Skream! | 邦楽ロック・洋楽ロック ポータルサイト

MENU

INTERVIEW

Japanese

Nornis

2024年06月号掲載

Nornis

Member:戌亥とこ 町田ちま

Interviewer:高橋 美穂

VTuber/バーチャル・ライバー・グループ"にじさんじ"に所属する戌亥とこ、町田ちまのヴォーカル・ユニット、Nornis(読み:ノルニス)の1stミニ・アルバム『Tensegrity』が完成した。"Tensegrity"とは、思想家で建築家のバックミンスター・フラーによって提唱された概念であり、Tension(張力)とIntegrity(統合)を掛け合わせた造語。まさに結成から約2年支え合ってきたNornisを象徴する言葉である。今作に至るまでを、ふたりに語ってもらった。


ひとりだったら難しかっただろうな。ふたりだったからできたと思います


-1stミニ・アルバム『Tensegrity』が完成して、まずは戌亥さん、町田さんそれぞれの率直な感想を教えてください。

戌亥:告知もしたし、予約も始まっているのに、リリースされるという実感はまだないんですよね(笑)。いろんな人たちがCDを手に取った瞬間に、"あ、リリースされたんだ"って実感するタイプなので。ただ、聴いた人がどんな感想を持ってくれるのかな? とワクワクはしています。私もリリースが楽しみですし、みなさんと同じ気持ちです(笑)。

町田:町田も実感はあまりないんですけど。今まで(Nornisは)シングルしかリリースしてこなかったので、"アルバム"と付く作品は初めてで。それについてリスナーさんも喜んでくれているので、早く届けたい気持ちでいっぱいです。

-『Tensegrity』制作前に、Nornisとして何か達成したい目標などは掲げていましたか?

町田:Nornisとしては......。

戌亥:支え合う?

町田:うん、ふたりの歌声で支え合って、また新しいNornisの世界観を見せられたらなぁと思っていました。

戌亥:歌のテーマとして、お互いの良さを引き出したり、支え合ったりっていうのはあるんですが、制作中は、それ以外の部分も支え合っていましたね(笑)。毎日のように連絡を取り合っていたし。喋らない日がなかったよね。

町田:そうだね。

戌亥:用事がなくても連絡したり、どっちか忙しいときに、どっちかがカバーしたり。ひとりだったら難しかっただろうな。ふたりだったからできたと思います。

-まさにインタビューでも支え合っている様子が見えますね(笑)。では、Nornis結成後も、おふたりはそれぞれソロでも活動されていますが、その活動は今作に何かしら反映されていると思いますか?

戌亥:Nornis結成前からひとりで動くことが多かったし、ソロ1stミニ・アルバム(2023年11月リリースの『Telescope』)を作ったりしましたが、ひとりって、気楽ではあるんですけど、Nornis結成後にソロ活動をして、やっぱりふたりでいるときの心強さを感じて。もちろん、歌のニュアンスを合わせるとか、いろんなことをしながら進めるのって難しさはあるんですけど、嫌になる難しさではなくって、そこを乗り越えていくのが楽しいので、改めて町田と一緒に歌っていく楽しさを認識できました。......え(笑)?

町田:(笑)嬉しいなぁと思って。

戌亥:あ、良かった(笑)。

町田:町田は、ソロ1stミニ・アルバム(2023年12月リリースの『The Pages』)で、感情をテーマにしていて、今作でもそういう感情の表現を意識して歌ったので、それがどの曲のどの部分かを、ぜひみなさんに聴いて、当ててほしいです。

-そんな今作ですが、亀田誠治さん、螺子アリサさん、夢見クジラさん、ケンカイヨシさんなど、以前から楽曲を提供している豪華な布陣も揃った1枚になりました。こういったみなさんとのコラボレーションは、楽しかったのか、プレッシャーだったのか、刺激になったのか......おふたりにとっていかがでしたか。

