Japanese
後藤まりこ
2013年08月号掲載
Interviewer:石角 友香
sound of me=あたしの音。高らかな宣言ともとれるリリックが勢いよく溢れだす初シングル『sound of me』をリリースする後藤まりこ。ソロ・アーティストになってからは、高いスキルを持つバンドと彼女の中にそもそもあったのであろうポップネスがスリリングに交錯する楽曲を聴かせてくれているが、今回のシングルは本人主演のテレビ東京ドラマ「たべるダケ」のエンディング・テーマとして、さらに多くの人の耳目を集めることになるだろう。とかくエキセントリックなイメージで語られがちな彼女だが、セルフ・プロデュース力や表現者としての腹の据わり方は、どこかBjorkの貫禄にも似た毅然とした一面も。ぶっちゃけトークに見えるインタビューも終始、柔らかい笑顔で行われたことを追記しておく。
-『sound of me』のお話を訊く前にちょっと遡るんですけど、1stアルバム『299792458』がリリースされた時、ミドリ時代からのファンからは“ポップになった”っていう反応が多かったと思うんですが、後藤さん自身は変わったとは思ってなかったですか?
うん。ボク自身は変わってなくても、音楽っていう耳で聴こえていて。聴感上ではたぶん変わってるかもしれないですね。ポップって言われるのは全然いい(笑)。ポップって言ってくれるってことは、ちゃんと聴いてくれてるってことだから、嬉しいです。
-あのアルバムでは何を1番重要視して作ったんですか?
あー、なんやろ?その時の瞬間瞬間を切り取りたかったと思う。今でもそれは思う。
-バンドも音楽的なレンジが広い人たちで、だから難しいことをやっても歌の印象も強い、みたいな作品だったと思うんですよ。
うん。みんな歌をちゃんと聴いてくれる人らやったから成り立ったんやと思います。
-その後、ライヴやイベントもあり。スタイルがハンドマイクになって、ヴォイス・チェンジャーも持って。あのスタイルでやるのは自由度が高いですか?
うん。すごい楽しい。でも、ギターも弾きたい(笑)。
-でも今は弾かない?
うん。AxSxEさんのギターがちゃんとしてるし、ボクはAxSxEさんのギター好きやから、ボクのギターはいらん。
-なるほど。ライヴでメンバーをハグしにいってたじゃないですか?
うん、そういう気持ちになる(笑)。
-かと思えば照明のイントレによじのぼって、高いところから落ちたりもして。
あー(笑)。なんであんなんなるんでしょうね?
-それは以前と変わらない気持ち?
いや、でも気持ち自体は変わってますよ。バンドやってた時はもう、全員敵やったし、なめられたら終わりやと思ってたけど、今は、ビビらしたろとか思ってへんし。なんかクセなんかも(笑)。衝動っていうか“わー、体動いてる、止まらへん!”みたいな。
-お客さんの中にダイヴしていくニュアンスが違うなぁと思って。みんなの中に入って行きたいように見えたんです。
そう見えたらよかった。確かに気持ちはそういうふうに変わってるかもしれないです。
-そしてこの1年のあいだに女優の仕事にも初めて挑戦されて。
そうですねぇ。ありがたいことに。
-お話がきた時はどういう感じなんですか?自分の許容範囲にありました?
あ~……ない(笑)。“ない”っていうか、ホンマに想像つけへんことなんですよ。映画にしろドラマにしろ舞台にしろ。最初、びっくりして、その次に疑って“これは迷惑メールじゃないか?”とか(笑)。でも連絡してみたらみんな普通にいい人で、ちゃんと喋ってくれたから、“ああ、そういうことか”と思って。うん、嬉しかった。
-女優をやってみて、何か変わりましたか?
これがバンドやってた3年前のボクやったらたぶんできへんかったやろなぁと思って。せやから、ちゃんとできたなあと思って、それが嬉しいです。
-音楽とはまた違う脳ミソを使う感じ?
でも舞台はちょっとライヴにも似たところがありました。ドラマは全然違くて、ずっとビクビクしてた。“自分、大丈夫かなぁ?”とか。
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