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INTERVIEW

Japanese

the HIATUS

2014年04月号掲載

the HIATUS

Member:細美 武士(Vo/Gt 他)

Interviewer:山口 智男

昨年7月にリリースした『Horse Riding EP』はバンドが新章に突入したことをアピールする作品だったが、それから約8ヶ月、the HIATUSが完成させた4作目のアルバム『Keeper Of The Flame』が印象づけるのは、『Horse Riding EP』からの更なる跳躍とその結果、バンドが辿りついた新たなサウンドスケープだ。前作『A World Of Pandemonium』から実に約2年4ヶ月。その間、ドキュメンタリーやライヴDVDおよびアルバムのリリースもあったし、バンドは精力的にライヴ活動を行い、ファンの前に姿を見せ続けていたが、いつの間にか、とんでもない進化を遂げていたのだった。

-the HIATUSの作品を聴くたび、自分は細美さんの作る歌が大好きなんだって毎回、思うんですよ。

ありがとうございます。

-もちろん、バンドが作る音楽にもワクワクさせてもらっています。今回も新作を聴いて、制作現場はこれまで以上にクリエイティヴかつ刺激的なんだと感じました。

たぶん、メイン・ソングライターの俺と柏倉隆史(Dr 他)が現役のリスナーなので、それが大きいのかな。たとえば10代の頃に大好きだった音楽や、その時に持っていたレコードのライブラリーの中でだけ、音楽を聴いているわけじゃないから。リスナーとして、新しいものとか、面白いものとか、こんなの出たんだとか、こういうの知らなかったとかっていうのを、すごく貪欲に聴いている人間が曲作りの中心にいるから動脈硬化にはならないよね。ただ逆に、俺たちはいつも新しいものを求めてなきゃいけないっていうのもない。やりたかったからやっちゃった。作りたかったから作っちゃったっていうのがバンドの1番あるべき姿だと思うから、今回の作品も何か新しい音を探してっていうのではなくて、こういうのが作りたくて作っちゃいましたっていう感じなんだよね。

-the HIATUSを始めた頃と、バンドの中の雰囲気とかメンバーの意識とか、バンドとしての結束に変化はないですか?

バンドとしての結束は強いね。1作目からずっと強いんだ。the HIATUSは。

-それがより強くなったみたいな感覚は?

結束は最初から本当に強いから、その部分は全く苦労しない。それは全然、変わらないな。雰囲気はみんな、よりサバサバしてきてるね。何か言ったあとで"あ、今、俺ちょっと言いすぎたかな"みたいなのは全然ないからね。そういう関係は今後も続けられる気がする。

-そのサバサバした関係が今回の作品に与えた影響って何かありますか?

それはあるんじゃないかな。みんなお互い遠慮してないから。『Horse Riding EP』の後でアルバムに書き足した曲のうち半分以上は、俺1人で原型を作ったんだけど。アレンジはもちろん全員でやるんだけど、ちゃんとイニシアチブを取れるようになったから、"いや、俺はこっちのほうがかっこいいと思うんだけどな"って、"思うんだけどな"くらいの部分はいいんだけど、"絶対、俺はこうしたい"っていう部分に関しては曲げないで済んだね。やっぱヴィジョンがちゃんと見えてるヤツが方向を提示したほうが物作りってうまくいく時がある。もちろん、何にもないところから、みんなで作っていく曲もあって、それはそれですごく面白いんだけど。でも、ヴィジョンを持って"こういうのやりたいんだよね"っていう曲もthe HIATUSでやれるようになってきてる。それはすごく新しい。

-前のアルバムの『A World Of Pandemonium』の時、あるインタビューで、その頃は細美さんがまず曲を持ってきてという作り方をしなくなったと言っていたと記憶しているんですけど。

しなくなった。できなかったしね。

-その時は、みんなで作っているとおっしゃっていたんですけど、今回はそういう作り方ではないわけですね?

『Horse Riding EP』まではそうしてたの。でもそういうやり方を続けられるだけの制作費がなくなっちゃって(笑)。EPでアルバム全体の制作費の7割ぐらいかな、使い切っちゃったんだよね。だから"作曲ではスタジオに入れなくなったけど、どうする?"って話になって、"じゃあ残りは俺が書くわ"ってみんなに言って。それで久々にthe HIATUSの曲を1人で作るってことをやったんだけど、最初は何年かぶりだからさ、"そうは言ってはみたものの、ほんとに出来んのかな"って思ってた。でも、やってみたら"また曲を書けるようになってる。良かった"って。で、隆史が途中で"曲も書かなくて悪いなって思ってさ"って言って、何曲か書いてくれて、すげえいい形に収まった。

-書けなかった時期があったんですか?

いや、書けるんだよ。何でもいいんだったら、いくらでも書けるんだけど、新しい何かみたいなものとか、ハイエイタスで演りたい曲っていう糸口は見えてなくて、聴かせると、みんな"これ超いい曲じゃん"っていうのはあるんだけど、俺の中では"うーん"って。なんか以前書いたような曲を作るんだったらさ、もうその曲があればいいじゃん。だから、そういう意味では、曲はどんどんできるけど、"これはちょっと何か生まれちゃったぞ"って感覚がなかなか持てなかったんだけど、今回は1曲目の「Thirst」なんかは最初に作っている時から、なんかいつもとちょっと違うなあっていうのがあって、自分でも楽しかったよ。