戌亥:以前にも楽曲を提供してくださった方もいらっしゃるんですけど、前回と違ったテイストの楽曲なので、すごく新鮮でした。ただ、ほんっとに難しい曲が多くって(笑)! 歌えないんじゃないかというプレッシャーとかはなく、楽曲を提供していただけるのも嬉しいし、楽しいしって気持ちのほうが大きかったですけど......大変だったよね(笑)。

町田:大変だった(笑)! ほんとに、おんなじことを言おうと思っていたんですけど、当たり前なんですが、クリエイターさんは同じでも曲調はまったく違う。そういうギャップを見られたのは嬉しかったですし、そこに対して、どうアプローチするかを考えていくのも、難しかったけれど、楽しかったです。

-ここからは、1曲ずつお話をうかがっていきたいと思います。まず表題曲「Tensegrity」は歌い上げる歌い出し、ふたりがそれぞれの役割を果たすサビ、美しいハモりなど、1曲目から実力を感じさせる楽曲です。ストリングスの壮大な演奏に負けない歌声になっていますが、おふたりは、この楽曲と向き合ってみていかがでしたか。

町田:(夢見)クジラさんの楽曲は、Nornisにとって3曲目になるんですけど、毎回とにかく音域が広くって、そこが一番難しいところなんですけれど、力技で乗り切って。そのうえで、テーマである"支え合うこと"や"共存"に関しては――我々は歌うたびにシンクロ率が上がっているし、音楽活動以外で遊びに行くときに発言が被ることもあるので、そういう仲の良さがいい感じに作用しているんじゃないかな? と思っています。

戌亥:でも、とにかく大変ではありました(笑)。町田が言っていたように、音域が上に行ったり下に行ったり、とにかく忙しくって! でもNornis結成から約2年で、この部分は(相手は)こんなふうに歌うんじゃないか、(自分は)こんなふうに歌うとピッタリハマるんじゃないかってわかってきて、そういう噛み合ったポイントをたくさん聴けるのが「Tensegrity」だと思いますね。

-ちなみに、この楽曲ってどれくらい練習されたんですか?

戌亥:レコーディングの前にめちゃくちゃ練習したよね、個人的に。

町田:そうだね。お互いに家でめちゃくちゃ練習しました。レコーディングのときは、それぞれの歌い方を予想してきているので、うまく噛み合ったと思います。

-個々で練習してきたとはいえ、おふたりで練習せずとも、これだけのグルーヴをレコーディングできたというのが驚きです!

戌亥:文面で共有はしていたよね。"ここが難しい"とか。

-なるほどね。2曲目「Deep Forest」は、亀田誠治さん作詞作曲のポップな温かみのある楽曲です。おふたりの声が重なり合って、想いをひとつにしているメッセージ・ソングに聴こえてきました。なのでぜひ、この楽曲に込めた想いを教えてください。

戌亥:Nornisの楽曲の中でも歌詞がストレートで、書いていただいた言葉のままに想いを込めたんですけど、ふたりで並んで歌っているイメージでした。収録自体はひとりずつやったんですけど、一緒にいてくれて一緒に歌っているみたいな気持ち。心強い曲というか。

町田:この曲は、以前亀田さんに書いていただいた「Transparent Blue」(2022年リリースのシングル表題曲)のアンサー・ソングと聞いていたので、アンサー・ソングらしくなるように明るく強く歌いました。

-メッセージ・ソングに聴こえてきたので、歌詞の"君"が戌亥さんと町田さんお互いのことなのか、リスナーのことなのか、いろいろ想像しながら聴いていたんですけれども、これは、それぞれの解釈にお任せという感じでしょうか(笑)?

戌亥:(笑)歌うときの気持ちや場面でも(意味合いは)変わってくるのかなぁと思っていて、その時々の自分の大切な人、いろんな人に当てはまると考えています。収録のときに関しては、私は一番身近な町田に向けてというか(笑)。

町田:一緒に歌っている感じでね。特に意識はしていなかったんですけど、言われてみたら、パッと思い浮かぶのはとこちゃんかなぁと(笑)。

戌亥:ライヴのときはね、目の前で聴いてくれる人が"「君」って自分のことかも!"って思ってくれたら嬉しいです。

町田:たしかに! めっちゃいいな、それ。