Japanese
Nikoん
2026.01.13 @渋谷CLUB QUATTRO
Writer : 石角 友香 Photographer:雨宮透貴
Nikoん、快進撃中と言っていいのではないだろうか。生粋のライヴ・バンドにして、2ndアルバム『fragile Report』収録の「(^。^)// ハイ」は全国34都道府県38のラジオ局でパワー・プレイ、Billboard JAPAN"Heatseekers Songs"で首位獲得と、楽曲評価も上昇中。恒例になりつつある"謝罪会見"は、2ndアルバム購入者は無料で入場できる47都道府県ツアー、そして同ツアーで訪れる各エリアのシリーズ・ファイナルを兼ねた"Re:TOUR"の間の開催で、さらに2月からは2ndアルバムのツアーも始まる。快進撃と書いたが、つまりは足で、身体でもぎ取った結果である。本誌では同公演から3ヶ月連続ライヴ・レポートで、2月15日に渋谷WWWで行われる"アウトストアで47"(満員御礼のため申し込み受付終了)、3月21日に渋谷 Spotify O-WESTで行われる"fragile Report RELEASE TOUR"ファイナルのワンマンまでを追い掛けていく。
クアトロのフロア左には会見用のテーブルとマイクが見える。会見をするわけではないのだが、何かありそうな仕掛けに一瞬気を取られる。スタートしたTOMMY(セレクトショップ"BOY"オーナー)のDJプレイはダークなエレクトロもラップ・メタルもポストパンクも(DRY CLEANINGだけは分かった!)フェティッシュな側面で繋いでいき、フッとsyrup16g「ex.人間」を挟むといきなり胸の奥に響きすぎたり。彼個人の直感的なプレイが、その実この日の2バンドへのリスペクトに感じられた。
"ROAD TO武道館Tシャツ"も散見されるフロアは、a flood of circleファンもかなり多いと見た。この日の2日前、"日本武道館への道"をスタートさせた彼等は怒濤のライヴ三昧である。ツアーのネタバレはできないが、この日のセットリストはガラッと違う内容だ。ただ、ステージに佐々木亮介が1人で現れて、ブラックファルコンの弾き語りで始めるのは同様だった。
渡邊一丘(Dr)、HISAYO(Ba)、アオキテツ(Gt)が加わると、1曲目の「I'M FREE」から剥き出しの叫びと鉄の弦のソリッドさが刺さるような演奏。続く「Flood」も「FUCK FOREVER」も、爆走の果てに自壊しそうな車に乗っている気分だ。佐々木の鋭いポエトリーが冴える「キメラファンク(FLY! BABY! FLY!)」の後、"ギャラが高い割に客が呼べなくてすみません。イスラエルから武器を買うような国にしてしまって申し訳ない"と彼一流の言い回しで、"謝罪会見"を超えた1人の大人として今向き合うべき事柄にも触れる。
後半もいい意味で原曲通りの演奏に価値を見出せないかのように、佐々木のヴォーカルや振る舞いも瞬発力が先行し、今このときしか体験できないライヴが進行。「理由なき反抗(The Rebel Age)」ではギターを置いてハンドマイクで歌っていたかと思うと、フロアに降りて歩き回り、後方のカウンターに上る。もはやNikoん目当てのお客さんもすっかり佐々木に釘付けだ。だが、ある種フリーキーなライヴの中でも「シーガル」でしっかりファンの熱量に応え、日本武道館公演のテーマ・ソングになりつつある「夜空に架かる虹」も心に沁みる出来だった。最後も原曲よりさらに生々しい「白状」。佐々木が弱さすらも曝け出して歌う理由を示す曲を対バン・ライヴで演奏するなんて、自分がNikoんなら震えが止まらないだろう、そう思った。
ホストのNikoんは47都道府県ツアーのおよそ3分の2を回ってきたタイミング。無駄を削ぎ落とした、人間が出す音の極み、そしてトライアングルの屈強さが際立つ。そして何よりマナミオーガキ(Ba/Vo)の覚醒を見た。筆者は昨年8月に同会場でNo Busesとの対バンで見て以来だが、盟友と醸成したあのときのグルーヴ感とは決定的に違う、硬質なサウンドと意志を見たのだ。
