Japanese
鴉
2010年12月号掲載
Member:近野 淳一(Vo&Gt) 一関 卓(Ba) 渡邉 光彦(Dr)
Interviewer:山田 美央
-ちなみに、自分たちでアルバムを作っていく中で気付いた“鴉らしさ”っていうものは、あえて言うならどんなものだったのでしょう?
一関:薄々感じてはいるけど、誰も口にしないっていうのはあって。“うちらはこうじゃなきゃいけないんだ”っていうのは絶対あるわけないけど、“ぽいな”っていうのはどこかにありますね。薄々感じている“ぽさ”っていうのを持っていれば、そこでらしさっていうのが生まれたりするかなって。
近野:そうですねーやっぱり、こだわり方自体を読まれたくはないけど、何回も聴いて実は知って欲しいしっていうところだったり。単純に分かりやすい所で言うと、結構僕は人に興味を持ってもらいたいなっていうところを込めて、割と叫んで歌っている時代があったんですけど、このアルバムを作るまでの期間の中で、ここは叫ばないで歌ったら実は素晴らしいメロディだったってのを発見し直したりして。だからもう一回歌い直したいっていうのもあって、曲に対してはすごく純粋にいたいなっていうのがありますね。
-前に進むために、逆に過去を振り返って見つめ直すみたいなことも多かったりするんですか?
近野:ようやく客観視できるようになってくるのが、3年前くらい経った曲に対してなんです。ようやく最近聴いて“これはいい曲だったんだ” とか判断できるようになるんですけど、1年やそこらくらいだとただの未熟な曲にしか聴こえなかったりして。時間の置きがすごく影響してるんだなって思います。だから、今回昔の曲が入ってることはすごく自然なことなんですよね。あと、思い入れっていうやつが味方してくれる時と、敵になる時があるってことだと思うんですよ。1年くらいしか経ってない自分たちってどうしてもなんかこう未熟な物体でしかないようにしか今も見えないけど、3年くらい前の自分たちってすごく純粋にやっていたような思い出として変わっていて、ようやく客観的にあの頃やっていたことはかっこよかったって。だから、結構昔やっていたこととか思い出したりして、繋がっていってますね。
-なるほど。今回、昔の楽曲が多く入っていますが、「今日モ旅路ハ雨模様」という曲がすごくキーになる曲だなぁと思いました。
近野:そうですね、すごい昔の話になるんですが、アマチュア時代にやっていた時に、自分の中で完全にやりきったような感じがして一回バンドが止まったんですよ。その間に一年くらいあって、「今日モ旅路ハ雨模様」はその当時の曲で。今回のアルバムにそれが入るっていうことが、自分でも結構意外だったところがあって。自分の中ではすごくライヴを意識した曲というか、CDでかけてもらっていい曲だって思われるよりも、ライヴで聴いた客さんに良いバンドだって思ってもらいたいっていう意識で作っていった曲です。今回のアルバムは、全曲リード的な気持ちで作って入れたって言いましたけど、この曲一曲だけはちょっと違ってて、すごく過去のもので自分にとっての思い入れで生き続けている曲なんです。アルバムに入ることによって、そのアルバムの中には、もちろんその曲はいつ作られたなんて書いてないですけど、これから初めて鴉を聴いてくれる人や、CDリリースをしてから鴉を好きでCDを買い続けてくれている人が聴いてくれていることに対しては、今までやってきたことの意味みたいな、すごく喜ばしさを感じる嬉しい一曲ですね。
-「雨上がりのジルバ」もすごくジャジーで艶のある曲でいい曲だなと思ったのですが、普段の3人に加え、SOIL&”PIMP”SESSIONの丈青さんと一緒にやってみてどうでしたか?
近野:すごい勉強になりましたね。うちらが先に録り終えて、それに対して合わせてもらうって形だったんですけど、録音された音に対してもすごくセッション感があるというか、やっぱりスキルが全然違うなっていうところが衝撃だったし。咄嗟に「この部分は何のコード?」とか軽く聞かれるだけですけど、それいっただけでもういろいろフレーズが出てくるっていうのはすごいなと。割と僕は作りこみがちな人間なので、フリーにバンバンいろんなことを出してくる人をみるとすごいうらやましいなと思いますね。でも、今のライヴでも、その場の空気だったりを受け入れて、その日にしかないことをやっているっていう意味では、ある意味近いことをやっているのかなと思いますけどね。
-今回、アルバムのタイトル・ナンバーを最後に持ってきていますが、アルバムの曲順にはこだわりはあったんでしょうか?
一関:いろいろみんなで、全部並べ替えてみて。こだわりがないからこその自由に並べ替えて、イメージ直感で決まった感じです。車の運転中とか普通にフラットの状態で聴いてみて、あれって思ったことを変えたりして最終的にたどり着いたのがこれですね。
近野:感覚的に決めた中で、「未知標」だけは決まってたよね。最初にしようって作った曲だからこそ、最後にしようっていう自分のわがままから始まりましたね。
-“最初にしようと思ったからこそ最後に”っていうのはなぜでしょうか?
近野:14曲っていうなかでの流れを考えて、この曲が最初をイメージして作ったんなら、また次へ向かっていくための力を持っているんじゃないかって考えて。希望にはじまるっていう意味で最初の曲のイメージで作ったので、これは最後に持ってきたら逆に次につながるための温度感につながるんじゃないかと思って最後にしました。自分はメッセージ性のあるものを作るタイプではないと思ってきたんですけど、今回「未知標」に関してだけは、メッセージ性だけというか、その時言いたかったことをすごい込めた曲でもあったので、そういう意味でも自分の中でみても新しい発見だと思いますね。
-では、最後に。『未知標』というアルバムを作ってみて、また新しいこの先が見えてきたかと思いますが、思い描く今後はどういう姿でしょうか?
近野:いろいろシングルを出してから今までっていう中で、今回、ただ戻ってきたんじゃなくて力をつけて戻ってきた感じだったので、こっから先に行きたいというよりは、また同じようにさらに強い力を持って繰り返すのかなって思ってますね。
一関:やっぱりそうですね、薄々気づいてる“鴉っぽさ”っていうのをこのまま持ち続けて、いろんなところ、いろんな方向性に活かして、また戻ってきてっていうことの繰り返しだと思いますね。音なりなんなりこのアルバムを通して経験して、これから先は今以上に説得力のある音に近付きたいなっていう思いが強いですね。
渡邉:このアルバムをより多くの人に聴いて欲しいなと思いますね。それから自分として面白いと思える曲作りやライヴを変わらずたくさんやって行きたいですね。
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