Overseas
[Champagne]
Skream! マガジン 2011年07月号掲載
2011.06.19 @恵比寿LIQUIDROOM
Writer 山田 美央
1 stアルバム『Where's My Potato?』で鮮烈な登場を決め、瞬く間に全国のライヴキッズたちを虜にした[Champagne] 。前作から1年ぶりとなる2月9日、待望の2ndアルバム『I Wanna Go To Hawaii.』がリリースされた。ライヴの回数を重ねるごとに勢力と破壊力、中毒性を増していく[Champagne]の“現在”を象徴するかのように、3月3日からのリリースツアー「tour 2011 “I Wanna Go To Hawaii. ~いや、総長マジで~”」は、多くの人が詰めかけチケットはソールドアウトが続出。当然のごとく、6月19日に行われたツアーファイナルは、即完売という注目度の高さを見せつけた。
LIQUIDROOMはお分かりの通り、一度階段を上がってバースペースを通過し、再び階段を下ってフロアにたどり着くことができる。この日は開場後にも関わらず、思い思いTシャツとタオルに身を包んだオーディエンスがライヴハウスの外にまで溢れかえり、階段までも熱気が立ち込めていた。フロアに降りてゆく人々は興奮に笑顔を浮かべ、これまでに体験したライヴの思い出と今日これからのパフォーマンスに期待を寄せるあまり、ライヴ前にも関わらず熱に浮かされたようになっていた。
照明の落ちた会場内に「Burger Queen」が流れると、オーディエンスからは沸点に達した歓声が飛び交った。そのままアルバム1曲目の「?」になだれ込むと、モッシュの波がステージに押し寄せる。「それを知る為に死ぬまで続けたいんです」と言い切る川上洋平(Vo&Gt)はやはりカッコいい。確実なものが減り、不確定要素ばかりが積み重なって行くこの世の中で、確実な存在として強い求心力を持つのだ。キッズたちはその存在に焦がれ、自分もその一部になりたいと音に中に飛び込んで行く。
[Champagne]は非常に不思議なバンドだ。一見スマートな印象を与えるにもかかわらず、中核に据えた感情は重く煮えたぎっている。「聴く人自身が考えて何かを感じ取ってほしい」と川上が語るように、楽曲はバンドの思考を押し付けるわけでもなく、あくまでも自分の姿勢を提示している。だからこそ実直な説得力があり、サウンドは純粋に恐ろしいほどの熱の塊となる。ステージとフロアに飛び散る、汗とほとばしる熱量。熱を追求する貪欲さ。どちらからも強烈な意欲が突き刺さり、共有し合う様子がありありと伝わってくる。「泣いても笑っても、本日が最後でございます!」という川上の叫びに触発され、フロアからは地鳴りにも似た揺れが起きた。「Revolution, My Friend」「Yeah Yeah Yeah」など洋楽然としながらもキャッチーで、聴く者を湧き立たせるようなサウンドでオーディエンスに挑みかかる。「(アルバムのタイトルは)『I Wanna Go To Hawaii』だけど、ハワイなんか正直どうでもいい」とファイナルのライヴをオーディエンスとともに体感できる喜びを真っすぐな言葉で投げかける。川上とともにバンドを支えてきた磯部寛之(Ba)も、「入って10年。グラストンベリーのヘッドライナーを目指す。笑う人は笑えばいい。付いてきたヤツはいいとこに連れてってやるから、これからもよろしく」と宣誓。彼らの“過去”と“未来”を祝福する代わりに、親愛な温かさに満ちた喝采にフロアはわれた。
この日の折り返し地点「Tic Tac Toe」のあとには、KASABIANの「Club Foot」のカヴァーを披露。全く違和感なく、自分たちの曲のように消化してパフォーマンスする4人の度量に、オーディエンスは心を鷲掴みにされていた。そしてこの日が“父の日”であったことを受け、川上は「父親に向けて」と「風邪をひいた時の歌」を演奏。これまでの熱量とは打って変わって一言一言にじっくりと思いを込めて歌う姿に、誰もが食い入るように見入っていた。「city」「Cat 2」と駆け抜け、「You're So Sweet & I Love You」まで全16曲のステージに全力でぶつかっていった。アンコールでは、新曲「言え」と「For Freedom」を披露。2度目のアンコールが行われ、これまでの[Champagne]からは異色ともいえるサウンドが展開されTHE WHOのカヴァー「My Generation」で限界を越えたフロアを再びかき乱した。余計に火をつけられたフロアの熱い視線に応え、急遽3度目のアンコールにメンバーが再登場。PRIMAL SCREAMのカヴァー「Accelerator」をプレイし、文字通り完全燃焼。メンバーがステージを後にした後も、鳴りやまない歓声が響いていた。
[Champagne]の4人が進む道は、嵐のように周囲を巻き込んで確実に拡大している。どの場面を切り取っても、一切の遜色なく熱さが満ちている。高揚し続ける熱に動かされ、突き上げられる拳は圧巻の一言た。健全だけれど、この上なく危険な中毒性を孕んだ音楽。純粋すぎる存在は、圧倒的な影響力を持っているいうことを身をもって体感した夜となった。
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