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INTERVIEW

Japanese

the paddles

2025年12月号掲載

the paddles

Member:柄須賀 皇司(Vo/Gt) 松嶋 航大(Ba) 渡邊 剣人(Dr)

Interviewer:山口 哲生

-最終的に歌詞が固まったことで、また少しベースを変えてみようとか、そういう感じになったりしました?

松嶋:歌詞というよりはメロディが変わることで変えたりはしますね。

柄須賀:航大は曲のダイナミクスに合わせてベース変えるよな?

松嶋:うん。細かい歌詞はあんまり気にしないですね。もちろん全体的にどういう曲かっていうことは気にしてますけど。

-大事なポイントですからね。剣人さんはいかがです?

剣人:最初に聴いたときに、バラードだと思っていたら後半で急に倍(テン)になったから、そういう曲はthe paddlesになかったのでめっちゃいいなと思ったんですけど、レコーディングがかなり難しかったです。この曲、スネアの種類を途中で変えてるんですよ。それこそ速くなることによって力強くしないといけないと思っていたので、途中まではわりとルーズに叩いて、速くなるにつれて歌詞の思いも強くなっていくイメージがあるから、僕のドラムも一緒に上がっていこうと思って叩きました。

-あと、歌詞とメロディがめちゃくちゃきれいにハマっていて気持ち良かったです。特に1Bのところとか。

柄須賀:めちゃくちゃ馴染みいいですよね。たしかあれも鼻歌で歌詞と同時に出てきたんで、僕も美しいなって思います。あんまりこういう曲がなかったというか。"弾き語りから作られたのでは?"みたいな、ある意味バンド・サウンドというよりは、ソングライターとしての僕が前に出てる感じにしたかったから、それは達成できた感じがすごいありますね。

松嶋:なんか、全体的に素朴な演奏感のイメージがあったな、最初から。

柄須賀:あぁ。なんか、ガチャガチャしたくなくて。言葉を聴いてほしい曲なので、あんまり何もしたくないなと思いながら作っていたんですよ。倍(テン)になるところとかも、ライヴで馴染んできたら、拳が上がったりするのかなと思うんですけど、そこまでの歌詞をほんまに一言一句聴き逃してほしくなくて。なんならみんなそこで打ちひしがれて、誰も拳上げんかったらいいのにって思ってます。

-おぉ、そこまで(笑)。

柄須賀:なんなら"ちょっと俺が歌ってるからみんな邪魔せんといてくれ!"とまで思いましたね。そこまで思う曲ってほんまになかったんですけど、それぐらい思いが入った曲になったなって。自分の感情の熱レベルはこの曲が一番高いかなと思います。でも、ライヴ中は真顔やと思う。

-たしかに笑顔でも泣き顔でもないし......うん。真顔ですね。

柄須賀:あと、最近は歌詞を書くために、詩集とかエッセイみたいな、"自分的にはこういう考えやねんけど"みたいなものをたくさん読むようにしていて。自分もなんかそういうふうに書いてみたかったんですよね。ディテールとかを別に共感されなくてもいいから、"こんなことあったんです"って、みんなにしてみたらどうでもいいようなことをだらだら語る、ある意味エッセイを書くみたいな気持ちで作ったところもありました。

-たしかにそういった部分がどんどん出てくると、ソングライターとしての個性もより強くなるというか。

柄須賀:そうですね。別に世の中に残る曲にならなくてもいいから、今the paddlesに出会ってくれている人たちのなかで、どこかに引っ掛かってくれたらなぁみたいな。だからこの曲は別に大事にしてくれなくていいって思ってます。何か引っ掛かるところがあったら聴いてくれたら、ぐらいの感じではありますね。

-なぜエッセイ的に作ってみたいと思ったんです?

