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INTERVIEW

Japanese

ぶっ恋呂百花

2024年02月号掲載

ぶっ恋呂百花

Interviewer:宮﨑 大樹

なんだかわからないけどキレている、みたいな状況がなくなって言語化できるようになったし、発散に繋がっていますね。怒っているけど健康になった


-前半にリリースされた「あんたのラブドール」、「殺Kiss」は、先ほど話も出ていたようにかなり怒っていますよね。歌詞に"(笑)"と入っていても絶対に笑っていない、顔文字が笑っているけど絶対に笑っていない、そんな怖さがあります。

たしかに(笑)。

-このあたりの歌詞は衝動的に書き殴っていったんですか?

衝動的でしたね。打ち込みを始めたときの「とき・めき・馬鹿・みたい」(2022年10月リリースのデジタル・シングル)とか「Make love... (feat. 眉村ちあき)」(2022年12月リリースのデジタル・シングル)とか、そこはhonninmanという人にトラックを手伝ってもらっていたので、全部自分でやるぞとなったのが「あんたのラブドール」なんです。最初のころの曲は荒々しくて、逆に今は書けないかもしれない音が出ていて、すごく怖いですよね(笑)。ライヴでやっていても音がすごいんですよ。男性からすると気まずい歌詞ですよね(笑)。自分は男性性みたいなものを押しつけられて嫌な気持ちになることが多くてこの曲を書いたんですけど、性別関係なくみんなに当てはまるから、もし何か怒っている人がいたら、この曲を聴いて一緒に気持ちを感じてくれたら嬉しくて。だから別に気まずくならなくていいよってブログ書いたことがありますね。大きく見て"搾取"みたいテーマで書いたので、みんながなんとなく思い当たる節があるんじゃないかなと。

-そういう怒りは作品になることで昇華されますか?

あると思います。アイドルのときは、どこでどう発散しても出し切れないものがあって、かなりメンタルをやられて仕事を休んじゃったり飛んじゃったりしたこともあったんですけど、今は曲にすると自分の気持ちを整理できるんです。なんだかわからないけどキレている、みたいな状況がなくなって言語化できるようになったし、発散に繋がっていますね。怒っているけど健康になった。

-健全に怒れている。

そうですね。前は10代だったからというのもあるかもしれないけど、人にも自分にも当たっていて。今は曲を作れば完結できるので健全ですね。

-今回の12ヶ月連続リリースはその時々の心の状態が楽曲になっていて、序盤は怒っているんですけど、「カス」や「I'm crazy」になると歌詞が怒りを通り越して呪いみたいになっていますね。

(笑)そうなんですよ。嫌な奥深さが出てきた感じがして。その時期はねちっこくなっているんですよね。最後のひと絞りみたいな。私はこういう曲のほうが怖いかもしれない。

-「カス」の歌詞で"目を見開いて嫌なこと言うから/出てくるものを堪えて/黙ってパッタイ食べてたの"って、呪いのような曲なのにパッタイという響きがかわいい食べ物が出てくるのが面白くて。

(笑)そういうところでキャッチーさを出していますね。"100怖いです"みたいな曲よりは、そういう部分を入れるのが好きで。抜け感っていうんですかね(笑)? そういう隙みたいなものを入れるのが好きなんです。起こっている場所は違っていても、"そういえば今日パッタイ食べたな、歌詞に入れよう"みたいな。なので実体験や自分の身の回りで起きていることを掛け合わせています。

-「I'm crazy」も前半は重くて病んでいるんですけど、後半で明るくなっていくんですよね。12ヶ月連続リリースの中でもターニング・ポイントというか、これは木下さんの中でも何か変化があったのかもしれないなと。

トラックを作ることにちょっと慣れてきたときなのかな。今までは曲を聴いても何が鳴っているかわからなかったものが、粒になって聴こえてきたりして、そういう技術的な力みたいなものがついてきた時期だったんです。なので、"こういうのをやりたい"という想いが出てきて、それを組み合わせた結果、こういう情緒不安定な感じの曲に仕上がったんだと思います。私もこの曲の展開がすごく好きです。もともと3つ、4つがくっついたような曲が好きで、小学校高学年とか中学校くらいのときにニコニコ動画とかすごく好きだったんですよ。そういうものが出てきたなって。

-内面の変化があったというよりは、トラックメーカーとして変化があったわけですね。それに伴って、この先のリリースでは曲の雰囲気が変わっていきますよね。

そうですね。見せたい自分とかアーティスト像みたいなものが少しずつ固まってきていて、ライヴに入れたい曲とかを考えながら作曲できたのが、たぶんこの時期だったんじゃないかなと思います。「カス」まではビートがボコボコ鳴っていて、自分でもちょっと変化が欲しかったというのもあるし、挑戦しだしたのがこの時期だったのかなと。

-後半は正統派バラードみたいな曲やビートに重きを置いたような曲が増えてきますよね。この名義でバラードを作ることには、あまり抵抗がなかったですか?

あ~、この名義で始めたときは「あんたのラブドール」とか、そういうものが原点で、ああいう曲を作ろうと思ってこの名義にしたんですけど......たぶん飽きちゃったんです(笑)。ライヴを意識するとちょっと他のも欲しいなという気持ちがあったのと、木下百花名義の「悪い友達」(2021年リリースのデジタル・シングル)みたいな曲が自分で好きなので、ああいうバラードとか落ち着いた曲を今の自分が作るとどうなるんだろう、という好奇心もあって作り始めた感じですね。