Japanese
Nikoん
Skream! マガジン 2025年09月号掲載
2025.08.27 @渋谷CLUB QUATTRO
Writer : 石角 友香 Photographer:稲垣ルリコ
ロック・バンド Nikoんが、自主制作の1stアルバム『public melodies』の追加プレスを機に、自身初となるツアーを実施。9月リリースの2ndアルバム『fragile Report』のプレリリース・イベントを兼ねたファイナル公演をゲストにNo Busesを迎えて行った。なかなか異例づくしのこの日。エントランスからそれはすでに始まっていた。400文字以上のレビュー執筆を"約束"した上で、2ndアルバムの会場限定予約をすれば、その場で全曲入りの試聴用白盤CDを貰えることもあって、長い列ができている。
さらに開場中のフロアにはエレピが置かれ、必然的にそこを避けて人が待機するのだが、18時20分頃、なんとマナミオーガキ(Ba/Vo)が登場し、弾き語りライヴを始めたのだ。ソロ活動も行うオーガキの表現として不思議はないのだが、少ない音数と圧のない音響で歌われるオリジナルや「bend」、「step by step」といったNikoんのセルフカバーから、改めてメロディと言葉のしなやかさに気付かされる。中でも左手が鳴らすベース部分やリアレンジの洞察に唸らされたのは、宇多田ヒカルの「In My Room」とNikoんの「ghost」をミックスした長尺ナンバー。数多の女性SSWだけでなく矢野顕子のピアニズム等も思い起こすアレンジだった。最後にNikoんの「public melodies」を演奏して全6曲の弾き語りは終了。"バンドより全然緊張する"と本心を話していたが、曲ごとの大きな拍手と歓声が彼女の表現力の答えだったと思う。徹頭徹尾オルタナティヴなNikoんの音楽が、それだけじゃない突き抜け方で届く理由の1つをオーガキの弾き語りで発見した。
エレピが片付けられ、客がフロアに詰め掛けてくる。この日はNikoんサイドで体調不良等客のアラートに対処するスタッフを配置、入口でSOSカードも配り、そこはかとない安心感が存外幅広い客層と共に醸成されている。そしてNo Busesの演奏が始まる頃には場内は満員に。
サポートを加えた現在のメンバーになってから個人的には初めて観るNo Buses。緻密なアンサンブルも堅持しつつ、ジャンル感に拘泥しない開かれたパワーを放出していた。スタートから近藤大彗(Vo/Gt)が獣のような叫び声を上げ、トリプル・ギターの緊張感も最大限に発揮する「Imagine Siblings」でスタートするが、曲の途中で「Sunbeetle」のイントロが鳴らされ、ギター・オーケストレーションのような音の波に飲み込まれる。日本語詞も増えた最新作『NB2』から「Slip, Fall, Sleep」がドロップされると、ポストロック的なダイナミズムも発生した。驚くべくことにこの日、近藤は軽い熱中症症状だと話したが、集中力も突発的なアクションもいい意味でいつもの近藤に見受けられた。
中盤には『NB2』からのナンバーを続け、オルタナ・フォークっぽい「Hope Nope Hope」でのコーラスの美しさ、3本のギターが追いかけっこするような「Eyes+」等、今のNo Busesの自由度に瞠目しっぱなしだった。後半は痛快な8ビーター「Girl」でギア・アップしつつ、ホラーめいた語り口の「Kaze」等で大いにフロアを翻弄し、最後は再び「Imagine Siblings」を2番から演奏。1本のライヴという円環を閉じるような構成が見事だった。盟友 Nikoんの節目のライヴに対して、自分たちの現在地を示すことで十分に応えた印象だ。
既出のシーンや音楽性に包摂されない客層の、ここで起きていることへの興味が渦巻いているフロアは、Nikoんを迎えるにあたって、さらにそのグルーヴを増す。オオスカ(Gt/Vo)とオーガキ、そしてサポート・ドラムの東 克幸の3ピースが、待ちかねた空気のなか、クールな映画のサントラめいたイマジネーションに富むイントロの「Vision-2」からスタート。3ピースのサウンドなのだが、ひたひたと迫るアンサンブルのクリアさに求心力が高まる。続くオーガキヴォーカルの「bend」は、マス・ロックもかくやな精緻なビートがオーガキの歌を遠くまで届けた。先程の弾き語りの記憶が上書きされるぐらい別物だ。間髪入れずループするベース・ラインが恐ろしくタフな「step by step」へ。この曲も弾き語りとはオーガキのヴォーカルの質感は違うものの、バンド・サウンドに埋もれない彼女の歌の強さは歴然。3曲目にして早くも、ヴァースからサビへフロア全体が息を合わせて飛び込むような、ヴァイブスの高まりも感じられ、オオスカの痙攣するようなアクションも自然な発露に見える。そして、異様に歪んだ重いギター・リフが身体を刻むような「とぅ~ばっど」では、オーガキがテクニカルに弾きまくる場面も。爆音に晒されたフロアは、エンディングで一瞬音が途切れた0コンマ何秒かの間まるで真空のように静まった。それ程演奏とリンクしているのだ。その後、自然と起きる大歓声。ほとんどの人が高い集中力でステージに向き合っている。
