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Japanese

[Champagne]

2013年07月号掲載

[Champagne]

Writer 山口 智男

[Champagne]の快進撃が止まらない!
あ、いや、デビューした時から彼らを追いかけてきたファンは、彼らはずっと快進撃を続けてきたと言うかもしれない。うん、確かに、それはそうだと思う。じゃあ、こう言いかえよう。彼らの快進撃は年々、加速度的にその勢いを増している、と。
加速スイッチが入ったのはいつ頃だったろうか? もちろん、すべてはそれまでの活動の積み重ねが結果となって表れているわけだから、いつということは言えないと思うが、個人的に“何かすごいことになってきたぞ!!これはもっとすごいことになるんじゃないか?!”とゾクゾクしたのが、昨年の6月、2日ともソールド・アウトになったSHIBUYA-AXワンマン2デイズ公演を観た時だった。その年の4月にリリースした3作目のアルバム『Schwarzenegger』のアルバム・ツアーのファイナル公演。その動員に表れたバンドの勢いもさることながら、熱度満点の充実したパフォーマンスからは、[Champagne]というバンドが持っている可能性が一気に広がったことが感じられた。
因みに『Schwarzenegger』は前作『I Wanna Go To Hawaii.』のオリコン初登場14位を4ポイント上回る同チャート初登場10位を記録。アルバム・ツアーは前述したSHIBUYA-AX 2デイズのみならず、全公演がソールド・アウトになったそうだ。
その後、数々の夏フェスで改めてその存在感を見せつけたバンドは今年1月、イギリスの大人気バンド、MUSEの来日公演のオープニング・アクトに抜擢された。その1年前にはKASABIANのオープニング・アクトを務め、(KASABIANのメンバーの了解の下)彼らのヒット曲「Club Foot」のカヴァーを、KASABIANのファンにぶつけるという洒落っけたっぷりのパフォーマンスを披露していたが、この時の会場は、さいたまスーパーアリーナ。単純に規模が違った。
その12日後には両A面シングル『Starrrrrrr / 涙がこぼれそう』をリリース。フェスも含め、以前よりも大きなステージに立つことが増えてきた中で感じた“大観衆と1つになりたい” “3万人の大観衆の最後列の人にまで届けたい”という想いを反映した「Starrrrrrr」は、それまで敢えて使ってこなかった4つ打ちのリズムが生み出すダンサブルなグルーヴや曲そのものが持つ満天の星空に気持ちが舞い上がるような高揚感が大歓迎された。彼らはそのスターをひっさげ、ミュージック・ステーションに出演した。
そして、5月にはイギリスのブライトンで毎年5月に開催されるミュージック・フェスティバル、The Great Escapeに出演するため渡英――。冒頭に書いた言葉を繰り返そう。
[Champagne]の快進撃が止まらない!!
いや、グラストンベリー・フェスティバルのヘッドライナーを務めることを目標に掲げる彼らのことだから、ここでどんなに快進撃、快進撃と騒いだところで、“まだまだ道半ば。ようやく一歩を踏み出したところ”と言うに違いない。考えてみれば、2010年1月に『Where’s My Potato?』という人を食ったタイトルの(でも、ちゃんと意味はある)フル・アルバムでデビューしてからずっと、“オンリーワンじゃクソ食らえだ/ナンバーワンが良い”(「You’re So Sweet & I love You」の一節)などと、ことあるごとに野心を剥き出しにしてきたバンドだ。これぐらいで満足するわけがないんである。
ひょっとしたら、「Starrrrrrr」と今年4月にリリースしたアンセミックなシングル『Forever Young』というある意味、分かりやすい――受け入れられやすい2曲を聴き、彼らがビュンビュンと吹きはじめた追い風になびいたと思った人もいるかもしれない。しかし、そういう人たちは彼らが6月26日にリリースした4作目のアルバム『Me No Do Karate.』を聴き、彼らが追い風になびくどころか、逆に追い風に逆らうような挑戦をしていることを知って、歯ぎしりすることだろう。
その『Me No Do Karate.』。90年代のUKロックからの影響をバックボーンに持ちながら、それだけに止まらず、ハード・ロック/ヘヴィ・メタル、パンク/ハードコア、ファンク、ロカビリー……といったメンバーそれぞれに持っている幅広いバックグラウンドからのインプットも加え、常識および定石に囚われない閃きとともに作り上げた唯一無二の[Champagne]サウンドという意味では、彼ららしい作品には違いない。また、ミュージシャンとして新たな刺激を求める意欲が若いバンドならではの向こう意気や洒落っけも感じさせる遊び心とともに冒険的とも挑発的とも言える曲の数々に表れているという意味でも実に[Champagne]らしい。
それにもかかわらず、これまでで最もアグレッシヴという印象があるのは、作品全体から解き放たれたような大胆さと一気呵成に作り上げたような勢いが感じられるからだ。それはバンドの成長に加え、快進撃や追い風という言葉で表現した状況の変化も少なからず関係しているのかもしれない。
ジャズを連想させるピアノと荘厳なストリングスが鳴り、川上洋平(Vo/Gt)がファルセットで歌いはじめるTrack.1の「Rise」――ダンス・ミュージックのリフレインを効果的に取り入れ、リスナーを驚かせながら新境地をアピールするロック・ナンバーをオープニングに持ってきたところに新作に対する彼らのアティテュードが窺える。
レコーディングの現場がこれまでにないほどオープン・マインドな空気にあふれ、刺激に満ちていたことは想像に難くない。ファンキーに跳ねるリズムがサビではサンバ風に転じて、「Starrrrrrr」に負けない高揚感を醸しだしたあと、突如、スラッシュ・メタルになる「Kick & Spin」、曲に不釣合いなオリエンタルなギター・フレーズで聴き手を煙に巻きながら、メンバーそれぞれに聴かせどころがある熱度満点のバンド・アンサンブルをアピールする「Wanna Get Out」。センチメントを湛えながら、シンプルかつストレートなアレンジで歌メロの良さを際立たせる「Travel」。ピアノとドラムのループが加えるニュー・ウェイヴっぽい質感が新しい「This Is Teenage」、絶妙なコード使いと轟音で唸らせるギターが新境地を思わせる「Plus Altra」などなど聴きどころは満載だ。
「Starrrrrrr」「Forever Young」――『Me No Do Karate.』にも収録されているこの2曲は、変化に富んだ『Me No Do Karate.』をより劇的に聴かせるための布石だったと考えたい。
スイッチと言うのかギアと言うのか、まぁ、表現はなんでもいい。このアルバムをきっかけに彼らの中で何かが変わったことは明らかだろう。『Me No Do Karate.』はこれまでないほど大きな成果を残すにちがいない。その野心作をひっさげ、[Champagne]は来年の3月28日、いよいよ日本武道館公演に挑む。

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