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LIVE REPORT

Japanese

チェコノーリパブリック

Skream! マガジン 2015年03月号掲載

2015.02.06 @TSUTAYA O-EAST

Writer 石角 友香

いよいよ5人全員がフロントマンのような存在感を放ちつつ、楽曲に対しては献身的なCzecho No Republicの全貌が見え始めた。全員の動きを視界に収めようとすると大変なことになるのだが、それでも一瞬一瞬、見逃したくない。ポップ・ミュージックであり、先鋭的でどこかアカデミックな表情さえ見せるという、ひとつのバンドの中での跳躍は、新曲が「Oh Yeah!!!!!!!」と、リリースされたばかりの「For You」だけであることから、むしろ選曲の自由度を増し、ちょっと久しぶりのナンバーも、2015年のこれから走りだす5人のモチベーションの高さを伺わせる、そんなライヴだった。

「For You」のアートワークと呼応するように赤い紗幕越しにオープニングの「Yeah Oh!!!!!!!」が、この日は生演奏で披露される。シンセやシーケンサーに向かう5人のシルエットに新しい何かが起きる予感を膨らませるフロア。そして幕が落とされ高らかに鳴らされた「Amazing Parade」は、前回の赤坂BLITZのときよりいい意味でラフな印象で、バッチリ、ポーズが決まるタカハシマイ(Cho/Syn/Per)のハンド・クラップや、後半にスカコア顔負けのビートへ突っ走っていく様も相まって、のっけからフロアは沸きに沸く。シームレスに「No Way」「Come On」と祝祭ムードをつなぎ、武井優心(Vo/Ba)が、"今日はシングルもちょっと前の曲も、さらにその先の新曲もやるんで、よろしく!"とMC。ファンも"それを期待してました!"とばかりに大きなリアクションが起こる。

ライヴではちょっと久々の選曲である「Call Her」、THE BEACH BOYSとDIRTY PROJECTORSが邂逅したようなコーラスのオリジナリティに聴き惚れた「Festival」、「Oh Yeah!!!!!!!」のカップリングで八木類(Gt/Cho/Syn)作詞作曲ナンバー「Sunday Juggler」の寓話性に富んだアレンジと、今の時代にアップデートされた普遍的な楽曲が続いた。また、イントロで歓声が上がった「Sunshine」や八木と砂川一黄(Gt)のギターがなんともニュー・ウェーヴィでクールな、もっと言えばどこかNEW ORDERを想起させる「ファインデイ」など、このバンドの音楽的なレンジの広さを存分に楽しんでいるところに待望の新曲!いやもうこの日はこの新曲と、この後、ホーン・トリオが参加したと、本編ラストが「ネバーランド」だったことが個人的ハイライト且つ、感動ポイントを作った曲順そのものも素晴らしかったのだ。まず、その新曲は武井がシーケンサーを操作し、山崎正太郎(Dr)も、時折カオスパッドを叩くエレクトロニックな楽曲......なのだが、フロント3人のコーラスやビートにはどこか逞しさもあり、アーバンなのに大自然も同時に想起させるという、音階に独特なものがある面白い新曲だったのだ。

タイプとしてはアルバムではもっと様々なものが出てきそうだが、静かに聴き入り、こみ上げるものがある新曲にフロアの反応も上々。続く、これまた久々に披露された「MIKA」のセンシティヴな世界観への繋がりも心憎い。音楽を体感するある種の神聖なムードに浸される中、砂川が良くも悪しくも滑るMCで、またまた空気を変える(変えてしまう?)。これじゃあやっぱりイメージはどうしたって固着しないわけだ。それが今のチェコの魅力でもあるわけだけども。そして前述の通り、「For You」を生で再現するためにホーン隊が呼び込まれたわけだが、「For You」でのタカハシの伸びやかなヴォーカルをさらに力強く彩るホーンが陽のイメージなら、「幽霊船」でアレンジして添えられたホーン・アレンジは音響的でもあり、この日ならではの見どころのひとつに。ザ・なつやすみバンドのMC.sirafu、ceroなどにも参加するあだち麗三郎、三浦千明からなるこのトリオは恐らくインディー・ミュージックにおける管楽器のアレンジ・センスに溢れる日本では貴重な面々なのではないだろうか。また機会があればライヴに参加してほしい。

8人編成のステージが終わると、オードリーのふたりが"ANN"のテーマに乗せてしゃべり始める一幕も。春日が「Oh Yeah!!!!!!!」のMVに出演している縁なんだと思うが、ことあるごとに若林が「Field Poppy」好きを連発していたことの方がむしろ印象に残ってしまった。なんだか長い前説だったが、もちろん曲は「Oh Yeah!!!!!!!」。ジャンルはパンクじゃないけれど、ステージ上はどんどんパンク的な自由度が増していく。八木のシンセ・ベースとグイグイ、エフェクティヴなサウンドで攻めてくるタカハシのシンセが痛快!前向きな攻撃性を持った「MUSIC」、八木のロック・スターっぷりが発揮される(UKの伊達男バンドにこういう人いそうでしょ?)「JOB!」と、座ってドラムを叩いている山崎すら踊るようにも暴れているように見える狂騒に触れていると、本当にこういう予定不調和でしかも楽しいタガの外れっぷりを見せるこのバンドの貴重さを実感せずにいられない。

本編終盤はフロアのシンガロングが最高潮に達する「ダイナソー」、そして、本編ラストは先ほども書いたように「ネバーランド」が、簡単に関連づけることはできないけれど、刻々と不寛容さを増し、世界がささいなきっかけで憎しみや負の感情に傾きそうな今、自分の心の暗闇を何が照らしてくれるのか? ひとりひとりがそれを確認したうえで集まれる場所、そうまさに今ここ、音楽が鳴っている場所があることのかけがえのなさをこれまで以上に強く感じさせてくれたのは決して偶然じゃないと思う。

「Oh Yeah!!!!!!!」「For You」という、ポピュラリティを増す大きな意味を持ったシングルのパワーも、ファンに愛されてきた過去曲も、そして今年のチェコがどうなっていくのか? 楽しみでならないニュー・アルバムの片鱗も聴かせてくれたこの日。身になったものは全部、消化して次に進んで行ってくれたら、他のバンドには真似できない強い音楽が、また誕生するのではないか。そんな予感に溢れたライヴだった。ま、アンコールの最後の最後は「Anarchy In The U.K.」を歌う武井以上に、IGGY POPばりのパフォーマンスを見せた山崎の根っからのパンクぶりに頼もしさを覚えたことも追記しておこう。そして出口で渡されたのは"誰かのために=For You"プレゼントするもよし、自分にプレゼントするもよしな、赤いガーベラが配られ、会場を後にする人たちの日常に連れて帰られたんだと思う。ライヴ中に発表された、初の日比谷野外音楽堂での公演は7月12日。多くのミュージック・ラヴァーが集まることを期待したい。

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