MCでオオスカはオーガキへの弾き語りを2~3日前に指示したらしく、意図こそ話さなかったが、"弾き語りでも「フジロック(FUJI ROCK FESTIVAL)」みたいな歓声が上がって良かった"と感想を述べた。そして満員のフロアを見やって"好きなことやってるだけなのに(こんなに人が来て)、奇特な人もいるもんだ"と彼らしい発言も。
続いてはNo Busesの「Tic」のカバーを披露してくれたのだが、オオスカのギター・サウンドにどこか夕焼けっぽい切なさが宿り、Nikoんの特徴というか、心意気のようなものも感じさせる。先程のMCが頭に残っているせいか、もしくは彼等の定石を踏まない悩みながらの活動に思いが及んだせいか、思ってもないことでは戦えないこのバンドの真っ当さが演奏に重なった。さらにCwondo(近藤)をフィーチャーした「public melodies」が、本人のプレイを加えて生で実現。客席後方でプレイする近藤がぶち込んでくる銃声のような音や様々なSEが、否応なしに今どこかで起こっている殺戮を想像させて、単純な悲しみや怒りを超えてちょっといたたまれない気持ちになる。姿が見えない近藤からNikoんへ、そしてオーディエンスへ向けたあまりにも雄弁な客演だった。オオスカの平熱の歌が平熱であることでむしろ刺さる「Fly,」。没入感のあるミディアム・ナンバーは続く「ghost」の深みに接続し、このバンドが見せる世界の奥行きにフロアごとどんどんハマっていく。
7~8月は九州、関西を怒濤の本数で巡り、オーガキは地元でライヴができたことへの感謝も込みで、今Nikoんで精力的に活動できていることが心から幸せそうに見えた。もちろんバンド・アンサンブルの足腰がこのツアーで鍛えられたことは確実で、ここまでの演奏に一切の冗長さを感じなかったことがそれを証明していたと思う。
終盤はNikoん流のアーバンなダンス・チューン「さまpake」で、オオスカのブラック・フィーリング溢れるリフのセンスや、オーガキの歌いながらの緩急の効いたベース・プレイで新たな感情を起こされる。ちなみにこの日、来場者全員に配布されたCDに収録されていたのがこの曲だ。続く「(^。^)// ハイ」もオーガキのヴォーカル・ナンバーで、ドラムこそ人力ドラムンベースっぽいが、広がるメロディとポップネスはオーガキのパーソナリティが前面に出た感じだ。ストレートにいい曲と言える曲がシューゲイズの音の壁と同居しているのも面白い。この終盤は来る2ndアルバムを大いに予見させるもので、本編ラストもオーガキが歌うナイス・メロディの「グバマイ!!」が空間を拡張する。何に対する決別なのか歌詞が不明なのだが、突き抜けるメロディに乗る"Good bye〜"のロング・トーンは、Nikoんが止まらずに前に進んでいることを端的に表している印象を残した。
程なくアンコールに応えて再登場した彼等はツアーを共にした別のサポート・ドラマー2人、有島コレスケとItsuki Kun(Fallsheeps)をギターとコーラスに迎える。ここからのオオスカの決意表明めいたMCでは、このツアーをやろうと思ったきっかけを話した。概ねこんな内容だ。ツアー中にレコーディングも行う多忙さのなか、SNSで話す言葉が自分じゃない誰かの言葉でしか話せなくなっていたと。だが、自分が思うカッコいいバンドはそうじゃない。そのことに気付き自分の弱さを実感したツアーだったという。それでも面白くないライヴはなかったとも。だから自分は弱いやつでもワーワー騒げる場所を作ろうと思うと話してくれた。2ndアルバムのレビューを、書きたい誰でも参加できるようにしたのは、"同じ土俵に上がってくれよ"という意思の表れでもあると話す。罵詈雑言も大歓迎だがNikoん以外を傷付けるような誹謗中傷はNGとのこと。そして秋から行う47都道府県ツアーも発表。しかも2ndアルバム購入者は無料で入場可能らしい。
アンコールは5人編成ならではのコーラス・ワーク等も聴き応え十分の「mouton」、そして2ndアルバムどころか、まだ全然リリース予定も分からない3rdアルバムに収録予定だという、アフロビートも顔を出す新鮮な曲で締めくくった。ジャンルに固執しないNikoんの強みはやはり曲の良さ。それを妥協なく磨くライヴとの両輪でどこまで多様なリスナーを掴んでいくのか? 興味は尽きない。
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