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INTERVIEW

Japanese

KALMA

KALMA

Member:畑山 悠月(Vo/Gt) 斉藤 陸斗(Ba/Cho) 金田 竜也(Dr/Cho)

Interviewer:秦 理絵

その瞬間に抱いたよろこびも葛藤もありのままに歌にしてきた北海道発の3ピース・バンド、KALMA。昨年メジャー・デビューを果たした彼らが、待望の1stフル・アルバム『ミレニアム・ヒーロー』を完成させた。ピアノやストリングスといった様々な楽器を取り入れ、これまで以上にバラエティ豊かな楽曲が並ぶ今作。だが、同時にその根底にはロック・バンドが持つ衝動や勢いがこれまでと変わらずに貫かれている。あたりまえの日常をコロナに奪われる困難を跳ねのけ、ヴォーカルの畑山悠月は、「めぐり」という曲で"生きててよかった この時代でよかった"と歌っている。泣きたい夜があることも、この道の正しさに迷う日があることも百も承知で、それでも日々を笑い合うためのアルバムを作り上げた彼らは、まさにミレニアム世代のニュー・ヒーローと呼ぶのに相応しいだろう。

-KALMAのポテンシャルをすべて出し切った1stフル・アルバムだなと思いました。

畑山:いいアルバムでしたか?

-ええ。曲単体も聴き応えがあるけど、とにかくロック・アルバムとしての構成がとても良かったです。"これはアルバム曲だよね"っていう短い曲もあるし、全体のバランスがとれてるから、14曲でもまったく飽きない。

畑山:嬉しいです。ありがとうございます。

-初のフル・アルバムの制作は振り返ってみて、どうでしたか?

畑山:フル・アルバムを作ったことがないので、最初は気が遠くなるというか、ゴールがはっきりとは見えない感覚でした。でも、「パリラリラ」とか「逃げるなよ、少年!」とかは、前作のEP(2020年リリースの『La La La E.P.』)にも入ってたり、今年リリースした配信シングルも収録されるから全部が新曲ではないので。意外と一曲一曲慎重に作れたのかなと思います。行き詰まることもなくはなかったけど、すごく辛かったとかもなく。好きなように楽しく取り組めましたね。

斉藤:いざ、"やるぞ"ってなったら、意外と今までのEPとかシングルを作っていく作業と同じような感じで、どんどん曲が増えていったんですよ。今思えば、すごく必死っていうよりは、いつも通り3人でスタジオに入って曲ができていったので。

-すごく自然だった。

斉藤:そうですね。気持ち的には"アルバムを作るぞ"じゃなくて、1個のいい曲がどんどん積み重なって、14曲のアルバムができたんだなっていう感じがします。

金田:一曲一曲時間をちゃんと使って、細かいところまで考えながら完成していきましたね。構成がしっかりしてるから、自分でも満足できる作品ができたなと思います。

-まず今作は"ミレニアム・ヒーロー"っていうタイトルが最高だなと思いました。

畑山:ありがとうございます(笑)。

-このタイトルは、「Millennium Hero」とか「希望の唄」みたいな、"ヒーロー"をテーマにした収録曲ができてから付けたんですか?

畑山:そうですね。インパクトがあるなと思って。みんなそうだと思うけど、僕は"自分がすごい"とか"ヒーローなんだ"って思えないんですよ。だから、「希望の唄」では、こんな僕だけど、みたいな内容を歌ってて。たとえ世界から唄が消えても、いつだって僕はヒーローみたいに希望を唄っていくっていうのは、歌だから言えるところがあるんです。今回のアルバムのタイトルを決めるときも、"ミレニアム・ヒーロー"っていうのは、僕が出したんじゃないんですよ。陸斗かな。で、ちゃんと考えたら、"僕らがヒーローだ"って自分たちで発信していくことが、かっこいいんじゃないかなと思うようになったんです。もっと自信を持っていいのかなって。

-陸斗さんは、どうしてこの言葉がいいと思ったんですか?

斉藤:まず、"ミレニアム"というのが、僕らは全員2000年生まれなのでぴったりなんじゃないかなって。"ヒーロー"は、僕らも高校を卒業して成人になったので、誰かの目標になれるような、ヒーローみたいな存在になりたいなっていう想いで付けた感じです。

-タイトル・トラックの「Millennium Hero」は、どのタイミングでできたんですか?

