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INTERVIEW

Japanese

the paddles

2024年12月号掲載

the paddles

Member:柄須賀 皇司(Vo/Gt) 松嶋 航大(Ba)

Interviewer:フジジュン

2024年はライヴハウス・シーンを大いに騒がせ、フェスでも大活躍。ワンマン・ライヴを瞬く間にソールド・アウトさせてと、破竹の勢いを見せた大阪 寝屋川発の3ピース・バンド the paddlesが、今年の集大成となるEP『オールタイムラブユー E.P.』を完成させた。2024年は年頭に立てた計画通りに進んだ上で、想像以上のことも起きたと話す彼等。9月には地元にあるネヤガワドライビングスクールでフェスに出演したりと充実した1年を振り返り、そんな流れの中で必然的に生まれた、手応え十分の新曲たちについて語ってもらった。

-2024年を締めくくる最新EP『オールタイムラブユー E.P.』をリリースするthe paddles。今年はライヴの場もたくさんあって大活躍でしたが、2024年を振り返っていかがですか?

柄須賀:今年は最初にガッと計画を立てて、"この通りに行ったらいいよね"みたいに考えてたことが全部きれいにできたし、10月の(Spotify)O-Crestのワンマン(["余白を埋める -東京単独編-" ONEMAN LIVE])も売り切れたんで、"楽しかったな"というのが素直なところです。やっていくなかでバンドも含めて、新しい人たちともめちゃくちゃ会えて。ワンマンのときに"初めて観る人ってどれくらいいるんですか?"って聞いたら、3分の1以上が手を挙げてくれて。

-それが2024年の成果ですよね。

柄須賀:ホンマそうですね。いろんな出会い方をしてくれた人がたくさんいると思うんですけど、その人たちがわざわざライヴハウスに来てくれてっていうのが、今年は結構できたなと思うので。本当に良かったです。

-航大君は今年を振り返っていかがですか?

松嶋:そうですね。今のが全てっちゃ全てなんですけど......。

柄須賀:航大がどう思ってるか聞きたいけどな。

-こういう機会じゃないとそんな話しないからね。航大君はステージを観てても、誠実な性格がプレイに表れてて。皇司君も安心して、のびのび演奏できるでしょう?

柄須賀:そうですね。めちゃくちゃ自由にやらせてもらえてます、喋りも含めて(笑)。航大が喋らない分、僕が全部喋ってるみたいな感じで。高校のときから10年ずっと一緒にやってるんで、お互いにこう思ってるやろうなっていうのも分かり合って。いろんなことが決まっていくのが、より強く出た1年やったなと思います。

松嶋:ふふふ、11年目ですからね。僕も今年を振り返って印象に残ってるのはやっぱりワンマンですね。O-Crestはツアーで行かせてもらったりしてたんですけど、埋めるってことがなかなかできなくて。今年"ムロフェス(MURO FESTIVAL 2024)"に出させてもらって、その流れでワンマンを発表して、しっかり埋められたというのがすごく良かったです。

-個人的にはどうですか? 一歩一歩踏みしめて、前に進めた感はある?

松嶋:それはもちろんあります。僕、ライヴの日は物販に立つことも多いんですけど、お客さんの話を聞いてても"あの日対バンでライヴを観て、今日来ました"って人がめっちゃ多くて。ライヴで好きになってもらえてることが多いんだなと思いますね。

柄須賀:初めて見る顔も多かったし、別のバンドのタオルを持った人が来てくれるパターンもめちゃくちゃ多くて。

-そういう人たちの一番になりたいですね。そして、the paddlesを今年知った人にも聴いてもらいたい、2024年の集大成的作品が完成しました。

柄須賀:締めくくりでもあり、2025年に向けたものにもなるので、すごくいいタイミングでリリースできるのが嬉しいです。曲作りとレコーディングが6月末~7月で、Mercy Woodpeckerと一緒に回っていたスプリット・ツアー("the paddles × Mercy Woodpecker presents「SPUTNIKS」")とドンピシャのタイミングだったんですけど、今年は友達から誘われたものとかは極力出るって決めてたし、今に始まったことじゃなくて、ずっとこのペースで動いてるんで、何も感じなかったです(笑)。僕等は秋とか冬のリリースが多いんですが、毎年同じ感じで進んでるけど遠心力がどんどんデカくなってる感じで。曲作ってレコーディングやって、その間もライヴやって、ツアーをやるっていうのがバンドにとって一番健康的な流れで、一番強くなる流れやと思ってて。いい意味で、来年も変わらずやれればいいなと思ってます。

-そしてできあがった『オールタイムラブユー E.P.』ですが、完成しての感想はいかがですか?

柄須賀:航大はどうでした(笑)?

