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INTERVIEW

Japanese

町田ちま(Nornis)

町田ちま(Nornis)

Member:町田ちま

Interviewer:高橋 美穂

にじさんじに所属するVTuberであり、ヴォーカル・ユニット Nornisでも活動する町田ちまが、1stミニ・アルバム『The Pages』を完成させた。町田ちまは、16歳の高校1年生。ひとり暮らしは寂しいので、ゴンザレスいう名前のハムスターと一緒に暮らしている――というかわいらしい背景からは想像できないほど、その歌声は圧倒的。今作でも、草野華余子が作詞作曲した「ひとひらの未来」、児玉雨子作詞/未知瑠作曲の「苛性瑠璃色真夜中」などといった、錚々たるクリエイターが提供した楽曲を堂々と歌いこなしている。楽曲の世界観に没入し、聴き手の感情に寄り添う、その魅力とは? 徹底的に訊いた。

-『The Pages』が完成した、今の率直なお気持ちから教えてください。

デビューしてからずっと、自分だけのCDやアルバムを作りたいと思っていたので、今回まさに町田ちまにしか作り出せない空気感がある、"感情のCD"を完成させることができたので、とっても嬉しいです。周りの人からも"歌の感情表現が上手だね"って言われるので、今回の5曲はそれぞれ違う感情をフィーチャーして。それがみんなに伝わったらいいなと思っています。

-プロフィールにも"歌手になることが夢で日々歌の練習に励んでいる"と書かれていますし、かなり達成感があるんじゃないんですか?

嬉しい感情でいっぱいなんですけど、これがゴールではないので。これからも、いろいろやっていきたい気持ちです。

-完成直後なのに、すでに"ゴールではない"と思っていらっしゃるんですね。

はい(笑)。

-すごいなぁ。先ほど、"感情のCD"っておっしゃっていましたが、町田さんご自身は、そもそもシンガーとして感情表現を意識されていたんですか?

それが、実はなくって。強弱をつけるように歌ってはいたんですけど、そうしたら"ちまちゃんって感情表現が上手いよね。描写が浮かんでくるよ"みたいなコメントがいっぱい来て、"そう......なんだ"って。そこから意識するようになりました。

-『The Pages』のテーマは"「君」のことを想い芽生えた感情から生まれた5つの物語"ということで、これはどういうところから生まれてきたんでしょうか?

スタッフさんと相談しながら決めました。人によっては、感情を表に出すのが苦手だったり、芽生えた感情をぐっと心にとどめてしまうこともあると思うんですけど、そんな人たちにこのアルバムが寄り添って、少しでも感情を表に出す手助けができればと思っていて。なので、ひとつひとつの感情を楽曲を通して、物語という形で表現しました。

-今のお答えと繋がってくるかもしれませんが、"The Pages"というタイトルの由来は、どういうところにあるんでしょうか?

"物語"というキーワードが出てきたときに、タイトルもその世界観に通じるものがいいなと思って。スタッフさんとも相談しつつ、様々な感情の物語という意味を込めて"The Pages"に決定しました。

-その世界観を生かすような、錚々たるクリエイターさんが参加されていますが、町田さんご自身はどう感じていらっしゃいますか?

本当に光栄だし、嬉しい気持ちでいっぱいです。町田から"この方にお願いしたい"ってスタッフさんに伝えたり、逆にスタッフさんから"このテーマに合うクリエイターさんはこちらだと思います"ってご提案をいただいたり。みんなで協力してこの最強の布陣で固めることができたので、自信があります。

-プレッシャーは感じませんでしたか?

プレッシャーは......尊敬する方々ばかりなので若干はありましたけど、それよりも制作していただいたことに対する嬉しさや、それをみんなに届けられる嬉しさのほうが大きいです。

-制作やレコーディング、いろいろなことがあったと思うんですが、特に思い出に残っているエピソードはありますか?

一番思い出に残っているのは「背後に注意」の収録のときに"レコーディング・ブースを「背後に注意」っぽくしておきました!"って言われて、どういうこと? ってブースを覗いてみたら、全体的に薄暗くなっていて(笑)。スタッフさんが"どうですか?"って聞いてきて、それが面白かったです。初めてそういうことをされたので、嬉しかったですね。

-すごい(笑)。やっぱり、そういうふうにムードを作っていただくと、気分も乗って歌えましたか?

もちろん(笑)。

-ここからは、今作に収録されている楽曲について、1曲ずつうかがっていきたいと思います。まずは「名前のない感情」ですけれども、歌始まりで、1曲目から町田さんの感情を伝えるのにぴったりだなって思いました。これを作詞作曲者のユリイ・カノンさんにいただいたときは、どんな印象でしたか?

ユリイさんの楽曲は普段からよく聴いていて。なので、楽曲制作を引き受けてくださると聞いたとき、本当に嬉しくって。ユリイさん節が効いたかっこいいサウンドを入れ込んでいただきつつ、町田に合う世界観で、歌うの楽しみだな! って思いました。

-歌い出しから"人生の終わりに 何を思うかな"というずっしりとしたフレーズがありますが、どんなことを思いながら、考えながら歌いましたか?

今作の全曲が、先ほどおっしゃっていただいたように"「君」のことを想い芽生えた感情から生まれた5つの物語"というテーマになっているので、君に向けて歌いつつも、この楽曲に関しては、夢にしがみつく町田自身の気持ちを込めて歌いました。

-それこそ、感情が込めやすかったんじゃないんですか?

はい、すごく込めやすい歌詞だったので、歌いやすかったです。

-で、先ほど話題に上った「背後に注意」ですが、雰囲気作りをしたくなるくらいの世界観がある楽曲だと思いました。こちら、作詞作曲編曲のなきそさんにいただいたときは、どのように思いましたか?

率直に、夢かと思うぐらい嬉しくて。そもそも、なきそさんの「ド屑」のカバー動画を投稿させていただいたこともありますし、なきそさんの楽曲の独特な世界観、雰囲気が大好きなので、自分だけの楽曲をいただけて、夢かと思うぐらい嬉しかったです。

-1曲の中で曲調や歌い方が変化したり、卓越した表現力が必要な楽曲だと思ったのですが、どんなことを考えながら取り組みましたか?

この曲は、怒りがテーマになっていて。でも、ただただ強い怒りではなく"あのさぁー、最近、こういうムカつくことがあって......聞いてる? お前のことだけど"みたいな、静かな怒り、からの急に背後から刺すみたいなイメージで歌いました。

-"背後に注意"、"吐いたらご自由に"っていう、小気味いいんだけど、率直に言うとホラーやサスペンス的なスリルを感じる楽曲ですよね。

そうですね(笑)。なきそさんの作る歌詞ってすっごい中毒性もあるし、普通は思いつかないような組み合わせも多いので、今回もそういうところを取り入れていただきました。

-スリリングな楽曲が町田さんのピュアな声で歌われることで、よりヒヤッとする感覚がありました。

最初は姿が見えないけど、後半に行くにつれて聴き手の背後にこっそり、そーっと近づいて、最後は襲いかかるぞ! ぐらいの距離感で歌いました(笑)。

-だからヒヤッとしたんですね(笑)。作詞作曲はクリエイターさんに委ねつつも、歌声で物語を繊細に表現されているんですね。

嬉しい! ありがとうございます。距離感とかは大事にしています。