Japanese
琴音
2024年10月号掲載
Interviewer:石角 友香
シンガー・ソングライターの琴音が音楽活動5周年を機に、その名も"成長記 ~Now&Best(2018-2024)~"と題したアルバムをリリースする。ダーク・ポップのニュアンスもある新曲「Heaven」(土ドラ"嗤う淑女"主題歌)をはじめジャンルの振り幅のある新曲群、広く彼女の存在を知らしめた「Brand New World」(映画"金の国 水の国"劇中歌)やファンの間で音源化が望まれていた「成長記」の新録等、改めて琴音というアーティストを知る契機になりそうな作品だ。高校生でのデビューから数年。22歳のリアル・ヴォイスを届ける。
-ベスト的な既発曲と新曲で構成されたアルバムを作るというのは、どういうところから出てきたんですか?
そもそもは新曲で構成されるアルバムになる予定で、すでに曲はほぼほぼ作り終えてたんですけど、途中でいろいろとスタンスが変わっていって、スタッフさんとの中で"気づけばもう5周年だね。じゃあその5周年をちゃんと記念したアルバムを作ろう"というふうになって。そこで、作っていた新曲を入れつつ、今までこういうことをやってきたよねっていうものも含めたアルバムにしよう、ということになりました。
-琴音さんのナウ・アンド・ゼンが分かりやすい内容だし、ライヴもやりやすくなるのかなと。目下のニュー・シングルである「Heaven」はすごくイメージが変わりましたね。
ありがとうございます(笑)。
-ドラマの書き下ろしというところもあると思うんですけど、作家の方と一緒に作ってらっしゃって。
そうですね。でも完全に提供いただいた楽曲なので、私は歌に専念させていただいた感じなんですけど、私の曲は今までダークな曲ってそんなになかったので、ちゃんと自分の曲としてこういう表現ができるとなると、これからのやり方も広がるのかなと思って、すごく良かったです。いしわたり(淳治)さんに詞を書いていただくっていうのは曲が決まってからで、最初は歌詞のない候補曲のデモがたくさん送られてきたんです。その段階から、私はこの曲が素敵! と思っていて。でも私は私として、と思って"この曲好きです"というのは言いつつ、若干伏せつつでいろんな人たちが確認していったんですけど、皆さんこの曲がいいよねってなったみたいで、無事自分のやりたかった曲をやることができました(笑)。
-この曲のどういう部分が素敵だなと?
月並みですけど、暗い雰囲気の曲をやったことがなかったからまずそこが新鮮だったっていうのもありますし、ダンス・ミュージックってほどではないんですけど独特のノリがあったり、低音が心臓に来るタイプの曲っていうんですかね。そういうのもあって個人的には好きな曲のジャンルだったので。他のデモ曲には今までも私が歌ってきたような前向きなバラード曲や元気な曲もあったんですけど、特に印象的だったのはこれだったので、できればこの曲をやりたいなと思ってたら決まって。で、作詞の方も"この方にお願いしようと思ってます"というのは聞いたんですけど、いろんな意味でありがたい機会なのかなと思って楽しみにしてました。
-洋楽だったらBillie EilishやLANA DEL REYにも通じるムードがありますね。
そうなんですよね。
-歌詞も強い言葉がいっぱい出てきますが、どう消化して歌いましたか?
提供曲は設計図みたいなものを作って歌う、っていうのが自分のやり方として昔からある程度確立していて。本当にワンフレーズ、ワンフレーズとか、一文字一文字ぐらい細かく"こういうふうに歌う"みたいなのを事前にセルフディレクションした状態でレコーディングの本番に向かうようなやり方をずっとやっていて、今回も同じようにしました。なのでわりとメカニカルと言ってはなんですけど、レコーディングではすでにある設計図の通りに歌うみたいな感じでしたね。
-それもまた楽しかったりしますか?
そうですね。でも今回はやっぱり結構難しかったです。ハイトーンのところはデモの段階では裏声で歌われてたんですけど、曲調的に張りたいなと思ったらすごい厳しい戦いになってしまって(笑)。自分で自分の首を締めつつレコーディングに臨んでいたんですけど、難易度が高いとその分やりがいもありますよね。
-そしてアルバムの新曲群には琴音さんが作詞作曲された曲が結構あるので、久しぶりにまとまって聴くことができるのも嬉しいです。「image」はどういう状況のときにできた曲ですか?
この曲は自分の音楽仲間っていうか、通っていた専門学校が音楽の学校だったんですけど、そういうところで関わってきた仲間が未だに何人かいるんですよ。ほとんどの人はすぐ音楽をやめていっちゃったり、卒業してからしばらくやってたけどやめちゃったりしてるんですけど、未だにやってるっていう人も一応少しはいて。でも、そういう人たちもやっぱり音楽を続けていくことであったり、自分のやり方には悩んでいるみたいで。だけど"しんどいよね"って話になると、"でも音楽しかできないからさ、僕/私"みたいな話をするんですよ。で、私も"ね、そうだよね"って言うんですけど、いつもそこで引っ掛かってて。というのも、音楽って誰かにやらされてやるものじゃないし、音楽をやって生きるっていう人生を歩むか歩まないかは自分次第じゃないですか。それに、音楽しかできないって言うけど別にそんなことはないっていうか(笑)。
-やってみたらね?
音楽をやられてる子たちはたぶん他でもだいたい生きられるなというか(笑)、別に学校も行けるしご飯も食べれるし、人と関わることもできるし、バイトしてる子はバイトしてるし、みたいな。となったら別に音楽っていう場所じゃなくても生きていけて、居場所を作ろうと思えば作れる。そう考えると"自分には音楽しかない"っていう言葉が逃げみたいに聞こえてきちゃって。
-欺瞞っぽい?
そうなんです。別に音楽やらなくても生きていけるっていう自分を認めたくないから出てくる言葉でもあるのかなと思って。そういう気持ちはすごく分かるから、真っ向から言い返すことはちょっと心が阻むんですけれども。でも同調して"そうだよね"って言ってる自分にもちょっと"うーん"って気持ちになるし、"そうじゃないよね"と思ってる自分もいるから、っていうのもあって。じゃあどうしたらいいんだろう? と考えたときに、音楽って関わる人が増えていったら自由度が下がる場合もあるし、普通に頑張ってても上手くいかないこともあるし、"やらなきゃいけないからやってるんだ"って思わないと心が持たないような瞬間ももしかしたらあるのかもしれないですけど、それを含めてもなお"自分がやりたいからやってるんだ"っていう勇気を持つことが重要かなと。音楽に限ったことではないかもしれないですけど、自分がやりたいことをやってるんだっていう、それによって苦しんだりすることがあったとしても自分がやりたいからやってる、身勝手に生きてるって言い切れる勇気が必要かなと思ったんです。お互いそういう気持ちを持ってがむしゃらに生きられたらいいよね、っていう気持ちを込めて作ってました。歌詞を書いてるときは特に。
-仲間に対して"本当はこうじゃないの?"と歌うことによって励ましてるんですね。
そうですね、はい。
-性格が出ているのかも。
(笑)
-本気で考えてるからこそでもあるし。
そうですね。でも私、本当にオブラートに包めないんですよ。普段もそうなんですけど、そのままを投げるか、オブラートに包みすぎて結局何が言いたいのか分からなくなるぐらい包みまくったものを投げるかの2択しかできないんで(笑)。
-(笑)包みまくる。
程よくいいように言うっていうのが苦手なので、やっぱりそういうところでは失敗することはありますけどね。
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