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INTERVIEW

Japanese

ANABANTFULLS

2021年10月号掲載

ANABANTFULLS

Member:安田 コウヘイ(Vo/Gt) 小林 卓矢(Ba/Vo)

Interviewer:山口 智男

アナバンことANABANTFULLSがTOWER RECORDS限定でアルバム『天国発電』をリリースした。前作から2年ぶりと時間は空いたものの、その間、ギタリストの脱退、コロナ禍とバンドが始まって以来の危機を乗り越えたことで、彼らが掲げるグルーヴィ・ロックは、さらに研ぎ澄まされたものになった印象だ。メンバーたちも"間違いない"と胸を張る。ここからANABANTFULLSの反撃が始まる!

-これまでと同様に楽曲に嘘がないというか、安田さんをはじめ、メンバーのみなさんがバンドに取り組む生き方が楽曲に表れているということだと思うのですが、前作『自然発火』をリリースしてから2年の間、バンドに取り組むみなさんの気持ちが窺えるというか、バンドがどんな状態だったのかが聴きながら想像できるようなところが、『天国発電』はとても聴き応えがありました。聴きながら僕が感じたのは、バンドが一度沈んで、そこからの反撃も含め、さぁここからどう活動していくんだろうかというワクワクでした。

安田:ありがとうございます。嬉しいです。

-バンドの上り調子が反映されたアルバム『自然発火』とそのあとのリリース・ツアーを成功させ、そこからさらに上を目指そうと考えていたところでコロナ禍になってしまったんですよね?

安田:そうですね。キャパはそんなに大きくなかったですけど、サーキット・イベントで入場規制が掛かるとか、ツアー・ファイナルの渋谷WWWが自分たちの中では成功したとか、お客さんが増えてきたと実感しはじめたところですぐにコロナ禍になってしまったんです。でも、実はそれ以前に4人のモチベーションに差が出ていたんです。そのあと、コロナ禍になって、"ライヴができない。このままじゃバンドの生死にかかわる"っていうなかで、松村(卓己/Gt)が脱退して、そこから、リハビリみたいに曲をばんばん作っていって、結果、できあがったのが今回の『天国発電』なんです。

-バンドは上り調子だったにもかかわらず、モチベーションに差が出たのは、なぜだったんですか? 

安田:そうなんですよね。

小林:松村と一番話をしたのが僕だったんですけど、彼個人の人生を考えたとき、年齢的にそんなにバンドに時間を割けなくなってきたってことなんだと思います。そこに追い打ちをかけるようにコロナ禍でライヴができなくなってしまって、"バンドを続けることに意味があるのか?"ってなっちゃったみたいで。

-つまりモチベーションの差というのは、3人と松村さんの間でということですか?

安田:細かいことを言うと、やっぱり4人いるんで、いろいろなタイミングで誰かが悪くなったり、誰か良くなったりってことはあったと思うんですよ、僕も含め。結果、松村がやめることになって、見切り発車で、3人で始めたんですけど、そこからも大変なことはいっぱいあって。でも、3人になってからのほうが"うわ、バンドやってんな"とか"やっと戻ってこられた"とか思えて、みんなが"また戦いにいくぞ!"って精神状態になれたんです。正直、僕も、もう無理なのかなって思ったこともあったんですよ。『自然発火』で上向いたとはいえ、飯が食えていたわけではないし、バンドがひっぱりだこかって言ったら全然そんなこともなかったし。"大丈夫なのかな。続けていて、何になるんだろう?"みたいに思う時期もあったんですけど、今3人になって。原点回帰じゃないですけど、演奏していても楽しいし、"やっぱりこういう音楽をやりたいよな"って気持ちが再燃している実感はありますね。

-メンバー間の小さなモチベーションの差というのは、これまではライヴを続けることで解消できていたところもあるんでしょうか?

安田:そうなんですよね。コロナ禍になってから、めっちゃ解散とか、脱退とか多いじゃないですか。やっぱり、ライヴってセラピーみたいなところがあって、その都度達成感があるから、それでどうにか誤魔化せていたものが、いきなりライヴできないという状況になって、気を張らないと好きなことができないってなったときに食らっちゃって、やめたりとか、休んだりとか、僕の友達の中にも何人もいるんですよ。ただ僕らはどこのバンドよりもそれが早かったというか(笑)、早めにその兆候を感じて、決断をして準備をしてまた始めようってなれてたんで、この状況でやりづらいとは正直そんなに思ってなくて、ちゃんと今の時代に合った自分たちのペースでやろうって腹を括ることが早めにできたんじゃないかと。だから、3人でやろうと決めてからも、サポート・ギターを探して、この9月から4人で活動していくことになったんですよ。

-安田さんは見切り発車とおっしゃいましたが、小林さんはそのとき、どんなふうに考えていたんですか?

