Japanese
Nikoん
Skream! マガジン 2026年03月号掲載
2026.02.16 @渋谷WWW
Writer : 石角 友香 Photographer:稲垣ルリコ
Nikoんが、"2nd Album「fragile Report」購入者特典LIVEツアー「アウトストアで47」"のセミファイナル(ファイナルは2月20日の沖縄公演)を2月15日に渋谷WWWで開催した。配信プラットフォームに音源を置かず、CDでのみ聴けるリスナーとの対峙の仕方を貫き通す彼等と、CD購入という手間を通過してきたオーディエンスが作る空間は自ずといい緊張感に包まれる。アルバム・リリース時にオオスカ(Gt/Vo)が言っていた、容易に聴けない=リスナーの能動性とはこういうことかと非常に腑に落ちたし、それはこの空間にいなければ実感できなかっただろう。この日は"Re:TOUR 甲信シリーズFINAL"にも出演した2組、神々のゴライコーズ("アウトストアで47"初日にもゲスト出演)、Fallsheepsとの3マンである。
1組目はFallsheeps。ご存じの通りドラム・コーラスのItsuki KunはNikoんのサポート・メンバーでもあり、"アウトストアで47"には自身のソロでも出演したかなり近しい間柄と言えるだろう。が、それはそれとして川口淳太(Gt/Vo)が深く透明な単音を鳴らすと、もう誰も触れられない潔癖な意思が空間を支配する。冷たいぐらい澄んだ1曲目の「Skyquake」は次第に平熱のシューゲイズに突入。川口の"どんどんやっていきます"という短いMC通り、ポストロックを内包するオルタナティヴ・サウンドをタイトでソリッドなアンサンブルで展開していく。昨年リリースの最新作『Eureka』から「逃げたい」、「iai」、「乱気」と、Fallsheepsの今を明示していく中でも、ソリッドなマシンガンギターやOSAM(Ba/Cho)のよく動くフレーズ、ビートだけでなく緊張感を高める役割も果たすItsuki Kunのドラミングがユニークな「iai」は特に目も耳も離せなかった。Nikoんとは前身バンドからの付き合いである彼等。川口は"遠からず近からず、Fallsheepsを支えてくれるバンド"だと彼流の謝辞を述べていた。Itsuki Kun渾身のグロウルも聴かせた大曲「こころをだいじに」、ラストは長めのインストで3ピースの枠を超える「snowyyy-」と、冒頭の印象を35分で次々に塗り替えていったのだった。
演奏に全霊を賭しているバンドが集まっているとFallsheepsで実感したのだが、全く別ベクトルでそれを体現していたのが神々のゴライコーズだ。ビートこそネオ・ソウルっぽい揺らぎがあるものの、そこに藤原 忠(Gt)の夥しいエフェクターが作り出すスペーシィなギターが乗るともはや何がなんだか分からない。"混ぜるな危険"である。しかもドラム&ヴォーカルのグレート橋本は、ドラムも歌も天真爛漫な子どものような自由さだし、それらをバランスさせるようなガッツ aka こまけん(Ba)の演奏もかなり変態的。この音はこの人だからこうなんだなと1曲目の「just city」で愉快な気分になっていると、スッとNikoんのマナミオーガキが歌唱で参加。中納良恵(EGO-WRAPPIN')も真っ青なヴォーカルを放って去っていった。最初は様子を見ていたオーディエンス(なんたって、Nikoんの2ndアルバム購入者しかいない)も次第に率直なリアクションを起こす。その反応を見るに、彼等は音楽ファンなのだ。この後も2枚組の大作1stアルバム『KO-GO-NO GORAIKO-Z』から続々披露し、サックスの和田地球(くぐり)も共演した「レインボーロード」は橋本のポエトリーやダブっぽいコード感が時空を歪ませる。かと思えば3人で牧歌的なアカペラ・コーラスを聴かせる「らりたった」、重力から解放された藤原の演奏とアクションが紐付いた独特すぎる佇まいに目を奪われたラストの「hit his hip」まで、自分に根拠があれば何を演奏したっていいんだ、そんな痛快な気分を存分に味わわせてくれた。
ここまで"二者二様"すぎる3ピースのライヴを見せられると、それを仕組んだNikoんは自らが楽しみ、且つ自らを律しているのか? という気がしてくる。バンド間の関係値とか友情とか仲の良さとか、そうしたものは決して前面に出ない。記憶にぶっ刺さるライヴをすることのみにどのバンドも焦点を絞りまくっている。それはこの日だけでなく、"アウトストアで47"の他公演も"Re:TOUR"もそうなんだろう。1月に観た"新春謝罪会見"のタイミングではまだうっすらとしか感じられなかった、この恐ろしくハードなツアーをする意味がこの日見えてきたのだ。
