Overseas
THE SMASHING PUMPKINS
2012年07月号掲載
Member:Billy Corgan (Vo&Gt)
Interviewer:伊藤 洋輔
自由と孤独の狭間で鳴らす轟音センチメンタリズム――
完全復活と呼んで相応しいTHE SMASHING PUMPKINSが帰って来た。オリジナル・アルバムとしては07年の『Zeitgeist』以来、また09年からスタートしたフリー・ダウンロード・アルバムのプロジェクト『Teargarden by Kaleidyscope』に続く、約5年振り通算7枚目の新作『Oceania』をリリース。91年にデビュー以降、数々の輝かしい記録を打ち立てながらもバンドは一度空中分解したが、唯一のオリジナル・メンバーでありバンドの核となるBilly Corganは見事にカムバックした。90年代を彩ったあのメロディに夢を見たあなた、そしてまだまだ“スマパン”という通称さえも知らない10代のあなたも、この壮大なロックンロール叙情詩を体感してほしい。
-まずは率直な言葉を聞かせてください。5年振り7枚目の新作『Oceania』を完成したいま、パーソナルな心情としては何を想うか、またTHE SMASHING PUMPKINSとしてはどのような状態にあると考えますか?
バンドは今とてもいい状態にあるんだ。だから、とても気分がいいよ。アルバム『Mellon Collie~』以来の、とてもポジティヴなリアクションが来ていて、バンドの周りがこんなにエナジーで溢れているのは、僕にとっては久々のことだからとても素敵だよ。
-新作『Oceania』を聴きましたが、またしても素晴らしい作品を届けてくれたことは純粋に嬉しいです。では、このアルバムはどのような着想から始まったのか?そしてコンセプトはあるのか?アルバムの概要を教えてください。
特にコンセプトはなかったね。ただ、強力なアルバムを作る必要があるということは感じていたんだ。人の心をつかんで離さない音楽を作ることが僕にはもはや出来ないとみんなに思われていることには気づいていたからね。THE SMASHING PUMPKINSは様々なコンセプトが元になっているバンドだけど、オーディエンスからのエナジーや興味がなければ、コンセプトも何もかもが意味の無いものになってしまうんだ。今の状況はオーディエンスも年を取ってしまい、そのほとんどはTHE SMASHING PUMPKINSの過去にしか興味を持っていないんだ。でも、僕はTHE SMASHING PUMPKINSの過去にはそれほど興味がないんだ(笑)。だから、今と過去をうまくミックスしないと、過去はシュールな映画になってしまって、同じ映画を何度も何度も観ているのと同じになってしまう。僕たちの音楽をそんな風にするつもりはさらさらなかったから、『Oceania』には新鮮なエナジーを込めたんだ。
-『Zeitgeist』リリース後あなたは“もうアルバムをリリースしない”と宣言し、それ以降フリー・ダウンロードで“Teargarden By Kaleidyscope”プロジェクトを進めてきましたが、ここにきて従来のアルバム・フォーマットに戻し新作を発表したのはなぜですか?
今のインターネット時代では、オーディエンスによって1曲があまりにも早く飲み込まれてしまうことに気がついたんだ。あたかもそれがなかったかのようにね。新鮮なのは1日だけで、あとは消えてしまう。こんなこと言ってバカみたいに聞こえるかもしれないけど、僕はものすごくたくさんの曲を書いたから、それなりに評価されたって良かったと思っているんだ。もちろん僕が書いた曲の全てが素晴らしかったとは思わないし、そんなことが僕に出来るとも思わないけど、でもいい曲だってあったんだ。それなのにオーディエンスは新曲を悪く思いたがっているんだ。そうすれば昔のバンドに戻ってくれるんじゃないか、僕が昔の曲をプレイするんじゃないかという幻想を抱いているんだよ、なんかひねくれた考えだよね。昔の曲を論議するために新しい曲が利用されていたんだよ。そんな一連のことを払拭させるためには、アルバムだと思った。もちろん、映画といった別のアーティスティックなチャンスがあればそうしていただろうけど、このバンドがステートメントを打ち出すための最も自然な形がアルバムだったんだ。
-プレス・リリースでは“セドナにある空っぽの映画館で作業した”とも伝えられていますが…。
いや、それは本当じゃないよ。
-(笑)では、実際には今回のレコーディングはどのような形で行われたのでしょうか?
ここシカゴにある僕のスタジオで録ったよ。ただ、アルバム用の曲作りを始めたのがセドナにある空っぽの映画館だったから、その噂はそこから来たんじゃないかな?でも特に面白い話はなくて、ただそこでしばらく作業しただけだよ。それから、シカゴに来たんだ。
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