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LIVE REPORT

Japanese

ナードマグネット

Skream! マガジン 2017年02月号掲載

2017.01.14 @下北沢LIVEHOLIC

Writer 松井 恵梨菜

ナードマグネットが、"尊敬するかっこいい先輩たちに自ら果敢にぶつかっていく"を掲げ、先輩バンドを迎えてツーマンを行うシリーズ企画"渡り廊下で先輩殴るツーマン"。その第2弾であるこの日、殴られるのはシュノーケルだ。1回目はLOST IN TIME、そして3回目以降もGOING UNDER GROUND、ASPARAGUS......と、一時代を築いたバンドがツーマン相手として名を連ねるこの企画。そこにはナードマグネットのチャレンジ精神だけではなく、ロック・キッズとしての純粋な想いがあった。

まずは、オープニング・アクトであるメメタァが登場。"僕ら的にはナードマグネットは先輩なんで、ナードも殴られる可能性があるってことですからね"と蝶ネクタイ姿の西沢成悟(Gt/Vo)が挑発的な発言で会場を焚きつけながらも、鳴らされるのは非常に人懐っこい昔ながらの日本語ロック。MCで"僕には音楽しかない"という言葉があったが、そんな不器用さをそのまま詰め込んだ、音楽に対する初期衝動漲る「ロックンロール」が何より彼らの"らしさ"を象徴していた。

先輩シュノーケルは、2017年一発目ということで、照明が落ちるとともに西村晋弥(Vo/Gt)が「一月一日」を歌唱するという新年モードでライヴがスタート。キーボードにつるうちはな、ギターに岡 愛子(ex-BAND A)を迎えた5人編成で、クオリティの高いポップ・ミュージックを惜しみなく披露していく。"3バンド、ギター・ヴォーカルが眼鏡というのが続きますが大丈夫ですか?"と、筆者も内心感じていたフロントマンのヴィジュアルのシンクロについて口にされたときは笑ったが、良い意味でスタイリッシュじゃない、それぞれが信じるグッド・ミュージックを鳴らしているという点でも3組には共通点があるように思う。 中盤、3月15日に4thアルバム『popcorn labyrinth』のリリースが決定したこと、その豪華すぎる購入者特典の内容をアピールしたのち、特典のひとつであるライヴ映像をこれから収録することを告げると、新作より「シュレーディンガーの僕」、「それから」、「理由」を演奏。熱量のある歌も、それを引き立たせながらアグレッシヴに躍動する楽器隊も"あぁ、シュノーケルらしいな"と思わせる安心感がありつつ、でもどこか新しさもあり、ワクワクさせてくれる。なかでも、"宇宙"をテーマにしたというアルバムの核になるであろう、この日初お披露目の「理由」が印象的だった。"生きる理由"という壮大なテーマを持つ歌を、徐々に開き、感情的になっていくようなドラマチックな展開で聴かせ、ラストは"君と僕が出会った10年後のこと"と残して静かに締める。その余韻に浸る会場を、やたらハイテンション気味の香葉村多望(Ba)が盛り上げると、ラストはこのころ訪れた今冬最強の寒波も吹き飛ばすような熱さで「波風サテライト」、「solar wind」を投下。序盤に西村が"今年最高の夜が今日だっていいわけですからね!?"と言っていたが、それが本当になってしまうんじゃないかってくらい、全力でシュノーケルを堪能できたステージだった。

そして本日の主役、ナードマグネットがスタンバイを終え、曲が始まるという期待が集まるなか、須田亮太(Vo/Gt)が放った第一声は"見てー! ギター買うたでー!"。嬉しそうなその姿のおかげでいきなりバンドと客席は打ち解け、1曲目の「C.S.L.」から最高にハッピーなムードに。続いての「プロムクイーン」での藤井亮輔(Gt/Cho)によるクールなギター・ソロと、大盛り上がりの観客のリアクションという応酬もバッチリ決まっている。MOTION CITY SOUNDTRACKのトリビュート・アルバムにも収録された「This Is For Real」のカバーはセットリストに馴染んでおり、改めてナードマグネットがUSパワー・ポップなどに影響を受けていることを実感。さらに、エモの要素を含んだメロディと須田のハイトーン・ヴォーカルとの相性も抜群だ。ここで、イベント・タイトルがTHE HIGH-LOWSの歌詞(「青春」)から拝借したものだということを明かしたのち、新曲「DUMB SONG」をプレイ。そしてミドル・テンポの「チェイシング・エイミー」、「ルーザー」でちょっと情けないラヴ・ソングをエモーショナルに聴かせ、「ウェンズデイ」が始まると大歓声。繰り返される"こんな日には"を会場一体となって大合唱する光景は、青春にも似た清々しさがあった。

