Japanese
mihoro*
Interviewer:吉羽 さおり
「コドモノママデ」(2020年リリースの配信シングル)や「分かり合えないよ」(2021年配信リリース)など、10代から20代へと変わりゆくときの心の機微や、少しずつ形が変わっていく誰かとの関係性などを、ハッとするようなリアルな言葉で歌へと綴るシンガー・ソングライター、mihoro*。前ミニ・アルバム『love is alive』(2021年)から約3年の時を経てリリースとなったフル・アルバム『May you be happy』は、心の裏側や毒っぽい本音、強がりなところも垣間見せつつも、私は私という凛とした、そして自由で伸びやかな呼吸感がある作品となった。バンド・サウンドを基調に、雲丹亀卓人(ex-Sawagi)、ESME MORI、湯浅 篤などの手による幅広いアレンジも加わって、より広がったmihoro*の視野の鮮やかさが伝わる内容だ。6月にはこちらも約3年ぶりとなるバンド・セットによるワンマン・ライヴ"Oneman Live「How to be happy」"を控えたmihoro*に、前作からの時間とアルバム制作について話を訊いた。
-ミニ・アルバム『love is alive』以来、約3年ぶりのフル・アルバム『May you be happy』が完成しました。シングルとしてリリースされてきた曲もありますが、アルバムにするにあたっては何かテーマ性、イメージ像はありましたか。
こういうアルバムにしたいとか、こういう歌詞の方向性でみたいなものは決めていなかったんです。ただ、サウンド的にはバンド・サウンドがいいなとかやんわりとしたものだけはありましたね。
-幅広い内容にもなっていると思いますが、前作以降、曲作りで新しいアプローチを試したり、やってみたいと実現したりしたことなどはありますか。
今回初めて、2曲でコライトをしているんです。いつもは自分で0から1を作っていたんですが、そこを誰かと一緒に作るというのが初めてのことで。初めは、コライトがしたいですっていう感じではなかったんですけど。やってみると、自分がいつもやっている感じとは違う感じで作れたのが良かったなと思っています。
-「愛していた、これは本当」や「アネモネ」がコライト曲ですね。「愛していた、これは本当」は、これまでも編曲を手掛けてきたライヴのバンド・メンバーでもある雲丹亀卓人さんとのコライトで、いいラリーができそうですね。
ウニさん(雲丹亀)は信頼しているので。私はあまり喋るのが上手じゃないというか、こうしたいとうまく伝えられないところをウニさんが汲み取ってくれているなと感じてるんです。「愛していた、これは本当」に関してはお願いする段階から、ウニさんの好きな感じでやってくださいって丸投げな感じではありましたね。ただ、「アネモネ」を作ったときもそうだったんですが、喉を壊してしまって歌えない時期の制作で。普段ならいただいたデモに実際に歌を入れてやりとりをするんですけど、キーボードでメロディを打ち込んでお返しをするという感じだったんです。それで時間がかかってしまったところはありました。
-歌えないとなると普段と違ってもどかしさもありそうですね。
キーボードで弾いて作ると、音符的には一致するんだけど、これを実際に歌ったらどうなんだろう? ってわからないまま進めていった感じが最初の方はありましたね。
-「アネモネ」はまさに、普段のメロディ・ラインとはまた違った感触や新鮮さを感じていたので、どのように作ったのかなと思っていました。
「アネモネ」の方が先に作っていたんですけど、それこそ初めて自分の声ではなくキーボードでメロディを作るというのがあったんです。自分で作るときは歌っていて気持ちいいことが優先なんですけど、キーボードでやると自分の癖が出ないので結構違ってくるというか。歌っていて気持ちがいいじゃなくて、聴いていて気持ちがいいという方で作れたから、いつもとは違う感じになったなと思いました。
-「アネモネ」でコライトをした湯浅 篤さんとは、どのようなやりとりがあったんですか。
湯浅さんが今まで作ってきた曲は聴いていたんですけど、実際に湯浅さんとお会いしたことはなくて、どんな感じなんだろうなってところからのスタートだったんですよ。曲のイメージとしては、夏の夜っぽく、冬っぽく......と言うと矛盾しますけど(笑)、ちょっと寂しい感じでというオーダーをしていたんです。
-繊細なストーリーにストリングスのアレンジが映えるドラマチックな曲になりましたね。この歌にある、終わりが来てしまうから始めるのが怖い感じというのは、mihoro*さんの思いとしてずっとあるものですよね。
そうですね、ミニ・アルバム『love is alive』に「分かり合えないよ」という曲が入っているんですけど、その歌詞でも同じことを言っているんですよね。「分かり合えないよ」は20歳のときに作った曲だったんですけど、今年24歳になるんですが、変わらずというか。例えば誰かと一緒にいて、今すごく楽しいってなっているとき、帰り際とかではなくその楽しいと思った段階で、あと何時間しかないんだなと考えてしまうんですよね。
-楽しいのピークでもう終わりのカウントダウンが始まってしまう。
そういうのを思っちゃうんですよね。それは「分かり合えないよ」から変わっていなくて、今も思っているんです。
-「アネモネ」などアルバム全体を通して恋愛の曲が中心で、内容的にも私はこうだからとはっきりとした思いがあったり、決意や決断をしたりという曲があるなか、ラストに収録された「えっか」では、恋愛曲ではないですがある種の曖昧さも許すような感じも出てきていますね。この感じもまたいいなと思ったんですが、「えっか」はどんな想いで作った曲ですか。
「えっか」は『Re:』(2020年リリースのミニ・アルバム)や『love is alive』を作っていた頃ではきっと言わないような言葉だと思います。大人になったという言い方がいいのかわからないですけど、これは"いい意味で"と付けるのが大事なんですが、いい意味で妥協ができるようになった感じがあって。自分に対しても人に対しても、執着しすぎないようになったなというのがあるんです。この曲を作っていたときの口癖だったんですよね、"まぁ、えっか"っていうのが(笑)。そのおかげで、"えっか"というタイトルで作って。
-その"まぁ、えっか"は自分に暗示を掛ける感じもあったんですかね? そうでもしないといっぱいいっぱいになってパンクしちゃうような感じがあるとか。
自分に言ってるという感じですね。本当に思っていなくても、"まぁ、えっか"って。妥協もひとつの方法ではあるなって知ったというか。
-mihoro*さん自身、今までの曲からすると何にしても白黒はっきりつける感じがありそうでしたもんね。
はい(笑)。はっきりして! っていう感じだったので。やんわりで、ぼんやりでもいいんじゃない? っていう考えも持てるようになったのかなと思いました。
-"まぁ、えっか"が口癖となっていたのはきっかけがあってのことですか。
身近にいた人が言っていたんでしょうね。歌詞にも"なんとかなるさが口癖/いつの間にかうつってた"ってあるんですけど、そのままというか。周りにいる人の口癖がうつっちゃう感じがあって、"えっか"っていいんだなと。
-少しだけ自分に余裕ができるような考え方もできるようになって、ちょっと日常も楽になるなというのはあるんですか。
自分の性格上、"はっきりしないと"とか"ちゃんとやらないと"とかいうのがあったんですけど、みんなそんなに100パーセントでやってないんだってことに23歳で気づいた感じでしたね(笑)。私は、できないならやらないっていうくらいだったので。考え方がちょっと変わったかもしれないです。少しずつではありますけどね。
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