畑山:最後のほうですね。最後にできたのは「めぐり」なんですけど。その前ぐらいです。札幌で、3人でスタジオに入って、別の新曲を詰めてるときにセッションで作ったんですよ。今まで休憩時間とかにセッションをしたことがなかったんですけど。スタッフからセッションで作ってみたらっていう提案もあって。でも、僕はその場で決めるみたいなのがあんまり好きじゃなかったんです。

-じっくり考えて作りたいんですね。

畑山:曲だけじゃなくて、何か考えを言うときもその場では決められないんですよね。1回家に持って帰りたいタイプなので。でも「Millennium Hero」は、竜也がドラムを叩き始めたところに、僕がギターをのせて。このコードいいねってなったのでそのフレーズを繰り返して、そこに陸斗がベースをのせてきて、という感じで作りました。メロディもほぼその場でつけたんですよ。帰ってからちょっと直しただけなので、10分~15分ぐらいでほぼほぼ作った曲なんです。

-KALMAの曲としてはテンポが速いほうじゃないけれど、すごく高揚感がありますよね。

畑山:イントロ感もそうだし、サビでぐわーってなる感じも、ザ・1曲目だし。もともと僕の中では「夏の奇跡」を1曲目にするつもりだったんですけど、これができて変えたんです。

-ふたりは初めてセッションで作ってみて、どうでしたか?

金田:もともと僕はセッションが好きだったんですよ。でも、誰もやってくれないので、たまに陸斗がベースを弾いてるところに勝手にドラムをつけたりしてるんですけど(笑)。初めてセッションで作ったのはすごく楽しかったです。

斉藤:悠月も言ってましたけど、この曲ではコードリフを入れてて。シンプルな繰り返しの曲って、かっこいいんだなというのは感じました。シンプルだからこそ演奏していても感情がのるんですよ。3人の一体感が出せた曲だなと思いますね。

-そうやって作り上げたサウンドに、次は自分がヒーローになる、というような想いを綴っているんですよね。

畑山:まだまだ大人になり切れてないというか。そういうヒーローですよね。

-アルバム全体としては、かなり振り幅が広がりましたよね。

畑山:はい。全体を通してこれまでの僕らがやってたような激しい曲が多くはないんですよ。「モーソー」とか「逃げるなよ、少年!」とか、KALMAらしさを感じてもらえる曲もありますけど、それ以外の曲はドッシリ構えられてる。曲の良さを優先してるんです。今までKALMAがやってきたこととは違うから、ずっと聴いてくれる人たちに対して、"どう受け取られるかな?"みたいな不安と期待があります。

-それでも、いい音楽を突き詰めようっていう方向に振り切れたのはどうしてですか?

畑山:僕自身すごくお客さんの声を気にするタイプなんですよ。ふたりは全然気にしないんですけど、自分は1時間に1回にエゴサしちゃうくらい(笑)。「夏の奇跡」で初めてストリングスを入れたときも、いろいろな反応があって。その中で"3人がやりたいことをやるのが絶対いい"っていう声もあったので、そういうのを見て、僕らはやりたいことをやるべきだよなって改めて思ったんですよね。もし、逆に僕がKALMAのお客さんだったら、"今、KALMAはこういうことをやりたいんだな"って全然受け入れられる。自分が好きなバンドに対してそう思います。これまでも、誰かにこうしてほしいと言われて方向性を変えたことはないですね。

-振り返ってみると。

畑山:『イノセント・デイズ』(2018年リリースのミニ・アルバム)に入ってる「年上の、お前」とか、あのへんの曲って人気なんですけど、今はああいう曲を書くつもりはないんです。メジャー・デビューして、初めてフル・アルバムを出すタイミングでブレさせる必要はない。昔から3人でやってきたことをそのままやっていきたいっていう感じですよね。

斉藤:今回のアルバムで悠月がそう思ったりするのは、バラードとか、ポップな曲が増えたこともあると思うんです。僕らは普段そういう曲も聴くし、好きだからこそ自分たちにも取り入れたいなと思うんですよ。いろいろな曲調があるアルバムって楽しいし、どんどん興味が出てくると思うんですよね。次、KALMAがどんな曲をやるのか、とか。そういうことも考えて、僕は、不安とかはないです。

金田:今悠月が書いた曲が絶対だと思いますね。