるし、皮肉ってもいるし......でも結局は、信じるものが勝つというか。自分の信じるものだけが正しいじゃないですか。正解も不正解もないから。でも、人間は正解を出したくて、○×をつけたくて、自分の正義のために血を流して戦っているし。......人間は海から上がって、自然を離れて都会に住むようになって、いろんなことを諦めたわけじゃないですか。その対価と代償があって。でも、もう昔の姿には戻れなくて。自信満々でピラミッドの頂点に立っているし。だったらもう、この苦悩と闘うしかないだろうと。
-わかりました。じゃあ、他の収録曲についてもそれぞれ訊いていきたいんですけど、2曲目の「ボーダーライン」。この曲も資料には"怒"の感情が付記されてますが、この曲は何に対して怒ってるんですか?
これは、恋人がいたんだけど裏切られた女の子が、裏切った彼氏を鍋で煮込むっていう曲です。これはそのストーリーのまま、彼女の怒りをぶちまけた曲ですね。
-そういう、人を鍋で煮込むみたいな突飛なアイデアって、どこから出てくるんですか?
私って、ほんとそういう曲が多くて「脳内フラクション」っていう曲は首吊りの曲だったり、「09電車」はそのまま霊柩電車で、「3355411」なんか"死にたい"っていうタイトルで、「Soupy World」っていう曲は世界中をミキサーに入れてジュースにしようって......そういう曲ばっかりなんですよね。なので、人間を煮込む発想とかは凄く自然なことで。
-それは妄想としてですよね(笑)?
そうですね(笑)。たとえば圧力鍋ひとつあれば完全犯罪ができると思ってますからね、なんでもかんでも、なかったことにしちゃうんで......。
-なんか今、凄くゾッとしたんですが(笑)。......次の「終わりなき炎症」は凄く美しいロック・バラードで、この曲には"哀"の感情が付記されてますね。僕はこの曲を聴いた時、『キメラ』の最後に収録されてた「怪物の唄」から繋がるものを感じました。
わっ、ほんとですか。私は元々、病と闘っていて、去年1年間使った診察券を整理したら20枚ぐらいあって"うわっ!"って思ったんですよ。何かの病気が治ったら次は何かの病気になって、またこれが治ったら次に何かがあって......常に病が数珠繋ぎで、終わらないんじゃないかって思って。で、そういう傷とか不安は、闘うんじゃなくて飲み込みたいって思ったんです。"不安"っていうモンスターをバリバリ食いたいというか。もう終わりないんだから闘わなくていいじゃんって思って。病院大好きな、診察券たっぷり持ってる人が書いた曲なんですけど(笑)。
-"糧にして 悪魔の声すら"っていうラインとか、"Don't be afraid of fears"、"Don't escape"って、凄く力強い言葉が出てくる曲でもありますよね。それはやっぱり、不安も痛みも飲み込まなきゃいけないっていう思いから来てるんですか?
そうですね。自分の中で"不安を恐れるな"って歌った曲は、たぶん今までないと思うんですけど。いつも、不安の先の答えが何かないかなと思って探してたんです。......本当に......なんでこんなに不安なんだろう......常に不安なんですよ。ネットを開けば見たくないもので溢れているし、地球が血だらけだし、血で血を洗っているし......常に不安で、もうどうしようもないけど、絶対に逃げたくなくて。だから、凄く前向きな曲なんです。
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