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shallm

 

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Interviewer:山口 哲生

自ら作詞作曲を手掛ける19歳のヴォーカル、liaによるバンド・プロジェクト、shallm。パワフルなバンド・サウンドを土台にしながら、ハードに、ポップに、センチメンタルにと様々な感情を乗せた起伏の激しいメロディを紡いでいく楽曲群が持ち味で、現在は3月から6ヶ月連続でシングルを配信リリースしている。7月にリリースされた「ヘミニス」は、日本テレビ金曜深夜ドラマ"私をもらって~追憶編~"の主題歌で、liaが"普段はあまり書かない"というラヴ・ソング。凛とした力強い歌声が印象的なliaが、温かくて包容力のあるヴォーカリゼーションにも挑戦している意欲作だ。そんな「ヘミニス」についてはもちろん、6ヶ月連続リリースの楽曲たちについて、話を訊いた。

-現在放送中の日本テレビ金曜深夜ドラマ"私をもらって~追憶編~"の主題歌「ヘミニス」をリリースされました。今回のタイアップのお話が来たときのお話からお聞きできればと。いかがでした?

メジャー・デビューのときもドラマの主題歌だったので(MBSドラマ"女子高生、僧になる。"オープニング主題歌「センチメンタル☆ラッキーガール」を2023年1stデジタル・シングルとしてリリース)嬉しい気持ちがありましたし、恋愛ドラマなんですけど、普段はラヴ・ソングをあまり書かないので、頑張らなきゃなという気持ちもありましたね。背筋がビシっとなりました。

-いつも曲を作るときは、ラヴ・ソングはあまり出てこないんですね。

そうですね。普段自分があまりラヴ・ソングを聴かないというのもあると思います。学生時代はHoneyWorksとかを聴いてドキドキしたりしていたんですけど、尖っている曲や、世への不平不満みたいなことを歌っている曲を最近はたくさん聴くようになって。

-ご自身が音楽に求めるものが変わってきたとか?

たしかに昔はたくさん聴いていたので、そうかもしれないです。でも、普段ラヴ・ソングはあまり書かないけど、どんなものができるんだろう、書いてみたら楽しそうだなとも思いましたね。

-「ヘミニス」を制作するにあたって、ドラマ側からオーダーみたいなものはあったんですか?

"バラードで、甘すぎないラヴ・ソングを"というお話がありましたね。その"甘すぎない"という加減が難しくて迷いました。でも、サスペンス要素も入っているドラマなので、こういうことなのかなと、自分の中で解釈して書かせていただきましたね。

-たしかにラヴ・ソングではあるけど、甘い雰囲気とはまた違うテンションですね。いつも楽曲を作るときは、まずメロディから考えますか?

そうですね。まずメロディを作って、そのあとに歌詞を考えます。「ヘミニス」はサビから考えて、次にAメロ、Bメロという感じでした。

-メロディ自体はすぐに出てきましたか?

いえ、2パターン考えたんです。"甘すぎない"の加減が自分ではわからなかったので、"これだと甘すぎますかね?"というのをスタッフさんに確認してもらおうと思って、動画を送って。それで、"もうちょっと静かなほうがいいかも"ということになり、今のメロディになりました。

-歌詞に関しては、ドラマのストーリーを強く反映させつつも、それとは切り離しても受け止められるものになっていますね。

ドラマだけじゃなくて、現実でも共感できる歌詞にできたらいいなと思ってはいたんですけど、それは結構難しいんだなとも思いましたね。ストーリーがちょっと特殊なので。生きていて記憶がなくなることってないじゃないですか(笑)。

-ないですね(笑)。それこそドラマみたいに事故に遭ったり、あとはお酒を飲みすぎたりしないと。

はい(笑)。なので、現実にどう当てはめよう? と思ったんですけど、カップル特有の2人だけの世界観とか、そういったものに当てはまるかなと考えて。大切な人がいる人たちに聴いていただけたらいいなと思いました。

-歌詞を書いていて、これはいいフレーズが出たぞと思った部分を挙げるとすると?