転換とサウンド・チェックからそのままオンステージで軽くセッションした後、「とぅ~ばっど」でスタート。序盤、オーガキのエフェクトの掛かったヴォーカルは生トランスっぽいが、すぐにソウルフルと言って差し支えないしなりを聴かせる。それがLED ZEPPELINみたいに硬質なリフに乗る痛快さ。2曲目には早くも「(^。^)// ハイ」、夕焼けを想起させるコーラスと透明度の高いオオスカ(Gt/Vo)のアルペジオによって、心に夏の景色を拡げていく。ここでもオーガキのヴォーカリストとしての覚醒に圧倒されるわけだが、歌で抒情を、そしてベースでタイトな土台を同時に生むミュージシャンを私はあまり知らない。その間もオオスカは時にステージ上から見切れるぐらい動き回っているのだが、彼の重力を感じないアクションそのものがこちらに自由をもたらす。
オオスカがヴォーカルを取る「step by step」はオーガキのループするベースが蠢く上で、殺伐と切なさが同時に鳴るようなギターが響く。その体感は、記憶にある90年代のUKのダンス・アクトに通じるクールさと熱さがあるのだ。さらに4曲目には新曲「Tokey-Dokey」を披露。鋭いギター・カッティングの最新形と、歌いながらよく動くベースラインを乗りこなすオーガキの文字通りの進化を確認できた新曲だった。
フラッドを招いた理由の途中経過は笑いの渦。というのも、フラッド主催イベントの打ち上げでw.o.d.のキス魔メンバー由来のインフルエンザ罹患という、オオスカのバッドな思い出が伴うかららしい。だが、もちろんイベントに呼んでくれたことやその後も佐々木がオオスカを覚えていてくれたことが、今回の対バンに繋がったという。
中盤は、"こんなに体力を消耗するライヴなのに、出てる音は美しいぐらいにどこまでもクリアで硬質"というNikoんの特徴が最大限に拡張。ひたひた迫る「ghost」から、3ピースと思えない程の重厚感とトランス感を生み出した「Vision-2」。この2曲のライヴでの育ちっぷりに瞠目させられた。さらにJ-POPの歌メロにあってもおかしくないメロディと、それを伝えるオーガキの声がスッと入ってくる「bend」では、同時にオオスカの端正なカッティングがセンスの塊になって、パッと聴きポップな曲をNikoんだけのバランスに昇華する。キャッチーであることを恐れないのは、たぶんバンド・サウンドに自覚的だからなんだろう。さらにNikoんの解釈によりグッとソリッドでポストパンクな体感を獲得したフラッドの「I'M FREE」のカバーが、フラッドファンの自然なリアクションを生み出す。そこには仲良しバンドのカバーじゃあり得ない緊張感があった。
長いツアーの途上ではいいことも悪いこともあるようだ。とある収録現場での一部のスタッフが明らかに舐めた態度だったことから、オオスカは"変えていきたい"と言った。彼は1人の人間として対峙しないことをめちゃくちゃ忌避するんだと思う。それは相手がオーディエンスでもメディアでも同じだ。彼の全身から"変えたい"気が立ち上った後、Spotify O-EASTでの2ndアルバム・ツアー・ファイナルが発表された。フラッドの日本武道館、そしてNikoんのSpotify O-EAST。この対バンの共振する部分だ。
終盤は再びオーガキのヴォーカル力の伸長と潔くキャッチーな痛快さがフロアを沸かせる「nai-わ」、オーガキのイノセンスが最大限に拡張され、そこと対比したSEも効果を生んだ「public melodies」。Nikoんがいわゆるシティ・ポップを解体/再構築したような「さまpake」は、生で聴くことでより彼等のニュー・ウェーヴ的なセンスが届き、ラストの「グバマイ!!」の開かれたムードに自然に接続していた。またも、これ程視覚的には肉体性に振り切った様子を見せながら、出ているアンサンブルは濁らない。どこまでも冴えた音はハードなツアーの結実なのだと思うし、Nikoんの矜持と受け取った。過去最大キャパのSpotify O-EASTでは何が変わって何が変わらないのか、非常に楽しみだ。
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