Japanese
AIRFLIP
2021年12月号掲載
Member:Satoshi(Gt/Vo) Gucci(Gt/Cho) Fujimon(Ba/Cho)
Interviewer:山口 哲生
-「Mayday」もそうですが、アルバム全体を通して、音の抜き差しがすごく効果的といいますか。これまでよりもドラマチックになっている曲が多い印象もありました。
Gucci:僕個人の話にはなってしまうんですけど、一時期、リード・ギターって本当にいるのかなって、ふと思った時期があって。
Fujimon:そんな時期あったんや?
Gucci:自分のパートを否定するみたいな感じなんですけど。それこそRyanにプロデュースしてもらったときに、"イントロにリード・ギターがある、Aメロにもリード・ギターがある、Bメロにもサビにもアウトロにもある、ソロも弾く。どれだけ弾くんだ?"みたいなことを言われて。自分にとって今まではそれが当たり前と思ってやっていたんですけど、そのひと言に結構食らったというか、たしかになと思うところもすごくあったんですよ。それで、今回はアルバム通して、目立つところはバっと耳を引くようなフレーズを意識したんですけど、サビとかは何をやってんのかなっていうぐらい引っ込んだんです。
-それこそ音の抜き差しというか、メリハリをつけるというか。
Gucci:そうですね。歌が一番前に出るようにっていうところはかなり意識してました。
-メリハリはつけつつ、なんていうか、やっぱりすごくギターを弾きたい人なんだろうなって思いました。
Gucci:はははははは(笑)!
-もちろんいい意味でですよ? それこそ、要所要所でしっかりと耳に残るフレーズが飛び出してくるので。
Gucci:良かったです。
Fujimon:我慢してたんやな(笑)。
-応援歌というお話もありましたけど、ポジティヴな印象を受ける曲が多いですね。「Daylight」の"All my life is bright"とか、とてつもない希望を歌っているというか。
Satoshi:そうですね。ギャンギャンに光ってます。
-ですよね(笑)。このご時世だと、言葉の温度感みたいなものをちょっと考えたりするじゃないですか。どれぐらいまでの希望を歌っていいのだろうかという。
Satoshi:あぁ、たしかに。かけ離れすぎていると、自分とは関係ないと思われたりもするんでしょうけど、そこはガン無視して作りました(笑)。強引に連れていく感じっていうか。
-たしかにそういう言葉も大事ですよね。そうやって"これだろ!"って力強く言ってくれる人がいてほしいなとも思いますし。
Satoshi:ありがとうございます。全部肯定してくれますね(笑)。
-いや、実際そうだと思いますよ。そういった希望はありながらも、「Nobody Knows」はマイナー調で、2ビートで突き進んでいく曲で。アルバムをトータルで見たときに、こういう曲も欲しいと。
Satoshi:そうですね。そういう意見があったので作りました。この曲はマイナスな感情を吐き出す歌詞にしてますね。
-"Nobody care"とか"Never feel again"とか。どんどん落ちていくというか。
Satoshi:直訳するとめちゃ暗いんですよ(笑)。今は気持ちが落ちている人もいるので、この曲を聴いて、気持ち的に発散してもらえればなって。
-あと、「No Boarder」は、波の音やカモメの鳴き声が入っていたりして。
Gucci:あれは僕が勝手にやりたくてやってしまったんですよ。
Satoshi:聴いたときにビックリしました(笑)。
Gucci:自宅の録音環境を整えたんですよ。しっかりした音を録れるようにしたんですけど、自分の中でも、今までやっていたこととは違うようなことをしたいなと思って、ちょっとやってみました。
Fujimon:たぶん、バンドマンがアルバムを作るときに、ああいう曲を1曲は入れたくなるっていうあるあるだと思うんですけど、やっときた! って感じでしたね。ちょっと嬉しいというか、AIRFLIPでもこういう曲ができるんやなって。
-この曲はアコギが出てくるパートもあって、イントロ含め、曲のフックとしてしっかり機能していて。そのうえでサウンド感ともしっかり合っているから、今までと違うことをやろうと思って強引にねじ込んだ感じもないというか。すごく自然ですよね。
Gucci:良かったです、そう受け取ってもらえて。
Satoshi:やっぱりバリエーションがあるに越したことはないですからね。それに、最終的に僕が歌詞を書いて歌えば、"このアルバム、なんかガチャガチャしてんな"っていうことにはならないと思うので。それぞれが作ってくる曲に関しては、完全におまかせっていう感じです。
-たしかにそうですね。ソングライターが3人いるからこそ出せるバリエーションは強みだし、それでも統一感が出るのは、やっぱりSatoshiさんの歌が強いからできるところはありますよね。
Satoshi:ありがとうございます!
-楽器隊のフレーズに耳を引かれる場面も多くて。「Overheat」のイントロのギターは、なんていうか、忙しそうですね。
Gucci:だいぶ忙しいですね(笑)。
Satoshi:ライヴでできるのか? っていう(笑)。
Fujimon:あれは、僕がこんなリフがいいっていうのをGucci君に完全に丸投げしたんですよ。それで上がってきたのを聴いたら、"うわ、忙しっ!"って(笑)。でも、自分のイメージしていたものを弾いてきてくれました。
-曲を作るうえでどういうイメージをされていたんですか?
Fujimon:疾走感はありながら、サビでシンガロングしてるんですけど、エモさが入った感じのメロディにしたくて。だいぶ前に作ってた曲なんですけど、今回のアルバムはいろいろレパートリーが豊富だったので、変わり種として、こういうのも入れたいなと。
-エモさのあるメロディが好きだったりするんですか?
