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INTERVIEW

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琴音

 

琴音

Interviewer:藤坂 綾

シンガー・ソングライターの琴音が、前作ミニ・アルバム『君は生きてますか』以来約1年7ヶ月ぶりとなるオリジナルのフィジカル作品『君にEP』をリリースする。すでに先行配信もスタートしている"資生堂アネッサ ドラえもんデザインCM"楽曲でもある表題曲「君に」に新曲2曲をプラスし、アニメ映画"金の国 水の国"の劇中歌となる3曲の全6曲を収録した今作には、彼女の魅力はもちろん新たな挑戦から得た自信と成長過程がしっかりと刻まれている。そんな濃密な1枚について、メジャー・デビューからのこの4年を振り返りながら、たっぷりと話してもらった。

-3月6日にメジャー・デビュー4周年を迎えましたが、どんなお気持ちでいらっしゃいますか。

激動というか、気づいたら4年経っていたという感じですね。思ったより短かった気もするんですけど、特に昨年は活動も全然できていなかったので、時間が経つのは早いなという気持ちが一番です。あとは、メジャー・デビュー前もライヴ活動を4年くらいしていて、その4年間というのが自分の音楽活動の根幹にもなっているので、そのメジャー・デビュー前の活動期間をこれから越えていくことになるんだなとも思っています。最近母親と話している中で"実家にいた期間よりも長く夫と過ごしているから......"みたいなことを母親が言っていたんですけど、それにちょっと似たような感覚で。今までの根幹よりも、これからはこっち(メジャー・デビュー後)のほうが長くなることに対しての感慨深さというのもありますね。

-そこに対してどうしていこうとか、どうしていきたいとかはありますか?

結局今までと同じようなかたちでやるしかないかなと思うんですけど、"大人になっていくんだな"という切なさみたいなものは感じています。

-この4年で変化したところ、してないところはどんなところですか?

そもそも我が強いところがあるんですけど、この4年を経て、より自分の考えを持つことや自分らしくいることの大切さを感じています。あと、メジャー・デビューしてからはワンマン・ライヴをさせていただく機会が増えました。それまではご一緒するアーティストさんがいて、基本自分が一番年下なので先輩方にかわいがってもらっていたところもあったし、先輩方のお客さんにライヴを観てもらうという機会もあったんですけど、メジャー・デビュー後は先輩方とご一緒する機会も少なくなりましたし、同業の仲間と関わることもかなり減ったので、そこに対しての寂しさはありましたね。

-改めて環境が変わったと。

そうですね。環境が変わったことで、いろいろな人やいろいろな場のよろしくない部分というのも見えてしまうことがありました。なので、この4年間で性格がひん曲がった部分もあります。今までは何もかもが勝っている先輩たちに"すごいです!"とひたすらリスペクトしている感じだったんですけど、環境が変わったことで対応が変わってしまう方もいましたし、先輩方のように優しく励ましてくれたり、守ってくれたりする人が身近に少なくなってしまって。それで、自分に向けられる棘みたいなものも露骨に刺さるようになってしまい気持ち的に荒んだ時期もあったんですけど、そうやって精神的に一度ねじ曲がると、いい意味で純粋だったときには見えていなかったものが見えたりもしてきました。例えば人の優しさとか、より深い部分まで見ることができてきたので、これも人生の過程なのかなと思う気持ちもありますね。

-なるほど。そういう意味で、大人になっていくことの切なさがあると。

そうですね。過去に作った曲を聴くと、当時の歌詞というのはあの頃の私にしか書けなくて、今はまた別の見方になってしまうのかなと。きれいごとしか信じられなかった頃の楽曲もあったりするので、今はそうじゃないんだという物悲しさもあったりします。

-荒んだ時期があったとおっしゃいましたが、そんなときはどうやって自分を保つというか、気持ちをコントロールされてたんです?

