Japanese
後藤まりこ presents <シブヤコ>
2013.09.12 @赤坂BLITZ
Writer 天野 史彬
後藤まりこの自主企画“シブヤコ”が、赤坂BLITZにて開催された。まずはオープニング・アクトとしてtricotが登場。目まぐるしく展開していくカオティックな演奏。その中から突き刺すように飛び出るチャーミングなポップネスに、一気に会場はヒート・アップしていく。とにかく、暴力的なまでにエネルギッシュ。ドラムもベースもギターも手数多く、その演奏は圧倒的だが、根底にあるのは砂場で無邪気に走り回る子供というか、秘密基地を作るために動き回る子供というか……とにかくあっけらかんとしている。9mm Parabellum Bulletや凛として時雨といったバンドたちが開拓してきた地平の上に現れたアンファン・テリブル――そんな言葉が頭を過ぎった。今、tricotのようなバンドが若者たちから支持を得ているのは、この国に“バンド”という表現形態が、バンプやアジカンが牽引した00年代から、また新たな10年代的な形で根づいたことの証明でもある。わずか25分間ほどの演奏時間で、一気に赤坂BLITZを狂乱の場に変える、見事なパフォーマンスだった。
2番手はSCANDAL。ポスト・ハードコア的な展開の妙を打ち出していたtricotとは反対に、どっしりとしたリズム、ハード・ロック的に唸るスケールの大きなリフ、そして求心力の強い歌とコーラスといったダイナミックな正攻法のロック・サウンドで会場を沸かせた。ライヴ中盤、ドラムのRINAが“5年前にミドリとツアーで競演したことが自分たちにとってターニング・ポイントになった。あれがあったから、今、私たちは「フォーチュンクッキー」を歌わずにロックやれてます”と語る。実際、この日の彼女たちの演奏の中には、自分たちの頑張りを他者に応援してもらい、その物語を共有するアイドル的なスタンスよりも、リスナーに能動的な何かを促したい、音楽を通じてもっと他者と衝突したいという強い意思を感じさせた。彼女たちが求めるリスナーとの関係性、それはとてもロック的と呼べるものなのではないだろうか。この日の彼女たちの演奏には、“ロック・バンドである”ことを何よりも真芯に置こうとするバンドの強さが滲み出ていた。
そして最後に登場した後藤まりこ。もはや圧巻のひと言だった。ギター、ベース、ドラム、そしてふたりのキーボードにとり囲まれた空間の中心に後藤が立つという構図が象徴的だったのだが、ステージ上の後藤まりこは、言うなれば音楽が鳴り続ける限り永遠に動き続ける可憐で獰猛な音のマリオネット。1曲目「ドローン」が爆音で鳴り響いた瞬間、まるで新たな命を得たかのように、ステージを駆け回りながら歌い始める。“夢とか希望とか 好きとか嫌いとか 生きるとか死ぬとか 腐るほど聞きました。そんなのは全部聞き飽きました 見た事ないものを見るのさ ベイビー”……この「ドローン」の歌詞のように、この日の後藤まりこには、生も死も、好きも嫌いも、夢も希望も――そんな人間が抱えてしまうすべてを超越し、もはや人を超えて音と一体化していくような凄みがあった。そしてそれこそが、後藤がミドリを解散し、ソロ活動へと移行していった真の意味のようにも感じられた。ミドリというバンドは、人間という存在の極限へと音楽で突き進んでいくようなバンドだったと思う。人間の持つすべての性(サガ)や欲、その綺麗なところも汚いところもすべて暴き出し、音に変え、言葉に変え、吐き出していく。そんな強烈な“人間表現”こそがミドリだった。だが、人間には限界がある。時間は限られ、身体はひとつしかない。そんな人間の“有限性”こそが、もしかしたらミドリの限界だったのかもしれない。人は“有限”だからこそ、彼らは刹那的に駆け抜けた。そして今、ソロとなった後藤まりこは、もはや人間を超えていく。音になり、“無限”を目指す。“歌わせて。ずっと、いつまでも。叶えられるとしたら、奇跡!”と「ままく」で歌うように、彼女はもはや奇跡を叶えようとしている。そんなことを信じさせるほどに、ロックもパンクもポップスもノイズも飲み込んだ暴れ馬のような音塊と一体化していく後藤の姿は、音楽そのものだった。そして、そんな彼女がスピーカーによじ登ったり、フロアを駆け回ったり、オーディエンスの海へとダイブしていく度に、彼女の生み出す音楽の“無限”は、客席へと伝播していく。楽器隊に囲まれたステージ上の小さな空間から、永遠がはみ出す。その瞬間がなんとも言えないカタルシスだった。最新シングル曲「sound of me」の疾走感と覚醒感、あらゆる感情が言葉となって音から溢れ出していく止め処なさ。もはや“sound is me”状態。
しかし、いくら後藤のステージ上でのカリスマ性が凄まじく、音楽と一体化していたとはいえ、それがすべてではなかった。時折垣間見える、後藤まりこのひとりの人間としての生々しさがこの日のライヴの――もっと言えば彼女の表現のリアリティとして切実に響いていたのも事実だった。音楽はいくらそれが鳴り響くことで人に万能感を与えることができても、人によって演奏される限り、終わりはある。曲が終わり、音が途絶えた瞬間。ステージにもフロアにも限界があり、引きずるマイクのコードにも限界があることを見せつけられた瞬間。そんな時、後藤はミドリ時代以上に、ひとりの人間としての孤独と生々しさを漂わせていたように思う。それを何より象徴していたのが、アンコールで後藤がひとり弾き語ったミドリ時代の名曲「POP」だった。周りのプレイヤーたちがいなくなったステージ上でひとり歌った、あまりに等身大のラヴソング。満たされない想いと祈りの歌。それまでの演奏の時に発していた全能感が嘘だったかのように、そこには後藤まりこというひとりの“限りある”人間がいた。後藤がこの曲を歌う時“ソロでやりたかった曲”と紹介したのは、音楽が鳴っている間の“無限”の感覚、人間としての“有限”という現実――その狭間にこそ、彼女は自分の立ち位置を見出しているからなのかもしれない。この日、12月に新作アルバムがリリースされることが発表された。きっとこのアルバムには、音楽と一体化し、しかし人間としての生々しさも抱え続ける後藤の表現に託す想い、目指す場所……そんなものの一端が、前作以上に強く刻まれることになるのではないかと思う。期待して待ちたい。
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