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INTERVIEW

Japanese

毛皮のマリーズ

2010年11月号掲載

毛皮のマリーズ

Member:志磨 遼平

Interviewer:道明 利友


-ヘッドフォンで聴くと、その音の気持ちよさはよく伝わるんじゃないですかね。音一つひとつの輪郭ははっきしていながら、広がり、奥行きがすごくあるこの音像は。というやり方が、現代の音楽とはちょっと違う“古きよき”みたいな感覚を毛皮のマリーズの音楽に与えてるのかなっていう気がします。よく言われるでしょう?“今どき”の感じではないよね、みたいなことは。

志磨:そうですね。楽器のセッティングをしてる時も、“いいの?”って聞かれますもん。こういう風にしたいのでこういうのでお願いしますって言うと、“やっちゃっていいならいいけど、今時いないよ。大丈夫?”みたいな確認を、皆さんとっていただいてるっていう(笑)。で、僕は、“全然大丈夫です”って。だから、そういうエンジニアさんとかもほんまは感じてると思うんですけど、ものすごく良いプレイヤーの演奏を、マイク1本、2本ぐらいで、ただスタートボタン押して待つだけっていうのが絶対一番良いんですよね。後で音を手術するとか、わざわざ輪郭をイコライジングしたりっていうのも、それが本当に良い音だったらしなくていいですからね。だから、例えば音量のバランスも、必要なところはちゃんとプレイヤーが手で上げるっていうんですか。ギターもドラムもね、要るフレーズはプレイヤー自身が音量を大きくして、要らないフレーズもプレイヤー自身が小さい音で弾いてだとね、そういうのをシンプルに録れたら一番いいんですけどね。………………。“サウンド&レコーディング”のインタビューみたいになってる(笑)。

-(笑)“サンレコ”的な話しに行き過ぎると困るので、歌詞の話しもうかがわせてください。「デュマフィスの恋人」は、「Mary Lou」からのアンサーソングっていう解説が資料にはありますが……。ということは、この2曲はセットみたいな感じで作られたとか?

志磨:「Mary Lou」をシングルで出しましょうっていうのがまず決まりまして、その時点ではまだ「デュマフィスの恋人」はないんですよ。で、先ほどの信藤さんにジャケットをお願いして、出てきたイメージが今回の通常盤のほうのジャケなんですね。女の人が召される瞬間、というか……。それが信藤さんなりの「Mary Lou」のイメージで、その写真にすごく感動しまして。で、投げっぱなしやった「Mary Lou」のお話に“オチ”を付けたくなるっていうんですか? 「Mary Lou」には続編はなかったんですけど、信藤さんの素晴らしい写真が来たもんで、その続編を作りたくなっちゃって。だから、「Mary Lou」のその後じゃないですけど……。1曲目を歌っている男の子側へというか、恋人を残していなくなっちゃうメリー・ルーさんからのアンサーソングというか。お返しのラブソング、というやつですね。

-すごくいい写真ですよね。天に召される悲しい瞬間にも見えるし、でも美しくて……。

志磨:そうですね。僕としては、幼い、男女の駆け落ちものみたいなのを考えてこの曲は作ってたんですけど……。信藤さんとPVの監督さんにも言われたんですけど、おふたりのイメージでは、“幼いラブソング”に聴こえなかったというんですよね。妙齢の女性というか、普通の成人女性のイメージというか。だもんで、なんかしかの理由があって去らなければいけないメリー・ルーさんの心境じゃないですけど……。若くして世を去る的な、たぶんそういうイメージなんかなぁと。で、それがなんとなく“椿姫”っぽいなと思って、タイトルもこれなんですけど。

-“デュマフィス”ですね。“椿姫”の作者、アレクサンドル・デュマフィス。“椿姫”も「Mary Lou」も、悲劇であることは間違いないと思うんですけど……。愛する人への想いを貫いて天に召されるっていうイメージは、すごく温かいというか、感動があるというか。

志磨:感情と一生分の時間を天秤にかけて、釣り合う瞬間っていうのがあるじゃないですか。“好き”っていう気持ちを持って、今、人生の幕が閉じんとしてるわけですよ。イベントとしてはあからさまにこっちのほう、人生の幕が閉じんとしてるほうがデカそうなんですけど、そういうのをチャラにしてまうぐらいの感情というか……。死んでもいいから何か伝えたいとか、ね。実際にこのシーンにおったら、そんなこと言ってる余裕はないんですよ、絶対。でも、それって、不謹慎やけど、“あぁ、美しい……”みたいに感じる瞬間ですよね。ドラマチックじゃないですか。だからいいんですよ。