柄須賀:僕は常に全てのものに対してアンチ的なところがあるんです。それで、強いものを残さないととか、キラーワードみたいなものがないとあかんとか、AメロにもBメロにもサビにも全てに意味があります、もうずっと味するでしょ? みたいな感じで歌詞を書いていたんですよ。でも、そういったものも全然いいんですけど、それって完成されすぎていて面白くないなって思ったんです。それで、筋書きが決まっているものよりも、自分の思っていることが急に出てきたり、出てこなかったり、めっちゃ話が逸れていったり......エッセイって日々の気付きを書き留めているわけじゃないですか。それをやりたかったんですよね。別にかっこいい言葉じゃなくても、意味がある言葉じゃなくてもいいから、今のこの気持ちを残しておきたかった。だから6曲の中では作り方が全然違っていたんだなって、今喋りながら思いましたね。だから今一番歌いたい曲になったんだと思います。

-ほかにもエッセイ的な気持ちで書いた曲はあります?

柄須賀:ほかはないですね。ほかの曲は聴いてほしい(笑)。もっと大事にされたい感じがあるなぁ。なんか、他の曲は伝える気持ちがめっちゃ強いですね。「結婚とかできないなら」はほんまにあとがき的な感じで、ちょちょっと作った感じはすごくあるので。

-ちょちょっと感は全然ないですけどね(笑)。

柄須賀:はははははは(笑)。なんか、全部聴いてほしいけど、そういうコントラストを作りたかったというか、別に汲み取ろうとしすぎなくていいで? っていう。もうほんまに額面通りの曲ですからっていう感じはすごいありますよね。

-バンドの今について歌っている「会いたいと願うならば」はどういうところから作り始めたんですか?

柄須賀:これは僕の中での美学なんですけど、作詞云々は当たり前に頑張るとして、作曲面で言うと、僕はとにかく最初から最後まで同じビートで突き進む曲がマジで好きなんです。最初から最後までずっと8ビートとか、そういうのが一番かっこいいと思っていて。今までの曲やったら「ステレオタイプ」(2022年リリースの3rdミニ・アルバム『efforts』収録曲)とかでやってるんですけど、そういう曲が作りたかったのと、これも剣人のドラムやなっていうものにしたくて。この曲で使っているリズム・パターンは僕がずっと温めていたんですけど、剣人ってミドルテンポの曲が一番得意なんで、今やなって。この曲ってドラムからいってたよな?

渡邊:うん、いってた。

柄須賀:そういうドラムにして、コード進行も最初から最後まで一緒で難しいことをしないようにしたら、やっぱり自然と言葉が飛ぶような曲になったんですよね。余計な装飾がないというか。であれば、the paddlesがなんで歌っているのか、なんでライヴをやってるのかっていう精神性の強い歌にしちゃおうと思って。それが最初でした。

渡邊:去年の11月ぐらいにデモができていたんですけど、そのときは結局録らなかったんですよ。でも、めっちゃこの曲いいよねって話してたんです。それでEPを作ることになったときに、あの曲ちょっとやらない? ってことになって。

柄須賀:途中で引っ張り出してきたんです。

渡邊:そのときはメロディがちょっと違ってましたよね?

柄須賀:サビは一緒やねんけど、イントロがなくて、Aメロはもっとディレイがかかったムズい系というか(笑)。

松嶋:そうやったな(笑)。

柄須賀:結構オルタナを意識した感じで作ってましたね。最初はキーも1個低かった気がする。(最終的に)1個上げたから。

渡邊:その形になって曲が戻ってきたときにさらにしっくりきたし、ドラムも僕が一番得意とする感じだったので、これはもう力強くいこうと思って。レコーディングでもかなり満足できるものができたので、僕の中では結構推し曲ですね。

柄須賀:個人的に、僕が打ち込んだドラムをそのまま叩いてくれたのが嬉しかった。

渡邊:LINEしたんですよ。"マジでこのドラム良すぎて特に変えたいところないです"って。だからマジでデモのまんまではあるんですけど、僕っぽいっていうか。思っていることが同じだったので、すごいお気に入りですね。

柄須賀:良かった。

航大:僕も最初に聴いたときに、剣人っぽいなって思いましたね。あと、僕もそれこそずっと8ビートの曲ってすごく好きで。そういう曲はベースも細かいことをしないほうがむしろかっこいいと思っているので。

柄須賀:ルート弾きが一番かっこいいもんな、やっぱり。

航大:うん。ところどころでアクセントを入れてはいるんですけど、基本的には何もしないぐらいの気持ちでやりました。