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INTERVIEW

Japanese

高岩 遼

2025年09月号掲載

高岩 遼

Interviewer:石角 友香

この歳で気付いたスーパースター像は"クラシックでオリジナル"であること


-まさにスタンスですね。

このジャケットのピアノが僕が小1からずっと弾いてたピアノなんですけど、写真は実家に帰省したときに取材班が回してた動画のスクショなんです。このピアノで作曲しているなかで、"いや、Ray Charles!"と思って。Ray Charlesも得意なブルースとゴスペルの掛け合わせのコード進行を少し参考にしつつ、いい意味でフェアリー・テイルにしたいなってイメージはあったので、僕らしいというかどこかディズニー臭さがあるというか、美しくこの曲を終わりたかったんですね。なので、最後はブルースだけではなく希望を残して終えるように努めてたんです。でもレコーディングに関しては本当にカッコつけずに、ピアノが下手でも歌も下手でもなんでもいいやって感じで、ある意味乱暴になってやりましたね。そっちのほうが人様に伝わるものがあるのかなと思ってやってました。

-弾き語りの一発録りですか?

これはKING RECORDSのスタジオで5回録りまして、その5本目ですね。

-もちろんこれ以外の曲も作っていらっしゃるわけなんですけど、「なにもない」はこの曲単体で出てきたんですか?

アルバムに収録されている曲なんですけど、これをシングルで出したかったんですね。これ以外の曲はジャズ・バンドなんです。もともとピアノ・アルバムを出そうとなってたんですけど、"いや、スタンダードのジャズをやるならちゃんとジャズ・ピアニストを呼びたいし、ジャズ・ドラマー呼びたいし"というところで、いつもやってるメンツに集まってもらって。

-もともとジャズ・バンドで構想してたんですね。

そうですね。ところが実はちょっとウイルスに侵されてまして、本当は8月27日にジャズ・アルバムが出るはずだったんです。でも声が枯れてしまいまして歌えず、アルバムは9月26日に出るんですけれども、やっぱ8月27日に作品を出したいっていう気持ちが僕にはありまして。無理矢理KING(RECORDS)さんにスケジュールをこじ開けてもらって、シングルとして「なにもない」を出すことになりました。

-じゃあアルバムの構想としてはジャズのビッグ・バンドのアルバムを作ろうと?

コンボ・ジャズです、今回は。

-なるほど。「なにもない」は最後に意地みたいな感じで出てきたわけですね。

意地でしかないですね(笑)。

-そして本体であるアルバムはメンバーを迎えたコンボ・ジャズであると。

そうですね。ブルースは弾けるんですけどジャズのピアノは弾けないので。というか何をもってジャズって言うかって話で、別にブルース10曲で"これジャズ・アルバムだから"って僕が言えば、それはジャズだしってことだと思うんですけど。まぁ正統派なスタンダード、男性ジャズ・ヴォーカリストとしての立ち振る舞いも垣間見れるアルバムにはなるんで、そうであればやっぱりバンドでやろうかなっていう。世の中にはジャズ・ピアノ・アルバム出るよって言ってるけど、出てねーじゃんっていうのも高岩らしくてチャーミングでいいやみたいな、それぐらいのノリでしかないです。あんまり深くは考えてなくて。

-ただ、1つ35歳の誕生日というのは大きなものなわけで、ビッグ・バンドのヴォーカリストとして成功するんだっていうヴィジョンに、一番近い作品にはなっている。

そうですね。『10』が前衛的なジャズとしたら、今まで皆さんがサブスクで聴ける僕の本来のジャズの歌っていうのは実はなかったんで。ジャズ・ヴォーカリストとしてというか、高岩 遼として、ポップ・シンガーとして記念物を出したかったのがあります。ジャズの歌をパッケージしたかったっていうのはありますね。

-収録曲はオリジナルもあるんですか?

オリジナルは2曲しか歌ってなく、あとはスタンダードですね。そこにアルバムの構成というか作り方が若干ヒップホップというか、スキットっぽい感じもあったりします。従来の1曲目から10曲目までスタンダードのいい曲が詰まってるジャズのアルバムの形ではないっていう遊び方で。僕が現代に落とし込んでるところと言えばそこかもしれないですね。

-たしかにそこはヒップホップっぽいかもしれないですね。

語りが入ってる。1曲目は僕の語りしかないみたいな。形はおしゃれにはしてますけどヒップホップ的なアプローチかもしれない。

-現代においてはかなり珍しいものになりそうですね。

そうだと思いますね。で、あの今回アルバムでは最後の曲が「My Way」(Frank Sinatra)なんですよ(笑)。もともと(原曲のClaude François 「Comme D'habitude」は)シャンソンだしみたいな。僕、Sinatraを敬愛してますけど、後期のSinatraは嫌いなんですよ。30代40代のイケメンのときのSinatraが好きなんで。というのもあって、"「My Way」は嫌だな。70ぐらいになったらまぁやるかな"って言ってたんですけど、尾崎紀世彦さんが若いときに歌ってて、"あれ? まぁアリか"みたいな(笑)。皆さんに分かりやすくスタンダードを伝えるにはいい曲でもあるじゃないですか? あとはマニアックな曲しかやってないんですけど。

-ちなみにアルバムが出てからリリース記念的なライヴの予定は?

やりたいですね。

-現状はコアファンの方が観に行かれている印象が強いですし。

本当に濃いファンの方がジャズの現場にはいらしてますけど、もっといろんな人、青少年からギャルからお年を召した方から、そういう方々が来てくれると嬉しいなと思います。

-Noteに"ジャズライフ目録"を書いていらっしゃるじゃないですか。高岩さんにとってのジャズを理解する助けになると思いますね。

僕、ジャズ屋ジャズ屋言ってますけど、ジャズのジの文字もまだ分かってないような感じなんです。あまりに宇宙すぎて何がジャズなのかと僕はちょっとまだ理解できてないんですけど、ただ僕の中ではやっぱり"ジャズライフ"っていうのは座右の銘で。なんとなく"ジャズいね"っていうのはあるんですよね。それって僕が感じてる"このミュージシャンはジャズいね"で。別にジャズを奏でてなくても"ジャズいんだよね"というところがなんなのかって宇宙を、ちょっと探求したくなりまして、文字に起こしてみると分かりやすくなってきて、それがすごく楽しいんですよ。