Japanese
FUNKIST
2012年04月号掲載
Member:染谷 西郷(Vo)
Interviewer:小澤 剛
-今もおっしゃったように、HIVに感染した方の前で演奏をされていて、ちょうど1年ぐらい前に起きた、東日本大震災のチャリティーの作品もリリースされています。FUNKISTはそういったことに意識的であるような印象があります。ミュージシャンとして、ヴォーカリストとして、震災後に何か変わったことはありますか。
音楽をやるべきなのか、やらない方がいいのか。音楽ではなくて、他にやることがあるだろう。震災直後にはそういった意見がありました。でも、僕達は音楽には力があると信じている。HIVに感染して、あと1週間しか生きられない人の前でライヴをした時には、もどかしさが99%を占めていました。音楽で救えるわけではない。音楽で治せるなら、治したいけど、治せませんから。でも、残り1週間の命の人の中に、15分だけでも一緒に笑いあえる時間が作れたかどうかという意味では、音楽には力があると思います。その瞬間を分かち合うことで、その人が生きていたということを、僕の心の中に持ち続けて歌い続けることができると思いました。とは言っても、震災が起きた時は悩みました。歌うべきか、歌わないべきか。被災地に行くべきか、行かないべきか。そういう中でも僕は4月上旬には宮城県に行って、ボランティアをして、ライヴをしました。バンド仲間からは“FUNKISTは行動をするのが早かったよね”と言われました。震災が起こってから2~3週間はすごく葛藤しましたけどね。メンバーの間でも話をしました。今は被災地には行かない方がいいんじゃないかとか、被災地に行っても音楽はやらないほうがいいんじゃないかとか。でも、被災地に行って、被災地の人と知り合って、友達になって仲良くならないと分からないことが多いということもあります。“東日本が大変なことになっているから、みんなで何かしようぜ”という歌は僕には歌えない。僕が歌えるとしたら、“俺の仲の良い友達が困っているから、ちょっと力を貸してくれないか”ということ。震災はすごくネガティヴなことだから、二度と起きてほしくない。だけど、被災地に行くようになって、仲良くなった人がいるからこそ歌える言葉もある。だから、その出会いはずっと大切にしていきたいと思っています。
-被災地の方と知り合って分かったことというのは、どのようなことですか。
最初にボランティアをして、帰りにライヴをしたんです。ライヴにはおばあちゃんや子供が来てくれて、一緒に笑ってくれたり、歌ってくれたりしました。4月上旬の頃は“ミュージシャンは演奏を自粛するべきだ。音楽をやることが不謹慎だ”と言われていました。電気の問題もありましたし。でも、被災地には“歌ってくれてありがとう”と言ってくれる人や、“歌がなくて寂しかったんだ”と言ってくれる人がいました。このことによって外から言われることはどうでもよくなりました。“何で音楽なんかやってんだ、今は他にやることがあるだろう”と言う人はいるけど、僕が知り合った人は音楽を求めているから、僕はこの人のために歌おうと思いました。
-実際に言われたことがあったんですね。
おばあちゃんが、“来てくれてありがとう。あなたたちがしてくれたことは巡り巡ってあなた達に還るのよ”と言ってくれました。家をなくしたばかりの人がそんなことを言ってくれて、この人は何て強いんだろうと思いました。被災地に行って逆に力をもらいましたよ。それから何度も被災地に行くようになって、宮城県の橋浦小学校という小学校に乙武洋匡さんと授業をしに行く機会があったんです。乙武さんが子供たちに、震災があって悲しかったことと、将来の夢を聞くという特別授業をしました。子供たちが友達と別れて悲しかったこととか、いろいろなことを教えてくれました。その時に“将来の夢は?”と聞いたら、“すごくたくさんの人が助けてくれたから、僕が大人になったら、人を助けられるようになりたい”と言う子がいました。“給食がすごく少なくなっちゃって、友達がもっと食べたいと言っているから、大きくなったらごはんをたくさん作れる人になりたい”と言う子もいた。誰かのために何かをしたいという夢を語ってくれた。それがすごく衝撃的でした。家がない子もいたし、家族を失った子もいた。家が欲しいとか、家族に会いたいということを言ってもいいと思うんです。それでも、誰かの力になりたいと言う。彼らはとてつもない悲しみや痛みを抱えたけど、それと同時にやさしさも知っているんだなと思いました。そう思った時に、これからの日本はこの子達が変えていくのかもしれないなと思ったんです。そこで生まれたのが「絆」という曲。「絆」は被災地の子供たちに向けて作った曲ではなくて、被災地の子供たちが発信してくれた言葉を乙武さんが歌詞にしました。「絆」に出てくる、“いつも誰かの想いに支えられてた 今度は僕のすべてであなたを幸せにしたい”という歌詞は、被災地の子供たちが語ってくれた夢なんです。『7』に入っている「絆」のアルバム・ヴァージョンには、橋浦小学校の子供たちの声を入れました。
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