前川知子(Ba/Cho)が"今のところ優しい先輩ばかりです"と企画の現状を伝えると、須田は"(LOST IN TIMEの)海北さんに「わざと僕の顔を殴るような写真を撮ろうよ」ってノリノリで言われたんですよ。でもそのノリでいくとあとあと怖そうです"と冗談めかしたMCで笑いを誘った。「BOTTLE ROCKET」の間奏でのゴリゴリのグランジも健在で、姿勢を低くして演奏する弦楽器隊を見る限り、それを相当楽しんでいるようだ。そうやって曲のところどころで、多彩なバンドのルーツを思いっきり出しているのもナードマグネットの楽曲の面白さのひとつだろう。「(Let Me Be)Your Song」の前に、"僕は昨年、1年かけて大好きなこのリズムを流行らせようと頑張ってきました!"と須田が言っていたが、曲がパターン化しがちな最近の日本の音楽シーンの流行に、自分が純粋に愛する音楽で真っ向から対抗するような姿勢も窺える。終盤のMCではシュノーケルについて、彼らに関する思い出にも触れつつ、"めっちゃ新曲をやってるじゃないですか。懐かしいなって感じじゃなくて、今を生きているバンドという感じがしてかっこよかった"と語った須田。そして"長く続けているバンドがかっこいいに決まっている"と、若者がもてはやされる音楽業界に一喝した。この"渡り廊下で先輩殴るツーマン"企画は懐古モードでやっているわけではなく、現役でかっこいい音楽を鳴らし続ける先輩たちへの心からのリスペクトと、そこにぶつかっていこうというバンドの気概があるのだ。そんな熱い想いを伝えたあとに演奏されたのは、アンセム・ソング「Mixtape」。"We are infinite!"の合唱があまりにも美しく、それが響き渡る空間は歓喜に満ちていて、思わず涙腺が刺激されてしまった。"この夜は僕らのもの"という歌詞はこの幸せな空間のことのようだし、"あの歌が 世界を変えてくれた"というフレーズを聴いて、今日存分に感じたナードマグネットの根底にある音楽への愛を思い出す。何より、単純に曲の良さに感動した――間違いなくこのイベントのハイライトだった。「イマジナリーフレンド」でハッピーエンドな空間に包まれたまま本編ラストを終え、アンコールへ。秀村拓哉(Dr)の生み出すリズムが軽快で楽しい「pluto」、そして"今年もたくさん黒歴史を作っていきましょう!"と「ぼくたちの失敗」をプレイ。"こんなはずじゃなかった"と連呼するヘタレっぷり全開の歌詞と爽快なポップ・パンク・サウンドの融合は最高に痛快で、この日一番のハイテンションとなったエンディングだった。


[Setlist]
メメタァ
1. I wanna be
2. ハイライト
3. 自転車
4. そんなもんさ
5. ロックンロール

シュノーケル
1. RESTART
2. 奇跡
3. QUEST
4. 妄想中
5. TODAY
6. シュレーディンガーの僕
7. それから
8. 理由
9. 波風サテライト
10. solar wind

ナードマグネット
1. C.S.L.
2. プロムクイーン
3. This Is For Real
4. ラズベリー
5. DUMB SONG
6. チェイシング・エイミー
7. ルーザー
8. ウェンズデイ
9. BOTTLE ROCKET
10. TRAGICOMEDY
11. (Let Me Be)Your Song
12. YOU & I
13. Mixtape
14. イマジナリーフレンド
en1. pluto
en2. ぼくたちの失敗

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