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MUSE

 

MUSE

Writer 山口 智男

トリオとは思えないぶ厚い演奏に加え、大掛かりなステージ・セットでも観客を圧倒した1月のさいたまスーパーアリーナ公演、そしてMETALLICAとともにヘッドライナーを務めた8月のSUMMER SONIC、ともに記憶に新しいイギリスの3人組、MUSEが12月4日、『Live At Rome Olympic Stadium』と題したCDとDVDをカップリングしたライヴ・アルバムをリリースする。

MUSEと言えば、いつの頃からか、薄口、あるいは淡白であることが歓迎されるようになってしまったロックの世界において、どうしたって暑苦しいとか空気を読んでいないとかと思われがちな過剰さを、逆にとことん追い求め、芸術の域にまで高めることによって唯一無二の存在感を際立たせてきたバンドである。今回、リリースされる『Live At Rome Olympic Stadium』もそんな魅力を、やはり過剰までに印象づける大作という言葉がふさわしいものになっているところがなんとも彼ららしい。

本国であるイギリスはもちろん、世界23ヶ国でNo.1ヒットになった6作目のアルバム『The 2nd Law~熱力学第二法則』を引っさげ、世界中を回った"The 2nd Law Tour"はMUSE史上最も大掛かりなセットとライティングを駆使したパフォーマンスが各地で大歓迎され、彼らが現代のロック・シーンを代表する存在であることをダメ押しで印象づけたわけだが、『Live At Rome Olympic Stadium』にはそのツアーから7月6日、イタリアのローマにあるスタディオ・オリンピコ・ディ・ローマで6万人の大観衆を前に行った熱演の模様を収録。Disc 1(CD)には『The 2nd Law~熱力学第二法則』からの6曲に「Resistance」「Supermassive Black Hole」「Uprising」といった代表曲を加えたベスト選曲と言える13曲、そしてDisc 2(DVD)にはライヴのほぼ全曲と言える20曲にUSツアーからの3曲を加えた全23曲が収められ、いきなりエモーションを迸らせる「Supremacy」以下、官能的とさえ言えるナルシシズム、そして悲壮なまでのヒロイズムといったMUSEならではの魅力を、ギターが轟音で鳴るロック・ナンバーから美しいピアノ・バラードまで、多彩なレパートリーとともに堪能することができる。

中でもクラシックとブギを掛け合わせたような「Knights Of Cydonia」からバラードの「Explorer」、エレクトロ使いも鮮やかな「Follow Me」、そしてR&B調がセクシーな「Madness」とつなげる中盤は、まさにMUSEワールドの真骨頂と言えるこの作品のハイライト。いや、それを言うなら、さらにそこから賛美歌を思わせる崇高さを持った「Guiding Light」、Matthew Bellamyのファルセットが美しい「Supermassive Black Hole」、そしてリズムが絶妙に跳ねる「Uprising」へと流れる終盤も聴きのがせない。

"夏の間にローマのオリンピック・スタジアムで圧倒的なライヴをやることに成功して、たぶんあれが今年1番のライヴになったんだ"とBellamyも自信満々だ。さいたまスーパーアリーナ、あるいはSUMMER SONICに足を運んだ日本のファンとしてはちょっと複雑な気持ちになるが、そこは4Kカメラ16台を駆使したDVDで、彼が言うところの今年1番のライヴを、ぜひ追体験したい。

"この映像は俺たち3人がステージ上でやっていることだけじゃなく、ファンやスタッフ、出演者、そしてその夜のあの信じられない雰囲気を、とんでもない情報量とともにとらえた壮大な映像作品なんだ。この映像は、全く新しいMUSEのコンサートを体験できるものになっているのさ"

そこまで言われたら見ないわけにはいかない!

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