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INTERVIEW

Japanese

INORAN

2021年02月号掲載

INORAN

インタビュアー:杉江 由紀

これは上質にして克明なドキュメンタリー作品であると言えよう。昨年9月に発表された『Libertine Dreams』からわずか約5ヶ月。今ここに完成した『Between The World And Me』は、INORANが昨春から感じてきた心情や、体験してきたことを音楽作品という形に昇華したもので、実質的には前作と合わせての2枚組的なアルバムになるとのこと。前作に引き続いて、マスタリングをRandy Merrill氏(LADY GAGAやJustin Bieber、Taylor Swift、Ariana Grande、MUSE、ADELEなどを手掛け、2016年にはADELEの『25』でグラミー賞"最優秀アルバム賞"を受賞)が手掛けている点も実に興味深い。


曲そのものが自然とこの完成形へと導いてくれました


-昨年9月に発表されたアルバム『Libertine Dreams』から、わずかに約5ヶ月で、このたびは14thアルバム『Between The World And Me』が世に出ることとなりました。これは前作の完成後すぐに今作の制作へと入られた、ということだったのでしょうか?

実は、あの前作を作っていた段階で今回は実質的な2枚組というか、2部作にしようとすでに考えていたんですよ。というのも、曲作りをしていた去年の4月や5月はずっとSTAY HOME期間だったのもあって、時間がたくさんあったので、気づいたときには曲が30曲くらいできてしまっていましたから(笑)。その曲たちを去年の9月と今年の2月に分けて、2枚組のような感じで出すことにしたんです。そして、前作と今回の『Between The World And Me』には、ほぼ作った時系列どおりに曲を入れてあります。僕やスタッフからすると、前作『Libertine Dreams』と今回の『Between The World And Me』の関係性って、THE BEATLESでいう赤盤(『The Beatles / 1962-1966』)と青盤(『The Beatles / 1967-1970』)みたいなものだと捉えているところもあるんですよ。

-なるほど。つまり、前作と今作に収録されている楽曲たちは、ほぼ同時期に生まれたものにはなるかと思いますが、同時に刻々と時間が進んでいくのにつれてできていく曲たちの雰囲気の中に、何かしらの変化が生まれていったところも多少はあったのでしょうか?

それはありますね。わかりやすく言うと、『Libertine Dreams』のときはまだいろんなことの状況もよくわからないまま、日本版ロックダウンが始まったなかで曲を作っていたわけですよ。そのあと、5月中旬から6月にかけて作っていたのが今作の曲たちなので、その頃には"わけのわからない不安や、どうしようもない苛立ち"とかの感情とは違う、"人と触れ合いたいな。しばらくそれができてないな"という思いとか、もっと"揺れる"気持ちが曲に反映されていったんじゃないかと思います。あとは、歌詞もサウンドも全体的に『Libertine Dreams』のときからもう1段階トリートメントしたのが『Between The World And Me』です。

-たしかに、体制としては今回も基本的には全トラックをINORANさんが作られたうえで、マスタリングについてはRandy Merrill氏に託されたそうですし、音づくりの方向性の面からいけば、前作からの延長線上にあることが窺える仕上がりではあるのですが、端々からはより洗練された味わいを感じ取ることもできます。

自分の中で刻々と重なっていった想いが、そのまま音へと変化していったところもありますからね。『Libertine Dreams』を作っていた時期から、『Between The World And Me』を作り出した時期の中では、世の中的にも自分の内面でも様々な変化が起きていたわけですし。その動きを見逃すわけにはいかなかったというか、ないことにしてそのまま進むわけにはいなかったんです。

-そのせいでしょうか。空気感の面では前作と今作で少し違う雰囲気も含まれている印象もあるのですよね。例えば、「Sinners on the Run」で醸し出されている、温かでいい意味でのなだらかな日常を感じさせるような朴訥感は、昨春の緊張感に満ちていたロックダウンの最中では生まれてこなかったものなのでは? と思うところもありました。

きっと、そのへんは意外と季節感なんかも影響してるんじゃない? ちょうどその曲ができたのは、春先から暖かくなっていった時期だったし。"とりあえず天気もいいし、いろんなことは忘れて曲を作ろう!"っていう気持ちになれてたのかもしれない(笑)。

-なお、今作におけるリード・チューンは、アルバムの最後に収録されている「Leap of Faith」となっておりますが、こちらの曲を選ばれた理由についても教えてください。

それは、詞が乗ったときにこの曲の中に息づいている生命感を改めて強く感じたからですね。そして、最初は曲の構成も今みたいなデュエット的な雰囲気ではなかったんだけど、歌詞ができた段階で、スタッフとも"ここに女性ヴォーカルを重ねたらいいよね"っていう話になって、曲そのものが自然とこの完成形へと導いてくれました。2枚のアルバムを通じたひとつの世界を締めくくってくれる、大事なエンド・テーマというかね。映画で言えば、これはエンドロールに流れる曲みたいな存在になってくれてます。

-「Leap of Faith」の中に漂う奥深い響きと心地よい余韻は、聴き手側に並々ならぬ感慨を与えてくれていますものね。

前編後編の映画なのか、上下巻の小説なのかはわからないけど、そのくらいの大作的な世界を全21曲、計2枚のアルバムの中で作りあげることができたなという実感は自分の中にもあります。場合によっては、ここからまた同じ流れの中で新しいシーズンが始まる可能性もないわけじゃないにせよ、今作に関してはこの曲に限らず、前作『Libertine Dreams』のときよりも、いっそうサウンドと歌詞とのシンクロ感が強くなったところがあったから、作っていく側としてはそこにも手応えを感じていましたね。

-それだけサウンドと歌詞とのシンクロ率が高くなってきていたということは、歌録りの際のアプローチにも変化をつけていく必要があったのではありませんか?

もちろん。歌い方としては、前作『Libertine Dreams』のほうがもともとの自分風というのかな。わりと素に近い歌い方だったかもね(笑)。その点、今回はそれぞれの曲の持っている特性に自分の歌を寄せている感じ。今回のレコーディングを通して、そこはまた新たな武器を身につけたとも言えます。そこはこの『Between The World And Me』に入っている曲たちが、僕をその方向へと、自然と導いてくれたということでしょうね。