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INTERVIEW

Japanese

シベリアンハスキー

2025年11月号掲載

シベリアンハスキー

Member:村田 美月(Vo/Gt) かめ(Gt/Cho) 結楓(Dr/Cho)

Interviewer:サイトウ マサヒロ

できるかぎりロックであることを意識しました 2人が止まらずに駆け抜けていく絵が浮かんでて


-リスナーからの期待も高まっているなかでリリースされるのが、今回の2ndミニ・アルバム『アイラブユー!』です。作品のヴィジョンはありましたか?

村田:こんなアルバムにしたいっていうのはあまりなかったです。コツコツと溜めてきた曲を集めてみて、そこに足りないピースを埋めるように制作していきました。特に「コンソメスープ」は、ミニ・アルバムという作品全体を見たときに足りない曲調と、ライヴでも必要な曲調が合致してできた曲です。分かりやすく言うとエモーショナルな感じの曲。

-そういったミドル・テンポな曲、バラードっぽい曲からはバンドとしての挑戦を感じます。

村田:バラードとかって、結成してすぐの対バン・ライヴではなかなかセットリストに入れづらかったりするんです。"うちら、最後にバラードやるのはまだ早いよね"みたいな(笑)。でも今のタイミングならいいかなって。

-成長した現在のシベリアンハスキーなら。

村田:そうですね。ちょうどいいステップ・アップかなって。

-1stミニ・アルバム『生活にたゆたう』(2025年1月配信リリース)の制作やリスナーの反応から得たものは、今作に反映されていますか?

村田:あんまりない(笑)。前のアルバムから学んだことって、私はないかな。そのときそのときで、やりたいことをやってるって感じです。

かめ:私も、常に今自分がやりたいことを突き詰めて、それが一枚の形になっているっていう感覚です。お客さんも、それが好きで見てくれてると思うので。結成当初からずっと、"何かのためにこうしよう"って考えることはなくて、1stも2ndもそのタイミングの自分たちらしさが詰まったものになっていると考えていますね。

結楓:私も同じです。ただ2枚目のほうが、さっき話したように、お客さんと一緒に歌えたり、ジャンプできたりするかどうかを考えながら作れたように思います。

-"アイラブユー!"というストレートなタイトルにはどのような思いが込められていますか?

村田:私は普段から、できるかぎり言いたいことを濁さずまっすぐ伝えるようにしてるんです。濁すことによって、伝えたいことが100パーセント届かなかったら嫌だから。なので、この作品のリリース・ツアー("東名阪TOUR「アイラブユー!」")も含めて、私たちの音楽を聴いてくれている人にまっすぐに思いが伝わったらいいなと思って、このタイトルにしました。

-なるほど。濁さずに伝えたいという気持ちは、歌詞を書くときにも抱きますか?

村田:ちょっとニュアンスを付けたほうが音に合うときもあるので、少しアプローチが違いますけど、なるべくストレートに書きたいとは思ってます。机に向かって"よし、書こう!"っていうのはあんまりできないタイプで、外にいるときや、映画やドラマを観たときにふと言葉が出てきて、そのときの気持ちをフワッとメモしておいて、広げていくことが多いですね。

-今作の楽曲は、前作よりも各パートの個性が際立つ楽曲が揃っている印象です。特にリード曲の「ふたりだけで」は、シベリアンハスキーらしいパワフルな楽曲だからこそ進化が感じられて。

村田:できるかぎりロックであることを意識しました。Bメロで少し落とす手法もあるとは思うんですけど、そういうのはなしでずっと走り抜ける感じにしたかったんですよ。"ふたりだけで"だから、2人が止まらずに駆け抜けていく絵が浮かんでて。

かめ:シベリアンハスキーの曲では珍しく間奏にギター・ソロがないんですけど、だからこそラストのフレーズでは魂を込めてチョーキングしようと思って(笑)。アウトロの構成自体すごく新鮮ですし、私はチョーキング・フレーズが一番得意なので、力を入れました。

-かめさんのギター・プレイは、シベリアンハスキーの大きな武器ですよね。自身のプレイ・スタイルについてはどう考えていますか?

かめ:今の中高生に刺さらないようなスタイルだっていうのは重々承知してるんですけど、それでも空間系を駆使したモダンなギターを弾こうっていう気は全くなくて。個人的な考えですけど、一番ギターに気持ちを込められる音楽ってブルースだと考えてるんです。"ブルースは顔で弾く"とか言いますけど、それだけ感情が表に出るジャンルだと思うので。諦めずにこのプレイ・スタイルを追求していけば、必ず誰かに届くと信じてます。

-素晴らしいです。結楓さんは、「ふたりだけで」のレコーディングでどのようなことを意識しましたか?

結楓:バンド全体で疾走感を大事にしていたんですけど、その上で土台であるドラムが先陣を切って進むつもりで叩きました。一方で、メリハリや抑揚は必要だなと思って、歌は立てつつ、自分が派手に目立ちたい部分は押さえて、大きいフィルを差し込んだりしています。

-その企てはバッチリハマってますね。この曲は3人それぞれが目立っていて見せ場がある。スキルアップの賜物なんですかね?

