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INTERVIEW

Overseas

MUSE

2012年10月号掲載

MUSE

Member:Matthew Bellamy (Vo/Key/Gt) Christopher Wolstenholme (Ba) Dominic Howard (Dr)


-アルバム収録曲について順番に聞かせてください。まず「Supremacy ~ 覇権の終結」。

Chris:アルバムのオープニング曲を選ぶのは毎回苦労するけど、このアルバムに関しては1曲目の候補がかなりあったんだ。でもあの曲に関しては特に、1曲の中にとにかくものすごく多様性があるんだよね。さっき話したように今回のアルバムは1曲ごとに相当違うわけだけど、とりわけあの曲はビッグで俗っぽい感じのメタル•リフから始まって、でもストリングスが入るとほとんど別の方向に向かってしまうという。とても映画的な曲だし、聴き手をちょっとした旅に連れ出すんだ。曲のセクションがそれぞれ違うイメージを生み出すというのかな。ヴァースは映画か何かみたいだし、一方でリフはまったく別物、そして中盤にものすごくクレイジーな箇所があるっていう。僕たちもとにかくあの曲はひとつの旅、変化に富んだ旅路をたどる曲だと感じたし、アルバムのオープニングにそういう曲を持ってくるのはグレイトじゃないか、と。

-「Madness ~狂おしい愛」は。

Chris:「Madness」に取り組んでいた時にあの曲について僕が強く感じたのは、これまた"今まで自分たちがやってきたこととまったく違う、非常にかけ離れた曲だ"ということで。Mattが最初に僕たちにあの曲を提示してくれた段階では、非常にラフなベース•シンセととてもシンプルなドラムのサンプリングくらいでね。けれどあのベース•ラインの繰り返しのフック、あれが僕にはとても催眠効果のあるものに感じられて。で、Mattがあの曲をプレイしながらハミングし始めて、そこで"この曲はマジにすごい曲になる"と感じたのは今でも覚えてる。あれはとてもシンプルな曲だけど、メロディといいベースのフックといいドラム•ビートといい、実にうっとりするような催眠効果があるんだ。そしてあのヴォーカル•メロディ、あれは聴き手を即引き込むものだよね。でもあの曲は、今作の中でも本当にスタジオで作られた1曲だったと思う。というのも、あの曲を活かすにはMattが最初に狙っていたとてもシンプルなエレクトロのヴァイブを持たせること、そこにかなり忠実であるべきだと僕たちも分かっていたからね。で、その上にあのグレイトなメロディがのってるっていう。だから恐らくあれは他のどの曲よりもスタジオで発展した曲だと思うし、アプローチもこれまでと完全に違ったんだ、あの曲でバンドが実際にプレイしている部分はそんなに多くないからね。そうやって楽器をちょっと脇に置いて、音楽に対してまったく異なるアプローチをとるのは実はナイスでもあるんだ。それから......。

Dominic:「Madness」は本当の意味で前に進んだ曲だと思う。僕たちはこれまでにも多少エレクトロに取り組んだことはあったわけだけど、今回は特にあの曲で、バンドにとって本当に、本当に新鮮な何かをやれたと思ってる。

Matthew:「Madness」で僕たちは本当にもうちょっとシンプルかつ削ぎ落としたものに留めたかったし、歌詞の面でも共感しやすくあまり凝りすぎない歌を書こうとした。実際12小節のブルース進行がベースになっているようなものだし、そこは僕たちにしてはとても珍しくもあるんだ。曲の影響はゴスペル•ソウルあたりから来ていて、もちろんR&Bもそう。だからこの曲は僕たちにとって音楽的に完全に新たな領域なんだよ。しかもとてもシンプルな歌で。このアルバムの中で、恐らく僕にとってもっとも誇りに思える曲があれだろうな。

-「Panic Station」は。

Chris:「Panic Station」に取りかかり始めた頃から、あの曲にはとにかくフレッシュな感覚があった。歌うまでもなく、とにかく本当にめちゃ高揚させられるヴァイブがあったっていう。ある意味、これまで僕たちがやってきた音楽にはないヴァイブというか。かといって自分たちのやってきたことがどれもネガティヴという話じゃないけど、とにかくあの曲には本当に高揚感があるし、ファンクっぽいものの影響を受けたのも僕たちにはあれが初だったんじゃないかな。

Dominic:「Panic Station」にはちょっとした過去からの離脱という雰囲気があるね、というのもそもそもやるのが実に楽しい曲だったから。思うに......このバンドにまつわるたぶんもっとも大きな誤解というのは、僕たち3人はとにかくこの世の終わりだの黙示録めいた啓示を歌う生真面目な奴らだってことで。実際はそんなことないと僕は思うけど、「Panic Station」は僕たちにとっていつもとかなり違う曲なんだ。僕たちが楽しんでいるのがよく分かる曲だし、あのグルーヴに乗ってジャムり始めるや自分たちがスラップ•ベースを使おうと思い立ったこと自体相当に笑えたし、うん、とにかく僕たちはあの曲で目一杯楽しんだ。聴けば分かってもらえるというかな、あの曲で自分たちがどんなに楽しんだかが僕には聴こえるよ。聴くと笑顔が浮かぶっていうか。聴くと踊りたくなるとか、そういう曲だな......。

Matthew:うん、「Panic Station」は僕たちも確実に楽しんだトラックだね。あの曲で僕たちはこのバンドを結成した頃、自分たちがガキの頃に入れ込んでいた類いの音楽と再び結びついたっていうか。僕たちは15歳でこのバンドを始めたけど、自分が子供の頃に"ゴーストバスターズ"や"ロマンシング•ストーン 秘宝の谷"といった楽しい80年代の娯楽映画があったのを覚えていて、そういった自分たちの好きだった音楽が持っていたファニーな面をこの曲で僕たちも少し捉えたかったんだ。ある種直球なファンク曲だし、金管楽器セクションも加えて。リード•トランペット奏者はStevie Wonderの「迷信(Superstition)」でトランペットを吹いた人なんだけど、あのトラックに影響を与えた曲のひとつだから、その意味で素敵な偶然だと思った。ブラス•セクションのレコーディングをやった時、そのセッション•ミュージシャンがその日、あるいはその週は彼が「迷信」のレコーディングをした時からちょうど40年にあたると話してくれたのはナイスな結びつきだと思ったし、うん、ともかくこの曲で僕たちはただ子供になって楽しんでいるんだよ。