Japanese
ANABANTFULLS
2019年09月号掲載
Member:安田 コウヘイ(Vo/Gt)
Interviewer:山口 智男
3年ぶりにリリースするアルバム『自然発火』が聴く者の胸に響くのは、前作『BAKAMANIA』以上に歌を重視していることに加え、安田コウヘイが歌う言葉に嘘がないからだ。目の前にいる人たちの顔を思い浮かべながら安田が紡ぎ出した言葉から窺えるのは、心境の変化を含む過去3年間のバンドの歩み。結成から6年。グルーヴィ且つワイルドなロックを奏でる北浦和の4人組、ANABANTFULLSの存在は、"この3年間のベスト・アルバム"と胸を張る『自然発火』と共に、さらに多くの人たちに届いていきそうな予感!
-あれ、なんか雰囲気が変わったような(笑)。
そうですね。前回のインタビュー(※2016年10月号掲載)のときは髪が長かったから。かなり切らせていただきました(笑)。
-髪型も変わりましたけど、真面目な好青年になったなぁと(笑)。
ははは(笑)。もっとやんちゃでしたっけ? やっぱり3年を経て、いろいろ変化が。
-なるほど。アルバムとしては3年ぶりにリリースする『自然発火』を聴かせてもらって、勝手な想像ではあるんですけど、前作の『BAKAMANIA』(2016年リリースの1stアルバム)をリリースしてからの3年間、ANABANTFULLSのみなさんがどんな気持ちでバンドに取り組んできたのかが、なんとなくわかるような気がしました。
嬉しいです。『自然発火』をリリースするまでに2枚、会場限定でシングル(2017年の『乾杯!』、2018年の『目を覚ませ!』)をリリースしているんですけど、そこからも4曲収録していることもあって、『BAKAMANIA』をリリースしてからのアナバン(ANABANTFULLS)のベスト・アルバムと言えるものになっているんですよ。そんなふうに想像してもらえたのは、そのなかで、この3年間僕が思っていたこともちゃんと言葉として残っているからなのかなと思います。
-バンドをやりながら悔しい思いもしつつ、手応えをしっかりと感じて、誰に対して歌えばいいのか、どんなことを歌えばいいのか、以前よりもはっきりとわかってきたんじゃないかなと。
以前は、歌っていることももっと抽象的だったし、誰かに対して歌っているわけでもなかったし。そもそもバンドを始めたときは、お客さんもそんなにいたわけでもないから、何を伝えるかふわっとしているというか、ざっくりとしていたんですよ。もちろん音楽に対してはがっついてはいたんですけど、楽な気持ちでライヴに取り組むようになってから目の前の景色が見えるようになってきて、誰に対してってところもはっきりしてきたんです。それからは歌詞もざっくりしたイメージじゃなくて、目の前にいる人に起きたことをそのまま伝えるぐらいのつもりで書くようになりましたね。
-意識的に変えていったんですか?
意識的に変えていかないとしんどかったんですよ(笑)。メンバー全員がそういうふうに変わっていったんです。僕が一番遅いくらいだったかもしれないですね。結果、ユーモアや遊び心を持って音楽をできるようになって。だから、ライヴをやっていても音楽を作っていても今一番楽しい時期かもしれないです。
-しんどかったっていうのは?
"頑張らなきゃ! 頑張らなきゃ!"みたいな。どんどん自分たちを焚きつけて、"やらなきゃ! やらなきゃ!"みたいにやっていたんですけど、なかなか成果が出せずにいて、メンバーみんな、"こんなに頑張ってるのに"ってなっていた時期があったんですよ。でも、そこから少しずつみんなの意識が変わって、アナバンをみんなが守っていくスタイルというか、できるだけバンドを長く続けようというふうに気持ちを変えていったんです。
-そしたら状況も少しずつ変わってきたと?
そうですね。自然体でやるようになってから少しとっつきやすくなったのかな(笑)。少しずつですけど、自分たちの目線が変わるだけで、お客さんの反応も違ってくるんだなっていうのはやりながら感じますね。
-2017年、2018年とシングルをリリースしてきて、今回このタイミングでアルバムになったのは、何かきっかけとか理由とかがあったんですか?
