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INTERVIEW

Japanese

クラムボン

2015年03月号掲載

クラムボン

Member:原田郁子 (Key/Vo) 伊藤大助 (Dr)

Interviewer:石角 友香

3人の開拓者が各々の土地で収穫したもの=スキルと感覚を持ち寄ったらとてつもなく新しくて屈強な製品が出来上がってしまった――時にそれは市場のニーズの半歩先を行くようなものだけれど、近い未来の日常ではポピュラーになっているようなもの。クラムボン、5年ぶりのオリジナル・ニュー・アルバム『triology』は、そんな音楽のプロフェッショナリズムの矜持が凝縮された1枚になった。5年という目まぐるしく変化するシーンにあっては決して短くはない月日を要したことを入り口に原田郁子と伊藤大助に話を訊いた。

-5年っていう歳月ってなかなかすごいじゃないですか? もちろんその間にカバー・アルバムやライヴ・アルバムのリリースはありましたが、この5年というのは"バンドにとってどういう必然の時間だったのかな?"と。

伊藤:うーん、まぁバンドの活動も大事ですけど、それぞれが自分ひとりとしてやることが多くなってきてるので。うん。そうしてるうちに......何年空いたっていうのも考えないっていうか、ね?

原田:止まっていたことじゃない、うん。

伊藤:うん。自分たちのことをやっていたら経ってしまった時間なんですけど。まぁ、もちろん5年って改めて考えたらなかなかな時間ですもんね。でもなんか、当時は......じゃあ『2010』ってのを出したころだったら、そのときには思ってなかったこと......まぁ、学校に行って先生やったりだとか。こう、自分の好きなイベントをやり出したりとかっていうのは、その前には考えてなかったことだし。

原田:今言ったように大ちゃんが母校で学校の先生を始めて、授業を受け持つのも、ミトくんがよりクラムボン以外の作曲やプロデュースで飛躍的に忙しくなることも、私が妹と、"キチム"っていう店を吉祥寺で始めたのも、『2010』以降のことで。なんかその、今、クラムボンをやりながらそれぞれが動いてるってことは、なんかこの5年にそれがちょうどすっぽり入ってるような時間で。これまでクラムボンでやってきたことがあるから、さらにそれぞれが深めていったりだとか、広がっていくのに......かかった時間というか。

-お互いにやってらっしゃることをどう見ているんですか?

原田:デビューしてそれこそバンドのインタビュー受け始めたころから、こんなふうに3人が別々のことを、ソロなのか、別のバンドなのか――もしかしたら音楽以外の何かかもしれないんですけど、そういう個別の動きがありながらクラムボンもあるっていう状態が望ましいなと思ってて。私たちにはそういう方が合ってるだろうな、と。だからその、なにもかもバンドに持ち込んで、そこで完結するんだっていうふうには初めから思ってなくて。そこまで"バンド"っていうものへの理想がなかったというか。むしろ、それぞれひとりひとりを磨かないと、全体も成立しないから。だからすごく極端なこと言うと、例えば大ちゃんが"学校の先生に専念したいので、何年かクラムボンを休みたいです"って言ったら"おぉ!"とはなるけど、それを止めることは、たぶんしない。すごく考えてのことだろうし。で、そうなったとして、じゃあそこで "バンドが終わる?"っていったら、そういうことではない。っていうね、なんかそういうことを想像してたんです。だからやっとこう......"ちょっとずつまいてきた種が、今いろんなところで育ち始めてるなぁ"って、すごく客観(笑)、属してないみたいに言うけど、すごく嬉しくもあるし、頼もしいなと思う。

伊藤:自分のことやってて欲しいですよね。僕もなんかそんな、学校の先生になるなんて想像してなかったですし。その......そういう、そうね、バンドのためにというかご時世的にバンドだけやってるわけにはいかないっていうのももちろんあるでしょう。まぁ、20年というのも、"君たち20年ですよ"と言ってもらって、今の流れがあるというのもあるので。自分たちで"ここが区切りだから"っていうふうにしてなくて。そこをせっかくだからなんかね?"お祝いしようよ"っていう雰囲気を作っていただいてるっていうぐらい、なんていうか振り返ったり区切りをつけたりしてこなかったのもあったんですけど。まぁ、でも何年やってもきっと"もっと良くなってかなきゃいけない"みたいなのは、たぶん"どこまで行くと軌道に乗れる"みたいなことはきっと起きないっていうのは、実感としてあるので。なんか自分の好きなことをやっていて欲しいし、自分もそうしたいっていうのもありつつ。それが......そうやって"もっといいものが見たいな"っていう期待みたいなものはありますね。

原田:この何年、ソロをやらせてもらったり、フィッシュマンズで歌ったり、タムくん(wisut ponnimit)と曲を作ったり。そういうときも、クラムボンのことじゃ全然ないようで、関係なくはない。おそらく、クラムボンっていうのは、どんどん変わっていくものというか。変わっていっていいんだ、っていうことをやってるようなとこがあるから。なんかそれはどんどんどんな角度からどんなものを投げ入れても、"クラムボンはクラムボンとしてそこにある"、なんかそういう感覚はずっとあって。だからバンドを意識してないわけでもないし、意識しすぎてるわけでもないんだけど。その場所で何をやってるかっていうと、"常に変わっていく"......それはどんなことでもそうだと思うんだけど。ライヴひとつとってもそのやり方?"自分たちにとってライヴってなんだろう?"っていうのをほんとに向き合ってやっていくのに、やっぱりこれぐらいの時間はかかるっていう(笑)。だから自然に、――って言葉あんまり使いたくないんですけど、こないだの代々木公園のフリー・ライヴは"自然にやれた"わけではなくて、昨日今日のことではなく、1週間前に突然告知して、発売日に集まってくれたたくさんの人たちがいて、私たちとお客さんたちひとりずつの道のりもあって、スタッフとのチームワークがあって、何度も何度も、それこそ個人的には、毎回ライヴ音源聴き返しては、"ひどい......へたすぎる"って落ち込むとか。そういうトライ&エラー、"どうしたらもっと良くなるんだろう?"って考え続けてきた時間の上に生まれたもので。だから、すごく感慨深くもあって。"こういうこと、できるようになったんだなぁ"って。うーん......だから、"20年ってすごいですね"って言ってもらうともちろん嬉しいんですけど、でも、そのぐらいはかかるもんだという気持ちもあるし。やっとここからその地盤というか、築いてきたものからまたさらに、面白いことができるか?っていうことで。"まだまだ"っていう気持ちと"これからもよろしく"っていう、そんな気持ちがない交ぜにありますね。なんか、これまでを思うと、決して、かっこいいものではなかったしね。"あちゃちゃー"ってこともいっぱいあったし、もっとずっと尖ってたしね(笑)。だけど、そのときなりに精一杯、目の前のこと、やり続けていると、それを見て"かっこいい"と言ってくれる人がいる。それはなんだか不思議だなぁと思うし、励みになりますね。