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INTERVIEW

Japanese

the paddles

2025年12月号掲載

the paddles

Member:柄須賀 皇司(Vo/Gt) 松嶋 航大(Ba) 渡邊 剣人(Dr)

Interviewer:山口 哲生

バラバラなんですけど、6曲まとまると、the paddlesの名刺代わりになる一枚

-そういえば航大さんも最近勤め先を辞められたそうで。

松嶋:そうなんです。8月まで働いていたので辞めたてなんですけど。

柄須賀:お勤めご苦労様でした。

-(笑)剣人さんは「25歳」がthe paddlesでの初制作でしたか?

剣人:そうです。皇司くんから"ドラムは剣人がやりたいようにやっていいよ"って言ってもらって、分かりました! って。それで2Bとかは、僕じゃないと叩けないようなドラムにわざとしたんですけど、気持ち的には同じだったんですよ。僕が加入して一発目の曲やから、ここはちゃんと自分を主張していこうと思って。最初やからインパクトも大事やし、僕としても記念のものになるので、ちゃんと自我を持って挑みました。

-その「25歳」をリリースし、ツアーを回っていくなかで今回のEP『結婚とかできないなら』を制作されていたと。どういう一枚にしようと考えていましたか?

柄須賀:こういうアルバムにしようみたいなマップが最初からあったわけではなくて。剣人が加入して初めて出すCDになるから、今思えばそれを意識して作ればよかったんですけど(笑)。

渡邊:ははははは(笑)。

柄須賀:そこは"そういえばそうやった"と思うぐらい、剣人がバンドにもう馴染んでいるっていうことではあると思うんですけど。僕としては、この年齢、この瞬間でしか書けないものを書きたいなと思って、いい意味で何も考えずに書いてたんですよね。だから、自分から自然と出てきたものをそのまま曲にすることはめっちゃ意識してました。そしたらほんまにバラバラの6曲ができた。かわいらしいらしい感じもあれば、「25歳」的な力強さというか、やっぱりライヴハウスのバンドなんだなっていうことがすごくよく分かるものもあって。バラバラなんですけど、6曲まとまるとthe paddlesの名刺代わりになる一枚ができた感じはしますね。

-バラバラだけどバランスもいいし、あとはどの曲もライヴで聴いたら楽しいだろうなって思いました。

柄須賀:うん。ライヴが想像できる曲が増えましたね。たしかに。

-それも自然と?

柄須賀:そうでしたね。昔はライヴでやる前提で曲を作ることってあんまりしてなかったんですけど、やっぱりライヴで聴いていいよねってなる曲が作りたいなって思い始めた瞬間があって。たとえばワンマンのセットリストがあったとして、こういう曲が欲しいなとか、ここでがっつり聴かせられるバラードが欲しいなとか......あ、そうやって作りましたね(笑)。

-ライヴのことをイメージしながら、じゃあ自分は今、何が歌えるかという。

柄須賀:ほんまそんな感じですね。the paddlesの生命線ってやっぱり曲の良さとライヴやと思ってるんで、それがますます相乗効果を生むような感じにしたかった。特に「会いたいと願うのなら」は、ライヴで一番熱量が高まった瞬間にやる曲というか。この曲は「25歳」ぐらいのタイミングでもう作ってたんですよ。

-じゃあ去年の段階ですでに。

柄須賀:そうです。これも剣人っぽい曲にしたいなぁって思っていて。いったらこれも「25歳」的な曲ではあるので、作ってるうちにどんどんいい曲になったなって感じでした。

-そういう曲もあるなかで、「結婚とかできないなら」をタイトル・トラックに選んだ理由というと?

柄須賀:僕は、曲のテーマはわりとなんでもいいと思っているんです。自分がその年齢、その瞬間にしか書けない曲を書こうと思ってやってきて。そうやって書いたのが「予測変換から消えても」(2022年リリースの3rdミニ・アルバム『efforts』収録曲)とか「ブルーベリーデイズ」とか「プロポーズ」(どちらも2023年リリースの1st EP『ベリーハートビート E.P.』収録曲)なんですけど、恋愛をテーマにすることは僕の中ではただの1ピースでしかないんです。そこをずっとみんなに注目してもらってきたというか、そういう自負もすごくある。俺も恋愛マスターだ! みたいな気持ちはすごくあるので、みんなに共感されたい言葉を並べていたときに、今のthe paddlesとしてのスタンスはライヴを観てもらったら分かるので、そこではなく、今自分が何を考えているのかが一番分かりやすく書けたのが、「結婚とかできないなら」だったんです。あとは単純にワードとしての強さもありますね。

-たしかに、今のバンドのモードや状況を考えるのであれば、「会いたいと願うのなら」がしっくりは来るんだろうけど、インパクトで考えるならこっちですね。

柄須賀:僕も言葉を放つ人間として、今一番言いたかったのはこっちやったっていう感じがするんですよね。

-なぜこの言葉を放ちたいと思ったんです?

柄須賀:今年27歳になったんですけど、周りがどんどん結婚していくんですよ。あるあるじゃないですか、27歳で1回波が来るのって。僕としては、普通の人生というか、大学まで行って仕事をしてというのをひと通りやっていて、自分のことを別に特別やと思わないですけど、普遍的な感覚というか、世間の一般的な感覚みたいなものを常に歌いたいと思っていて。だから、この年齢になって、みんなめっちゃ結婚していくけど、きっと惰性で付き合ってたりする人もいるだろうなとか、そういうことを考えたときに、27歳って大人になりきった感もあるなって思ったんです。これが、例えば高校生ぐらいの子らには、"自分にはきっとまだ分からない感覚をthe paddlesは歌っているんだな"と思ってほしいし、大学生ぐらいの子らには、"私等あと5、6年経ったらこんなことを思うのかな"って思ってほしいし、27歳に近づいた皆々様には"危ないぞ?"と思いながら聴いてほしいし(笑)。

-ははははは(笑)。

柄須賀:27歳より上の方たちには"皇司くん、そこに気付いたか"みたいに思って聴いてほしかったりするし。だから、今一旦27歳の自分が思っている恋愛観みたいなものを掲げようとなったときに、今回のCDで主張が一番強かったんですよ。恋愛の歌はほかにも何曲かありますけど、切り取り方が一番デカかったし。僕の脳内で今一番強く言いたいいこと、一番思っていることはこの曲に入っているなと感じますね。

-航大さんは「結婚とかできないなら」にはどう臨みました?

松嶋:最初にデモが来たときはタイトルが違っていて。今の歌詞にもあるんですけど、"いつか君と別れてしまうなら"っていう。

-そうなんですね。今作のリリース・ツアー("the paddles『いつか君と別れてしまうならツアー』")のタイトルにもなっている。

松嶋:そうです。一応歌詞に結婚っていうワードも入っていたけど、まだそこまで完璧に固まってなかった状態だったので、そっちに注目するというよりは、久々のバラードだなっていう感じでしたね。なので、曲の質感というよりも、曲的にベースはどういうアプローチをしようかっていうことを考えてました。