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LIVE REPORT

Japanese

シベリアンハスキー

2025.12.08 @Spotify O-Crest

Writer : サイトウ マサヒロ Photographer:SHUN ITABA

12月8日、新星女性ロック・バンド シベリアンハスキーが、"東名阪TOUR「アイラブユー!」"のファイナルとなる東京公演を渋谷 Spotify O-Crestにて開催した。

2023年の活動開始から、約1年で"JAPAN JAM"、"SUMMER SONIC"の大舞台に立ちスケールを拡大させ、2025年は自主企画を重ねることで着々と足場を固めてきたシベリアンハスキー。渾身の2ndミニ・アルバム『アイラブユー!』を引っ提げた本公演は、そんな一年の集大成にして2026年のさらなる飛躍を予感させる一夜だった。

この日はゲスト・バンド3組が出演、紫月(Vo)の激情的な歌唱がハートを揺さぶったあるゆえ、白ジャケットのステージ衣装で煙たく艶めいたギター・ロックを鳴らしたセブンス・ベガ、瑞々しいメロディで喜怒哀楽を描いた京都発のLalaが、月曜日の憂鬱を吹き飛ばしながら熱いバトンを繋いでいく。それぞれ2019年、2023年、2020年結成の彼等。これからのロック・シーンを担う新世代の風を存分に感じさせてくれた。

満を持して登場したシベリアンハスキーは、最新作『アイラブユー!』の収録曲を中心にしたセットリストを展開した。バンドの進化を示すように、同作の収録曲は高精度のアレンジが練り上げられている。小さな体躯から天井を吹き飛ばすようなパワフルな歌声を張り上げる村田美月、ブルースをルーツに持ち表情豊かな演奏を繰り出すかめ、アンサンブルに疾風を吹かせながらここぞという場面で挟み込むフィルがスパイスを効かせる結楓。新曲でより際立った3人の個性は、ダイレクトに音を浴びられるライヴハウスでさらに克明に浮かび上がる。

"待ってたかい? シベリアンハスキーです!"と、快活に告げる美月は冒頭から気合十分。「ふたりだけ」でライヴをスタートさせると、バンドは前へ前へとスピードを高めていく。続いて「アパートの一室で」とパンチのあるナンバーを連投すると、フロアはハンドクラップと拳で応答した。かめはギター・ソロでお立ち台に上がり、身をのけぞらせながら渾身のチョーキングで感情を露わにする。

"このリズムで、全員でCrestを揺らしていこうよ! できる?"と投げかけて披露されたのは、ミディアム・テンポの「ダーリン」。美月はマイクをスタンドから外し、ステージから身を乗り出して、オーディエンスとの距離を詰めていく。どこまでも遠くへと響いていくような歌声は、しかし同時に、確かに一人一人の"あなた"に向けてまっすぐに届けられている。

ライヴ中盤には、スロー・バラードとして楽曲の幕を開けて終盤に速度を高める「届かない」でガラッと空気が入れ替わった。息遣いやかすれも感じ取れる繊細な音像、1人歩く夜道の物寂しさを想起させる青いライト。そこから新境地のポップネスを放つ四つ打ちナンバー「オーバーザムーン」に繋げて、大いに広がった手札を惜しみなく切っていく。熱狂だけではなく、極小の孤独も極大のスケールも描き得る。そんな並々ならぬ可能性が、その音には宿っている気がしてならない。

パンキッシュな「ユー!」で再び火をつけると、美月はMCで"東名阪ツアーでこの音楽を届けに、あなたたちに「アイラブユー」と伝えに参りました。本当に、いつも聴いてくれてありがとう"とありのままの言葉で感謝を述べる。本編ラストは『アイラブユー!』のクロージング・トラックでもある「コンソメスープ」。哀愁漂うハチロクのリズムがエンドロールを描いた。

アンコールで再登場した彼女たちは、2026年2月25日に東京 下北沢DaisyBarにて主催ツーマン・ライヴを開催することを発表。客席から喜びの声が上がった。締めくくりには、「落書きのような」で"この曲はあなたがいないと完成しません!"という煽りからシンガロングを巻き起こした。ステージを降りる彼女たちの満足げな笑顔が、初ツアーでの確かな収穫を物語っているようだった。たくさんの"ふたりきり"が集まった空間で渡し合った愛は、これからも膨らみ続けていく。

[setlist]
1. ふたりだけで
2. アパートの一室で
3. ダーリン
4. 届かない
5. オーバーザムーン
6. ユー!
7. コンソメスープ
En1. 落書きのような

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