自分自身と話し合いをするしかないんですけど、ほんとに追い詰められたときって、自分が行動して何かを変えないと人生無駄になっちゃうなと思ったりはします。それは自分が失敗したことによって感じたことでもあるし、あのときもっと動いていれば良かったなと思うときもあったので、何かあれば自分が動くとか、自分の意思を持つということをより強くしなくちゃいけないなと思います。気分が落ち込んでいても制作しなくちゃいけないときもあるわけじゃないですか。でもそういうときに書くもの、作るものってやっぱり気持ちがどうしても反映されちゃうんですよね。例えばヴォーカル・レコーディングのとき、気分が落ち込んでいたらそのまま落ち込んだ声が出てしまうので、それで録ったら自分を応援してくださっている方々に対して失礼ですし、自分自身も後悔しますし。人に受け取っていただくものを作るときは、自分がどんな状況であれノーマルな状態でいたいなと、そこはいつも心掛けています。

-今回の『君にEP』は久しぶりのオリジナルのフィジカル音源になりますが、最初に聴いたときの印象はいかがでしたか。

森の中にいるような、木漏れ日が差してくるようなイメージがあって、「君に」はレコーディング中も青々としたナチュラルな感じを想像して歌いました。最初は、緑とか太陽の黄色いイメージというよりかは、白い光がピカーッと光っているイメージだったんです。それがだんだんと自然なイメージに切り変わっていきました。

-歌ってるうちに変わっていったんですか。

はい。「君に」はCM用とフル尺用で2回レコーディングを行いました。CM用のときは白い光が当たっているイメージが強くて、そこからフル尺用のレコーディング準備をしていくなかで、アレンジをどうするかという話などから"爽やかさ"みたいなものがイメージの中に足されていきました。最終的には森の中に木漏れ日が差して、暖かいというイメージに変わり、フル尺用のレコーディングに臨みました。

-そういう暖かさみたいなものを具体的にどう表現されようと?

暖かいイメージを表現しようというよりかは、自分の頭の中にはずっとそんな感覚がありました。それを持ったうえで、サビはメッセージ性がありますし、全体的にもちょっとずつ前向きになっていくという流れもあるので、最初はちょっと弱さが見えるけどだんだん前進していくみたいな点を意識して歌いました。私、歌詞の資料にいろいろなことを結構書き込むんですけど、この曲に関しても"ここはこんなふうに歌いたい"などと細かく書き込んで、それを本番でいかに表現することができるかというか、入力されたものを出力していくみたいな感じでレコーディングをしました。

-(※実際資料を見せてもらい)すごい。かなり細かく書かれてますね。

逆にオリジナルの曲「ライト」は書き込んでいる量が少ないんですけど。

-ご自身の曲はそうなりますよね。

提供いただいた曲って、その曲が生まれた過程を知らないわけじゃないですか。その人のアートの中で生まれた曲なので、それを表現するときはより細部に気をつけていきたいなという気持ちがあります。歌い方って0から1を作る作業というよりは1から10を作る作業で、アレンジャーに似たような視点になってくるのかなと思ったりもしています。1としてできたものをどう広げていくかという考えになるので、もともとあった木に飾りをつけていくみたいなイメージですね。

-なるほど。弱さがあっての強さ、闇があっての光、歌詞からそういう印象を受けましたが、ご自身と重ねたりする部分はありましたか。

もともと弱い人間だし、小心者だし口下手だし。感情を表に出すのもあまり得意ではなくて、基本我慢するタイプの人で、自分自身でも他人でも感情の動きを敏感に感じてしまうし、人の考えていることとかが気になる人間なので、ニュアンスとして暗い部分から前向きになっていくところにはすごく共感ができるんです。だけど、歌ううえではこういう気持ちになっている人を自分が応援する側になるので、弱い人間としての共感は多少ありつつも、弱くなってしまっている人や気持ちが折れそうになっている人たちを包み込むようなイメージで歌わせていただきました。

-ご自身が光の立場というか。

そこまで言うとちょっと図々しい感じになっちゃいますけど(笑)、立ち位置で言うとそうかなと思います。応援側の人間になっています。