小林:僕は松村と話し合う結構前から3人になるなとは思ってたんですよ。他のメンバーは、どう思ってるんだろうっていうのはありましたけど、僕はわりかし3人でやったほうが将来のヴィジョンが見えやすいと思ってました。だから、見切り発車という感じは僕の中ではなかったです。一番心の準備ができていたのは僕だと思います(笑)。3人になってからは、安田もさっき言っていたようにバンドをやっていることが楽しいんですよ。松村が原因でつまらなかったということではないんですけど、より楽しくなった感覚が今は強いですね。

-じゃあ、小林さんが安田さんと鯉沼(遼/Dr/Vo)さんに前向きな言葉を掛けたわけですね?

小林:いやぁ、そこが自分の悪いところかなと思うんですけど、自分からはそういうことを言わないんですよ(笑)。安田が言い出したら、もちろん賛成するつもりではいたんですけど。

安田:ほんとそうですね。うちは僕が言い出して、それに賛成か、賛成じゃないかなんで(笑)。でも、(小林は)3人になると思ってたんだ。僕はまったく予想してなかったです。僕は正直、ギタリストではないんで。3人になったときひとりでギターを弾いて、歌えるかなっていうのがあったんで、とりあえず3人で始めようと。3人になってからの最初のライヴがワンマンだったんですけど、初ライヴを決めちゃって、それまでに練習しようって。で、ギター教室に通ったんですけど、そうでもしなきゃまた始められないと思ったんです。

-なんとギター教室に通ったんですか!?

安田:友達のところに通って、もう1回、コードからやり直しました。それから3人で1年ライヴをやってみて、めちゃめちゃ勉強にはなったんで、ほんとにアナバンは良くも悪くも体験してみないと、ちゃんと自分たちのものにならないんだと感じましたね。

-3人でやり始めてからも大変なことがあったとおっしゃいましたが、大変だったのは、ギターを弾きながら歌うことだったんですか?

安田:そうですね。僕はヴォーカルがメインで、基本、ギターは手伝うくらいの感じだったので。一時期、ハンドマイクで歌おうと思ったこともあったんですけど、いろいろな人から、"安田はギターを持って立っているほうが様になる"と言われたっていうのもあるし、曲も僕が作って、僕のギターで始まるものが多いしってことで、ギターも弾いてたんです。でも、歌いながら本格的にギターもやるってなったら、ヴォーカリストとして自由がきかなくなっちゃうときもあって、それはそれで研ぎ澄まされるところもあって面白かったんですけど、結局、センターで歌いたいと1年やってみて思いました。

-3人になってから、ばんばん曲を作っていったとおっしゃいましたが、3人になってから作りたい曲が変わったんじゃないかと『天国発電』を聴きながら思ったのですが。

安田:大幅に変えたってことはないんですけど、もっとフィジカルが強い感じにはなったかな。曲調ですよね? 歌詞ではなくて。

-歌詞も変わってきたのかなと思いました。

安田:あぁ、歌詞は2020年ぐらいが、僕は人生の中で最悪な時期だったんですよ。

小林:そうだったんだ。

安田:コロナ禍もそうですけど、私生活でもいろいろあって、一番ヤバい時期だったんです。でも、そこからシンプルな言葉を使うようになったというか、何回も見直さないでそのまま出しちゃえみたいになりました。以前は、何回も見直して、見直してってことをやってたんですけど、結局、耳に馴染むのって最初に浮かんだシンプルなフレーズなのかな。曲に対しても、何回も再構築してってことじゃなくて、最初に作ったおおもとからあんまり逸れないようにというか、シンプルに1本、ぼーんって幹がある感じの曲が増えたなという印象はあります。

-安田さんが作る曲に小林さんは変化を感じましたか?

小林:感じました。特に歌詞がわかりやすくなったと思いました。今までは、正直、ここ何を言ってるんだろうってところがあったんですよ(笑)。

安田:ハハハ(笑)。

小林:いや、言い回しが難しいフレーズは、こっちがいろいろ想像して自分の心境に当てはめなきゃいけなかったんですよ。だから、自分の中に落とし込むのがなかなか難しいこともあったんですけど、今回はわかりやすい言葉が多いせいか、安田はこういうことを考えてるんだって想像しやすくなりました。YouTubeとか、Twitterとかの反応を見てると、聴いてくださってる方も感じ取ってるんじゃないかなって。それはいいことだと思いますけどね。

安田:ありがとう(笑)。

-2020年は最悪だったそうですが、何があったんですか?

安田:自分がすげぇふわふわしていて、もうどうでもいいかなってなっちゃって。バンドのことも考えたくなかったときもありました。音楽がないと、ほんと、こんなふうになっちゃうんだって。3人になってからっていうか、小林と鯉沼は俺の曲をやりたい。ANABANTFULLSを続けたいと言ってくれてるんだって思ってから、結構もとに戻ったんですけど。