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KALMA

KALMA

Writer 石角 友香

様々な音楽トレンドを追い掛けていても、ごく稀に新しさとか技術とか、これ聴いてる自分はイケてるとか、承認欲求とかをブチ抜いて笑ってしまうようなロックが聴こえてくるときがある。余談というか、重要な話な気がするので書くが、今年の5月、Official髭男dismの藤原 聡(Vo/Pf)が、自身がレギュラー・パーソナリティを務めるラジオ番組でKALMAの曲をピックアップしていた。たしか、最新のサウンドとかトレンドもいいけど、こういうバンドのパワーが新鮮に感じるという意味の発言だったと思う。畑山悠月(Vo/Gt)自身も嬉しさを隠せないツイートをしていた。すでに結成から数年を経過した今も自然発生的なメロディや、ジャーン! と一発、3人が音を出したときの純度は変わらない。ティーンエイジャーも年配の音楽リスナーも、おそらく彼らの出すその"ジャーン!"に感じるワクワクの熱量は変わらないんじゃないか? と思う。

昨年10月に1stフル・アルバム『ミレニアム・ヒーロー』をリリースしたKALMA。今夏は、"SWEET LOVE SHOWER 2022""JOIN ALIVE 2022"など、各地の夏フェスに数多く出演し、8月に「ペーパーバック」、9月には「隣」と、コンスタントに配信シングルをリリースしてきた。そしてこの1年の変化と不変、ここからまた1歩を踏み出す意味合いを含んだミニ・アルバム『NO BORDER』を、11月9日にリリースした。

フル・アルバムではストリングス・アレンジやピアノ、ブラス・サウンドなどバンド以外の音も取り入れ、溢れんばかりの音楽愛を多彩な曲に落とし込んでいたが、今作では"3人が集まって、ジャーン! と音を出す"ワクワクと、もはや定義が難しくなったロックという言葉に、シンプルな解答をもたらすような音が鳴っている。フィードバック・ノイズからシンプルなコード・ストロークの音が聴こえる、オープニングのインスト「DEBAYASHI ROCK」の音が聴こえた瞬間、笑いそうになったぐらいだ。実質的な1曲目である「隣」はすでに配信されていたが、シンバルの4カウントはスタジオ・ライヴを観ているような気分。8ビートのR&Rがこれほどの威力を持つことってまだあるんだ? という驚きがあった。それはくどいようだがバンドの音に由来する。今回、エンジニアにザ・クロマニヨンズやTHE BAWDIES、OKAMOTO'Sなど、まさにその音ですべての鬱憤を吹き飛ばすようなバンドを手掛けてきた川口 聡を迎えたことは、ライヴ・バンド KALMAの芯の部分を音源に真空パックするために大きな意味があったと思った。

もちろん、シンプルな3ピースのバンド・サウンドは曲が良くなければ成立しない。ドライブするビートとラフなギター・サウンドで走り出したくなる「隣」は、それだけで痛快だが、人懐こいサビのメロディの閃きはちょっと他のバンドにない。ほぼ同じBPMでさらに走っていけそうな「ボーダー」は、進み続けることでしか見えない"境界線"を越える未来を見ているように思える。ミニ・アルバムのタイトルにも繋がるが、この作品に詰まった思いを結集していくと、境界線なんてない地平に現在の彼らのマインドはある、もしくは自分にそう言い聞かせている。

どこからそんな自由なメロディが出てくるんだ? とメロディが言葉を引き連れてくる「24/7」、好きな人がつく優しい嘘の意味が時間を経ていくごとに変化していく描写が見事で、主人公の心が徐々に強くなっていくことに感銘を受ける、タイトルもそのままな「優しい嘘」、これまで生きてきた歳月分しか本当のことは書けないけれど、これからもそういうふうにこのバンドは続いていくんだろうなと思わせる「ペーパーバック」は、KALMAというバンドの2022年の自己紹介といったところだろうか。ユニゾンのコーラスを聴いていると、早くライヴの現場で自分の好きなフレーズを歌いたいな、と素直に思う。

歌い出しの低音とオクターブ飛翔する力技の展開に胸を打たれる「マイシティ」は、バンドを始めたこの街と、始めたからこそひとりの僕は"僕ら"になっていったということを歌う。ここでも彼らの自然発生的なメロディは初めて聴く人の心も開かせるんじゃないだろうか。一切こねくり回した跡が見えないからだ。ラストの「ポシビリティー」はカウ・パンク風の2ビートに始まり、抒情的なサビに抜けていくユニークな構成。タイトル通り、彼らが生きていくうえで最も大事なことが駆け足で綴られているような感じだ。若さは速さでもあり、あくまでも自分の足で走って出す速度だ。不安や悩みも走りながら解決していこう。そう思える。

改めてKALMAというバンドを彫り出したところにある魅力、それがこの『NO BORDER』だ。ワンマン・ツアーに向けて強力なアンセムが出揃った。


▼リリース情報
KALMA
3rdミニ・アルバム
『NO BORDER』
KALMA_NOBORDER_J.jpg
NOW ON SALE
[SPEEDSTAR RECORDS]

【通常盤】
VICL-65740/¥2,200(税込)
amazon TOWER RECORDS HMV
・"NO BORDER one man tour 2023"チケット最速先行受付URL封入

1. DEBAYASHI ROCK
2. 隣
3. ボーダー
4. 24/7
5. 優しい嘘
6. ペーパーバック
7. マイシティ
8. ポシビリティー
CDはこちら 配信はこちら

▼ツアー情報
"チャレンジャーツアー2022 春" ※振替公演
11月16日(水)SHIBUYA CLUB QUATTRO w/ SIX LOUNGE ※SOLD OUT
11月28日(月)F.A.D YOKOHAMA w/ THE 2 / SULLIVAN's FUN CLUB
12月1日(木)mito LIGHT HOUSE w/ THE 2 / SULLIVAN's FUN CLUB
12月7日(水)大阪 BIGCAT w/ KOTORI


kalma_tour.jpg
"KALMA NO BORDER one man tour 2023"
2023年
2月11日(土・祝)北海道 PENNY LANE 24
2月16日(木)大阪 umeda TRAD
2月18日(土)福岡 BEAT STATION
2月25日(土)愛知 NAGOYA CLUB QUATTRO
3月4日(土)東京 渋谷WWW X
[チケット]
前売 ¥3,500(税込)
※オールスタンディング/整理番号付き/未就学児入場不可/全会場ドリンク代別途必要
■CD購入者限定最速先行:~11月16日(水)23:59

詳細はこちら

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