ドラマの主人公は記憶をなくしているんですけど、相手の仕草を見て思い出すシーンがあるんです。それで歌詞にも"気配"や"仕草"というのを入れたんですけど、言葉としてもきれいじゃないですか。形に残らないふわっとしている感じがあって。その言葉を使えたのは嬉しかったですね。

-"ふわっとした"というお話がありましたけど、歌い方も曲調に合わせて柔らかさを大事にされていますね。

自分の声が結構ザラついているというか、強くて声量が大きいと思っているんですけど、今回は優しく歌うことを心掛けました。初めてやってみたので、新しい選択肢が増えたと思うし、これから作る曲でも雰囲気によってそういう歌い方をしてみようかなと考えています。でも、今回はそれだけじゃなく、2番は男性っぽく強めに歌い分けていたりもしてますね。

-そういう声の切り替えみたいなものって、曲を作っている時点である程度浮かんでいますか?

イメージが固まっているときもあるし、Itai(Naoki Itai)さんと話し合って決めることもあります。

-お名前が挙がったNaoki Itaiさんはサウンド・プロデュースもそうですし、アレンジも務められていて。「ヘミニス」を編曲していくにあたって、liaさんからItaiさんに提案された部分もありました?

もともとドラマ側からリファレンスとしていただいていた楽曲が、バンド・サウンドの楽曲ではなかったんです。ただ、shallmはバンド・プロジェクトなので、やっぱりバンド・サウンドでいきたいと思って。そこの擦り合わせがすごく大変だったんですけど、Itaiさんにご相談をしたら、完璧なものに仕上げてくださいました。あとはサスペンス要素もあるので、機械音的な、ちょっと打ち込みっぽい音も入れていただきましたね。

-1サビ終わりのフィードバック・ノイズとかも、それこそサスペンス感があっていいですね。MV撮影はいかがでしたか?

監督がドラマのストーリーに近いものを提案してくださったんです。2人で巡った景色の写真を"記憶の欠片"に見立て、それを見ながら1人で歩いていくというお話になっているんですけど、ドラマに合っていて素敵だなと思いました。あと、8ミリ・フィルムで撮影したシーンもあったのですが、色がすごくきれいでいいなって。

-でも、8ミリで撮影するというのも大変じゃなかったですか?

緊張しましたね。8ミリ・フィルムってそんなに何回も撮れないみたいなので、失敗できない緊張感があって。私、演技ができないというか、リップ・シンクもどうやっていいのか迷ってしまうんですけど、何回も撮れないし、しかもスタッフの皆さんが見ているから恥ずかしいんですよ(苦笑)。でも、やらなきゃ......! と思って頑張りました。

-ちなみに、ドラマは拝見されてますか?

はい! ここで曲が流れるだろうなっていう確定演出みたいなのがあるじゃないですか。そういうのが来るとドキドキしますね。

-来るか......来るか......みたいな(笑)?

来たー! って(笑)。

-(笑)それって曲を作ったご本人も思うんですね。

思います! "いい入りー!"とか、"今だー!"とか。

-はははは(笑)。ここからは現在行っている6ヶ月連続リリースについてお聞きしていきます。3月から毎月1曲ずつ発表されていて、今回の「ヘミニス」は5曲目になるわけですけども、6曲を発表するにあたって、どういったものを出していこうと考えていましたか?

実はshallmが始動したときに、一気に10曲ぐらい制作をしていたんです。それを持って、ライヴに出させてもらったりしていたんですけど、リリースをしていた曲はあまり多くはなかったんです。ライヴで披露している曲も普段からお客さんに聴いていただきたかったので、今回6ヶ月連続で出してみることにしました。それで、せっかくだったら出す月のカラーに合ったものをチョイスしたいなと。3月の「花便り」だったら、花をテーマにして、門出を応援するような曲にしようとか。

-その季節にあったものを出そうと。6月に発表した「ハイドレンジアブルー」だったら、"ハイドレンジア=あじさい"ですし、梅雨時ですし。

そうですね。月ごとにピンポイントに絞って、誰かに伝わればいいなと思って出していきました。

-まず、3月に発表したのが「花便り」。応援がテーマだったんですね。

そうですね。なるべくシンプルにしようと思ってました。Aメロとサビだけで構成して、あまり言葉も詰めずに、ストレートに応援しようって。

-そんなテーマがありつつ、出だしが強烈ですよね。"もしも明日で私の命が終わったとしても/貴方にもらった優しさでまた花を咲かす"という。応援というテーマで、命が終わってしまうワードから始まるのはすごいなと思ったんですが。

この曲は、母の愛みたいなものを書きたかったんです。私はまだ母ではないですけど、生まれ変わってもまた会いたいということを書いていて。それぐらい大きい愛ってすごいと思うんです。そんな人が身近にいるということを、改めて聴きながら考えたいなと思って作りました。