村田:今までは聴き手として音楽を聴いてたけど、活動を重ねて、別の視点からも音楽を聴けるようになったことが大きく関係してるかなと思います。いろんな人のライヴを観させていただいたので。

-その他の収録曲で、特に手応えを感じているものはありますか?

村田:挑戦できたという意味で言えば「オーバーザムーン」。今までは恋愛とも友情とも捉えられる歌詞を書きがちだったんですけど、この曲では恋愛のことを重たくなりすぎない絶妙な塩梅で書けた気がしてます。

かめ:私も「オーバーザムーン」。シベリアンハスキーとして新しい一面を出せたのはもちろん、言いすぎかもしれないんですけど、音楽業界的にも新しい扉を開けたんじゃないかって(笑)。曲作りのときに似たイメージの曲を探したんですけど、あまり見つからなくて。っていうことは、リスナーの方にも"なんだこの曲、聴いたことないぞ!"と感じてもらえるんじゃないかと。それがバンド・サウンドになってるっていうのも面白いですし。

結楓:私は「ダーリン」ですかね。シベリアンハスキーの曲はキメがたくさん入ってたり、音数が多かったりするんですけど、「ダーリン」はわりとシンプルで、一周回って一番難しくて。一音一音が際立つからレコーディングに苦戦したんですけど、最終的に納得する演奏の仕方を見つけられたから、印象に残ってます。

-本作を引っ提げてのライヴも楽しみですね。つい先日に大阪、広島、京都、名古屋と遠征ライヴを行っていますが(※取材は10月下旬)、東京以外のライヴで得るものはありますか?

村田:やっぱり遠くに行けば行く程まだ出会ったことのないお客さんが多くて、そのなかでどうやってフロアを引っ張っていけるかっていうのは毎回考えさせられます。地域によってテンション感も違いますし。遠征中は、今できることを見つめながら、どんな新しい挑戦ができるかを考えてましたね。できるだけこっちからノリ方を提示したり、何も知らなくても楽しめるような空気を作ったりすることは心掛けています。

-音源に関して言えば、今は日本に限らず世界中でリリース後すぐに聴ける環境が整っているわけですが、それでもバンドがツアーをすることにはどんな意味があると思いますか?

村田:音源はたしかにどこでも聴けるけど、ライヴは自分たちがそこにいないとできないですよね。音源とライヴは、それぞれ違う役割があると思ってます。百聞は一見に如かずというか、ライヴじゃないと届かないものがあるから、遠くでライヴをすることはバンドにおいて必要不可欠なことだと考えています。

-ここまでの話を聞いていて、シベリアンハスキーは何よりもライヴを大事にしているバンドだということが伝わってきました。皆さんにとって、ライヴってどんな場所ですか?

村田:ライヴは、自分たちが成長する場所かなと思います。音源にする前にライヴで演奏する曲もあるし、そういう挑戦の場でもある。ライヴを基準に曲を詰めて、お客さんがどういう動きをしてくれるかとかを考えますし。バンドとライヴには切っても切り離せない深い繋がりがあるなって。

かめ:音源はいつでもどこでも聴けるのに、それでもライヴに足を運ぶ人がたくさんいるというのは、やっぱりそこにみんなが求めてる何かがあるってことで。私はそれが熱量だと思ってます。音源でも伝わるものがあるけど、熱量は伝染して、ライヴ中にどんどん高まっていく。それを感じる場所ですね。

結楓:私にとっては、本当に生き甲斐です。今年の春頃に1ヶ月くらいライヴをやらなかった時期があったんですけど、SNSでほかのバンドが頻繁にライヴ活動をしているのを見ていると、涙が出てきて。

-ライヴが精神安定剤のような。

結楓:そうなんです。お客さんの笑顔を見るとグッと来て元気を貰うし、それは自分がステージに立ってるからこそ見られる光景だから。

-では最後に、11月から12月にかけて開催される初の東名阪ツアーに向けて、意気込みをお願いします!

結楓:初のツアーなので、たくさんの人に自分たちの音楽を届けられるように頑張りたいと思います。

かめ:名古屋や大阪に行くと、"やっと会える!"って言ってくれる人がいるんです。なので、ちゃんと自分たちの企画で会いに行けるのが楽しみですね。最近、どんどんいいライヴができるようになっていると思うので、東京を含めた3ヶ所でその力を出し切れればと考えてます。

村田:自分の企画を短期間で3本も回るというのは経験したことがないから、熱量を保てるかって心配もあるけど、そのなかでどんなふうに成長できるかワクワクもあるし......とにかく本当にいろんな人にうちのバンドを観てほしいんですよ。その思いが一番強いです。

TOUR INFORMATION
"東名阪TOUR「アイラブユー!」"

11月25日(火)名古屋CLUB UPSET
w/ ガラスの靴は落とさない and more

11月26日(水)大阪 アメリカ村 BEYOND
w/ OKOJO / ワンダフル放送局 / 気づいたら劇団 / 台所きっちん(O.A.)

12月8日(月)Spotify O-Crest
w/ セブンス・ベガ / Lala and more

■チケット一般発売中
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