会場限定でシングルを2枚出したときもそれぞれリリース・ツアーをやって、それはそれで刺激的ではあったんですけど、3年前みたいにCDをちゃんとお店に置いてもらって、宣伝もして、ツアーを回って、大きなところでツアー・ファイナルをやろうという流れに自分たちからしたかったんです。そのほうが今は楽しいというマインドにみんながなっていたせいか、ほんと自然に"アルバムを作ろうか"って流れになったんですよ。だから、そこまで深く考えていたわけではないんですけど、"アルバムを出すしかないだろう"って。
-2枚のシングルから2曲ずつ選んだ4曲に新曲3曲を加えた全7曲を収録した『自然発火』。作るにあたっては、どんな作品にしようと考えたんですか?
ポジティヴな曲を入れて――2枚のシングルもネガティヴな曲は入ってなかったんですけど、ひとつの作品にしたかったっていうのはありましたね。
-『BAKAMANIA』をリリースしてから、曲はたくさん作ってきたんですか?
曲はずっと作ってました。2枚のシングルには3曲ずつ入っているんですけど、そこに入らなかった曲もライヴでは結構やっていて、その中で勝ち残ってきた曲なんですよ。それを今回アルバムにも再収録している。だから、さっきも言いましたけど、この3年間のベストっていう気持ちがあるんです。
-2枚のシングルから2曲ずつ選んでいますが、その4曲はどんな理由から勝ち残ったんですか?
「乾杯!」と「目を覚ませ!」は、シングルのリード・トラックだから入れようってなったんですけど、「乾杯!」は約2年前の曲にもかかわらず、@FMの"ROCK YOU!"って番組が8月のエンディング・テーマにしたいと言ってくれて。シングルが会場限定だったせいでまだ伝わっていない人たちもいるなら、その人たちに伝えるという意味で全国流通盤に改めて入れる意味はあると思いました。「Blues」は、ミドル・テンポの大きな歌という意味で、歌でちゃんと勝負できるアナバンのひとつの武器として入れようってなりましたね。「交戦のキル」と「マイダート」(『乾杯!』収録曲)は甲乙つけがたかったんですけど、「交戦のキル」のほうが、誰に対して歌っているのかが明確にわかるという理由で勝ち残りました。
-歌で勝負という言葉が出てきましたが、今回の『自然発火』は、『BAKAMANIA』以上に歌重視で、その歌を聴かせるために演奏もシンプルになっているという印象がありました。
それも自然にそうなったんですよ。っていうか、この3年の間に歌うのが好きになっちゃったっていう単純な理由からなんですけど(笑)。きれいに歌いすぎてつまらなくなっちゃった時期もあったんですけど、自分の声のかっこいいと思えるところが自分でわかってきて、それで自然にそういう曲が多くなったのかな。演奏に関しては、シンプルに、シンプルにっていうのはメンバーには言ってはいないんですけど、もしかしたら意図を汲んでくれたのかもしれないです。
-前作のときもちゃんと歌は魅力のひとつとしてあったんですけど、今回はより歌にフォーカスしていると感じました。歌うのが好きになったきっかけって、何かあったんですか?
どうかなぁ。難しい音楽を聴いている時期が結構あって。例えば、そんなに歌が立たないUSインディーとか、昔のハードコアとかが好きな時期があったんですけど、この1年ぐらい、中学生のときとか、高校生のときとかに聴いていたバンドをまた聴くようになって。聴き直してみると、やっぱり歌がめちゃめちゃいいんですよね。僕が好きなバンドは歌とかメロディとかがめちゃめちゃいい。『BAKAMANIA』を出したとき、細かいところで歌を生かし切れなくてもったいないと感じたところが自分の中であったので、今回は、サビだけじゃなくて、いろいろなところに歌心を入れたいと思いながら作ったんですよ。
-いろいろ試しながら、改めて歌い方を探っていったところもあるんでしょうか?
曲は僕が作っているから、自分がすごく気持ち良く歌えるコードやメロディは、自分でやっぱりわかっているんですけど、それを使いすぎると、全部同じに聴こえてしまう。ちょっと無理してギリギリ出せる高いところが、ライヴでも一番ぐっと来るって自分でも思うし、プロデューサーも言ってくれるので。最初プロデューサーから言われたとき、半信半疑だったんですけど、実際やってみるとかっこいいんですよね(笑)。それがないばかりに良さを生かし切れていない曲もあったので、そこに対する意識は変わったかもしれないです。
-じゃあ、曲の作り方もそれを意識して?
ちょっときついけど、ぐっと来るところが出るようなセクションを作るとかはしますね。「Brother」もそうなんですけど、思いっきりシャウトするところがあって、そこは絶対やろう、やらなきゃもったいないと思って作りました。
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