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INTERVIEW

Overseas

KULA SHAKER

2022年06月号掲載

KULA SHAKER

Member:Crispian Mills(Vo/Gt)

Interviewer:山本 真由 Interview interpreted and translated by 川原 真理子

-今作は、アートワークを見ると、キリスト教とインド神話の世界観が合わさったようなイメージになっていますね。ロックとインド音楽を掛け合わせ、西洋的思想と仏教的思想を併せ持ったKULA SHAKERの音楽性を象徴するようなアートワークですが......。

いや、あれは単なるアートワークだよ。僕たちみんな、ちょっと支離滅裂になっているんじゃないかな。僕は自分を西洋的だとも、東洋的だとも思っていない。僕は常に普遍的なものに目を向けている。僕たちの文化で語られている物語の多くは、言語は違っても同じことが語られているよ。でもアルバムは、僕たちが心の問題を抱えていて、破壊された現実観を見直さないといけないことを間違いなく示唆していると思うね(笑)。まぁ、それはそれで構わないけど。

-音楽的には、デビュー作との繋がりが深かった前作と比べ、インド音楽を直接取り入れるというよりは、インド音楽の影響を受けた60年代から70年代のサイケデリック・ロックが主軸となった印象です。

そうだね。インド音楽からの影響がすごくわかるところもあるけど、インド音楽はサウンドやオーヴァートーンの効果を敏感にしてくれることもある。すべてのサウンドには人の意識があって、それをリスペクトさせてくれるんだ。"愛してるよ"と相手に言うと、それが振動とエナジーを生み出すんだよ。音楽は単なる微妙な振動なのに、人の気持ちや考えに影響を及ぼす。まさにマジックだ。インド音楽は、その仕組みやリスペクトの仕方を理解する助けになる。単に音符やスタイルだけではなく、音の振動が人の意識にいかに影響を及ぼすかを理解するんだ。音の振動は僕たちの周りにあって、それが自分の気持ちを変えられることをリスペクトすべきなんだよ。

-音楽的な方向性は、最初から決まっていたのですか? それとも、楽曲を作っていくなかで定まっていったのでしょうか?

僕たちが集まるとわかるんだけど、バンドとしての主な方向性は常に、精神的な繋がりが影響しているんだ。でも正直言うと、僕の人生における最大の影響は、僕の子供たちなんだよ。僕には10歳と12歳の子供がいてね、ふたりとも音楽をやっている。ひとりは素晴らしいドラマーで、もうひとりはパンク・ロッカーで、ふたりともあらゆる音楽が大好きなんだ。僕が子供たちを洗脳したとは言わないけどね(笑)! 彼らにいいレコードを紹介することはあったかもしれない。"これを聴いてみなよ"って。でも彼らは、そもそも僕が音楽を始めるきっかけになったすべてのことの良さを再認識させてくれたんだ。僕は下の子供にずっとギターを教えているんだけど、ギターに対する彼の愛を見ていると、ギターに対する僕の愛が再燃する。このアルバムには久々に、興味深いギター・プレイ、カラフルでエキサイティングなギター・プレイがたくさん入っていると思うけど、それは子供たちと一緒にプレイしているからなんだ。子供たちは僕を若くしてくれる。彼らはこっちを疲れさせてエナジーを奪うけど、若くもしてくれるんだ。

-冒頭でおっしゃったように、曲作りは別々にリモートで行われたんですよね?

全部が全部そうしたわけではなかった。最初の段階ではデモを共有したけど、最終的にヨーロッパに押し入って、ベルギーにある僕たちのスタジオに行って、全員がひとつの部屋に集まったんだ。素晴らしかったよ。

-今作は、レトロなテクスチャーのある音質にもこだわりがありそうですが、レコーディングはどのような環境で行われたのですか?

両方のおいしいとこどりだったよ。デジタルのほうが楽なところはデジタルを使った。2インチ・マシンや巨大なコンソールを入れるスペースはなかったんでね。でも、真空管のプリアンプとかは使ったよ。楽器をデジタルの世界に送るとき、温かみのあるアナログを経由したいんだ。僕たちは昔から、レトロ中毒だからね。学生時代からずっとだよ。僕は16歳のときにAlonzaと出会ったけど、彼は実にレトロでね、まるでロビン・フッドみたいな格好をしていたんだ。

-(笑)本当ですか。

先の尖ったブーツに、大きな襟の灰色がかった緑色のトップスという出で立ちだったんで、文字通りまるっきりロビン・フッドだった。そして当時から、僕たちは昔のギター・バンドや昔のレコードを聴いていたんだ。今は年を取って、今どきのものについていけていないけど、実は昔から今どきのものについていけていなかったんだよ(笑)。

-制作にあたって予想外だった点や、難しさを感じたこと、もしくは逆に思いもよらずうまくいったことなどはありましたか?

もちろん、難しかったのはクレイジーな移動制限だった。絶えずルールが変わっていて、文字通り行き当たりばったりだったので、まるで繰り返し発せられるジョークのようだったよ。僕たちは笑うしかなかった。帰国した際のドーバーの税関では、ゲシュタポ(※ナチス・ドイツの国家秘密警察)みたいな黒づくめの税関職員が謝っていたよ。"我々もどうなっているのかわからない。クレイジーだ"ってね。だから、あれは大変だったな。でもね、一番のサプライズは、ドラマーのPaul Winterhartがコンスタントにどんどんうまくなっていったことだね。今や彼は英国で指折りのドラマーだ。レコーディングするたびに、彼はいつだって新しい技の数々を披露する。本当に素晴らしいドラマーなんだよ。今回も新しいサプライズがあった。恋愛関係と同じで、メンバーの音が未だに新鮮に感じられたり、笑わせてくれたりするなら、それはいいことなんだ。そうだろう? 未だに互いをサプライズさせられて、そして(互いの音を)聴くのが楽しいのであれば、それは健全なパートナーシップだということだよ。アルバムを聴いてみると、彼のドラミングが素晴らしいことがわかる。

-今作のリリース後には、久々のツアーも控えていますね。そして、8月には"SUMMER SONIC 2022"での来日も決定しています。"FUJI ROCK FESTIVAL"には過去4回出演されていますが、"サマソニ(SUMMER SONIC)"は初めてですね。今後の予定も含め、どんなツアーになりそうですか?

とっても楽しみだよ。"SUMMER SONIC"は初めてだし、日本は最初からこのバンドにとってとても重要な国だからね。でも、今回はツアー・サイクルの間隔をあまり長く空けないと思う。以前はツアーと映画の仕事のバランスを取るのに苦労したけど、今はもっといいシステムになっているから、少なくとも毎年ツアーに出かけて、フェスティヴァルに出ながら、映画の仕事のスケジュールや、他のメンバーのスケジュールに合わせられるようになったんだ。Harry(Broadbent/Organ/Key)はセッション・ミュージシャンとして引っ張りだこだし、Alonzaはヨーロッパでバンドのプロデュースを手掛けているから、日程はやりくりしないといけないけどね。

-最後に、日本のファンへメッセージをお願いします。

君たちに会いたいよ。ずいぶん経ったから、早くまた日本に行きたいね。