Fujimon:もともとは結構ハッピーで、シンプルなメロディが好きなんですけど、AIRFLIPに入ってから、エモさを入れるようになりましたね。そういうメロディをSatoshi君が歌ってくれるとグっとくるので。
-個人的に「Sunset Beach」とか「Water Mirror」のベース・ラインが好きでした。結構ブンブンいわせてますよね。
Fujimon:ありがとうございます! 最近ブンブンいわせてますね(笑)。CD音源だとあんまり聴こえないし、なんかやってるなぐらいに聴こえたらいいなっていう感じではあるんですけど、僕個人としてはすごくアガるんですよ(笑)。このメロディに対して、裏でこんなことをしていて気持ちいい! みたいな。今回のアルバムも結構入れちゃいましたね。
-取材の冒頭に、完成に持っていくまでに時間がかかったというお話がありましたけど、特にどういった部分が大変でした?
Fujimon:メロディを妥協できなくて、こうじゃない、ああじゃないっていうのをずっと繰り返していたんですよ。メロディによってはコードも変わるし、ベースも作れないので、そこの折り合いは結構難しかったですね。とにかく納得がいくまでやりたいし、でもやっぱり終わりの時間もあるしっていう。
-特に悩んだ曲というと?
Gucci:「Rain」ですね。とにかくメロディを大事にしたかったので、サビを最後まで練ってもらっていた感じでした。
Fujimon:もしかしたらこの曲、入らなかったかもしれなかったんですよ。
Gucci:ホントにギリギリだったので。
Satoshi:メロディ自体はちょっと前にできてはいたんですけど、このキーで歌うと結構高いんですよ。かなり頑張らないといけなくて。ただ、この曲はGucciが作ってきて、構成がもうできていたんです。サビ前のリフが結構特徴的だと思うんですけど、あそこありきで作った曲なんですよ。でも、キーを変えたら雰囲気がすごく変わっちゃって。
-あぁ。たしかにメロディも大事にしたいし、あのリフも大事にしたいし。
Satoshi:だからキーを変えられないけど、これ以上、いいメロディが出てくるのかなって。それで何回も練り直したんですけど、結局そのキーで歌ってますね。それもあって、アルバムの中ではこの曲のキーが一番高いです。
-大変かもしれないけど、気持ち良さはすごくありますよ。そして、アルバムを締めくくるのが「New Year's Day」という曲で。ギターはディレイを結構効かせつつも、ベースはゴリゴリしていて、そこに伸びやかな歌が乗ってくるというバランスも良かったです。
Gucci:僕ら、基本的にはポップ・パンク・バンドとは言っているんですけど、Satoshiの声があるんで、ガラっと違うことをしてもハマるだろうなと。それで、まったく違う世界観の曲を作ろうと思って持っていったのが、「New Year's Day」なんですよ。ああいうディレイもここまでがっちり使うのは初めてなので、この曲も新しい挑戦ではありますね。
Fujimon:この曲、好きなんですよ。サビのメロディが個人的にめっちゃ気に入っていて。アルバムを最後まで聴いちゃいますね、この曲を目当てに。
-歌詞もいろいろ想像させられるというか。"A little piece of paper with our rings on the table."とか、ちょっと切なさがあるけど、終わりと始まりみたいな。
Satoshi:あ、この曲は基本的に始まりのことを歌ってます。
-......なるほど! 思いっきり勘違いしてました(苦笑)。失礼しました。
Satoshi:捉え方はそれぞれですからね(笑)。想像を膨らませてもらえれば。
-完成させてみて、改めてどんな感覚があります?
Fujimon:結構バラエティに富んでいて、飽きないなっていうのがまず大きくて。自分でもずっと聴いているんですけど、曲を飛ばしたくなるようなこともないですし、12曲もあるのにすぐ終わっちゃうから、自信作ができた感じはありますね。聴いてくれた人がどんな反応をしてくれるのか、ライヴでどういう楽しみ方をしてくれるのか、めちゃめちゃ楽しみです。
Satoshi:"打倒「Brand New Day」"を掲げて作って、単体であの曲を超えられたかどうかはわからないですけど、アルバムとしてはマスターピースができたかなと思います。
-アルバムとしても、それぞれの曲も間違いなくいいものになっていますけど、「Brand New Day」を超えるためには、この曲たちをライヴでやっていかないといけないですからね。
Satoshi:そうですね。やっぱり曲はライヴで完成すると思うので。
-それこそアンセムって、現場でお客さんと一緒に築き上げていくものでしょうし、挑戦的な意味を込めた「New Year's Day」で盛り上がったら最高でしょうし。
Fujimon:そうですね、"Satoshi"って書いてあるうちわとか持ってもらって。
一同:はははははは(笑)。
Satoshi:もう全然違うバンド(笑)。
-しかも全然そういう感じの曲じゃないという(笑)。12月18日から来年3月まで"RED Tour 2021-2022"を開催されますが、2022年はどんな年にしたいですか?
Satoshi:今は落ち着いているけど、コロナの状況もまだどうなるのかちょっとわからないところがあって。そういうなかではあるけれど、やりたいことはいろいろと構想中ですね。ツアー以外でもやっていきたいものはありますし、去年1年間動けなかったことを、ここからやっていきたいです。
Gucci:いろいろなことができなかったぶん、よりアグレッシヴにやっていきたいですね。状況がどう変わっていくかわからないですけど、自分たちがやりたいことは変わらないので。思ったことをどんどん貫き通していきたいなと思います。
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