サウンド・チェックからそのまま本番を始めたNikoん。アルバム同様1曲目は「fragile report」だが、オオスカの出音一発目の良さというか、音作りの周到さに、自覚はなかったが筆者の様相は"口あんぐり"状態だったと思う。オーガキのヴォーカルも独白っぽいトーンでありつつ"つくっては捨てて"のリフレインが明快に聴こえたことで、こちらもより集中力が増す。後で分かったことだが、この日のライヴはレコーディングを行いCD化される。それがオオスカの動きを抑制していたわけではないだろうが、前回観たときより高度なエフェクター使いをしていたと思う。鬼のようにツアーを回るだけでなく、その間にも試行錯誤し、加えて音響等のチームワークも研ぎ澄まされてきたのだろう。
そんなことを考えているところにサポート・ドラマー 東 克幸の空気を切り裂くようなビートとオオスカの不安感を敷き詰めるようなリフが響き「bend」へ。90年代UKのトリップホップめいた暗さとオーガキのJ-POPばりのメロディがもはや気持ち良く感じる。しかもどんどんライヴでの精度が増してるってどういうこと? 時々オオスカがマイクに乗るか乗らないかの距離で思い余った声を上げているのも自然なことに見えた。さらにポップなメロを歌いながら複雑なベース・リフを弾くオーガキに釘付けになる「nai-わ」。トリッキーなことはせず、歌とベース・プレイを踊るように連動させていく彼女を見ていると、"どんどんすごくなる"とはどういうことかを毎回確認できるのだ。
サンプリング・パッドや新たなギター・エフェクトも効果を出した「dried」は、トライアングルのスリルにどこかTHE POLICEにも似たアンサンブルの絶妙さを感じた。そしてこのあたりで、今日はオオスカのヴォーカル・ナンバーがないことに気付く。セットリストは手中にあるのだが、集中していたものでライヴのさなかに思い出した。今日はオーガキが歌い続けていて、彼女作の曲のイメージで1つの世界観ができあがっている。つまり2ndアルバム『fragile Report』のそれだ。そう思っていると、アルバムの中でもいわゆるシティ・ポップ的なメロや歌詞のムードを持つNikoんの発明「さまpake」の歌い出しにフロアから歓声が上がる。この発明が受け入れられ、今やシンプルに"好きな曲"になった証だ。さらにストレートに熱量が乗る「グバマイ!!」では自然に拳も上がるし、オーディエンスが前のめりになっているのも体感できる。あらかじめNikoんのライヴで盛り上がる気満々なわけじゃなく、この対バン全体を通して演奏に対するリアクションしかないフロアはいろんなライヴの中でも久々に心地よいものだった。さらに重くクランチなリフに磨きが掛かった「とぅ~ばっど」。オーガキのヴォーカルはソウルフルなパンチ力を増し、カオスを醸成するようにItsuki Kunがシャウトで乱入。加えて現役大学生ラッパーの€NELも加わり、ゲインの効いた声でブチかますラップで場をかっさらっていった。
7曲が終わった後、オオスカがこの日のライヴは『fragile Report』全曲を演奏し、今日の録音をCDとして3月のSpotify O-EAST公演のみで販売する予定だと発言。情報はすぐSNSに乗るが、第一報を本人から聞く臨場感は別物だった。その報告によってさらに沸き立つフロアにオルタナとポップの高い次元の結合である「靴」がドロップされ、目下最新曲の「Tokey-Dokey」が彼等には珍しい8ビートで素直に気持ちを加速させてくれる。
セミファイナルであるこの日。オオスカはこの常軌を逸したツアーで自分が何に気付けたかを話した。それは、各地で何十年も活動しているバンドも、去年結成した若いバンドも、みんな好きでやりたくてやってることに変わりはないということ。ライヴをやりまくること、全国各地のバンドに出会うことで得た、ツアーを始める前にはなかったその確信は、本物と呼べるものだと思う。外に向かうエネルギーを持った「(^。^)// ハイ」をラストに配したのもこの日にハマっていた。アンコールをしなかった彼等だが、演奏を終える間際にオーガキが放った"Nikoんでした。またどこかで会いましょう"の一言は、本当にまたすぐどこかで会えるという、事実ベースのカッコ良さだった。そう。すぐまたライヴハウスで会いましょう。
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