松嶋:今回で言ったら、皇司の曲の作り方や歌詞の入れ方が、前作の『ベリーハートビート E.P.』(2023年リリースの1st EP)をアップデートできた感じがあって。

柄須賀:曲の幅も意識せずにバラバラの5曲ができたし、どの曲を聴いても"あ、the paddlesの曲やな"って分かる感じがあって、それは良かったなと思いますし。それを天然でやれた感じがあるんですけど、最近ライヴを想像して曲を作ることが多くて。ライヴでこう聴かせようとか、あの曲の流れでやりたいなとか思いながら作ってて、そしたら自然と全然違う5曲ができたみたいな感じでしたね。

-それがたくさんライヴをやってきた成果であり、ライヴと曲作りの健康的な流れの成果なんでしょうね。

柄須賀:そうですね。その辺の嗅覚みたいなのは、レコーディングしててもライヴをやっててもずっと変わらず持ってるかもしれなくて。常にライヴを見据えてる感じはあります。

-俺は今回「倦怠モラトリアム」を聴いて、ライヴの画がパッと浮かんだんだけど、歌詞を読んだら別れる前の心境を綴った意外とシリアスな内容で、"ああ、ライヴで聴いてブチ上がって、家に帰って音源を聴きながら歌詞を読んで、改めてギュッとくるんだろうな"と想像しました。

柄須賀:マジでそうやって聴いてほしくて書いたんです。「愛の塊」とか、前の作品の「ブルーベリーデイズ」とかは、ライヴでスッと歌詞が入ってきて、その場で染みる曲やと思うんですけど、観てるだけで盛り上がれる曲って、わりとナーバスな内容を歌うようにしてて。例えば"虎視眈々と狙う Say goodbye"ってサビは、ライヴでは自然と手が上がったり、一回聴いたら口ずさめたりっていうのを意識してたんですけど、家に帰ってもう一度聴いたら"まぁまぁエグいこと歌ってんな"って思ったり(笑)。

-皇司君は今作ができあがっての感想はいかがですか?

柄須賀:航大が言ってた通り、前作の『ベリーハートビート E.P.』を丸々アップデートできたっていうのと、「永遠になればいいのに!」は3月にリリースしたんですけど、これが一番the paddlesっぽいなと思ってて。"ちょっと冒険してもこの曲がまとめてくれるだろう"ってことで、他の4曲はもっと個性を出そうと考えて作ったんです。何度でも聴ける作品になったと思うんですけど、スルメ盤ではなくて、一発で"めっちゃいい!"って感じてもらえるものになったんちゃうかな? と思います。

-お世辞抜きですごい好きですよ。一発で入ってくる感もあるし、「永遠になればいいのに!」も狙い通りしっかり作品を締めてくれるし。では、「永遠になればいいのに!」は軸になったけど、具体的なテーマや設計図があってできた作品でもなかったと。

柄須賀:そうですね。あと、「永遠になればいいのに!」の後に書いた曲が「愛の塊」で。「ブルーベリーデイズ」とかの兄弟みたいな曲になった感じがあって、それもできてくれたおかげで、あとの3曲はすごく気楽に書けました。「愛の塊」は最初からしっかり歌詞を聴かないと分からないものではなくて、スッと残るような曲にしたくて。ワンフレーズだけでも納得するような言葉を多くして、優しいけどすごく心に残る曲にしたいなと考えました。

-俺、印象に残った歌詞のフレーズに赤線を引きながら聴いて、"キラーフレーズの多い曲だな、すごいな"と思って。「倦怠モラトリアム」の話もそうだけど、本当に皇司君の狙い通りでちょっと悔しいです(笑)。で、この曲は特にそうだけど、言葉にすごいリアリティがあるから、"いいな"と思うフレーズが人によって違うと思う。

柄須賀:それめっちゃ意識してるんで、すごい嬉しいです。あまり歌詞とか分からなくても口ずさめて、鼻歌で歌ったときに"ここだけは歌える"みたいな曲になったらいいなと思って作ったんですけど、考えすぎずにスッと出てきた感じでしたね。

-「愛の塊」を聴いて、この人はすごいピュアで感性の鋭い人で、それを言葉にする力もあるなと思ったし、絶対いいやつだなって思いました(笑)。

柄須賀:ホンマっすか? ありがてぇです(笑)。いいやつかは分からないですけど、俺ってホンマお節介やなっていうのは、自分でも思ってて。対バンとか友達とか、バンドマンやったら"今日のライヴはこうやったな"とか、友達やったら"この間のあれ、大丈夫やった?"って心配してみたりとか、天然でずっとやってる感じなんです。人と喋ってる時間が本当に長いし、そういうのが好きでやってるし。日頃から"この人が感じてることってなんやろう?"みたいに、その意図を自然と考えていたりしていて。

-そういう性格だから、"この歌詞を聴いたらどう思うだろう?"っていうのを、狙ってじゃなくて"共感してもらえるといいな"と思って書けてるんでしょうね。

柄須賀:それはすごい考えますね。今思い出したんですけど、「愛の塊」の"「死ぬまで一緒に居よう」よりも/来月の予定を聞いてよ"っていう最初の歌詞は、大げさなことを言うよりも確実な来月のことを聞いて、それを死ぬまで続けられたらいいなって意味で。本で読んで、これめっちゃいい言葉やなと思って、最初は狙いに行ってやろうと考えて書いた歌詞だったんですけど、狙いに行ったフレーズですら自分の言葉に落とし込めるというか。リリースする頃には自分のものになってたなというのはめっちゃ思いました。