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LIVE REPORT

Japanese

INORAN

Skream! マガジン 2021年11月号掲載

2021.09.29 @LIQUIDROOM ebisu

Writer 吉羽 さおり © NO NAME?

"INORAN -TOKYO 5 NIGHTS- BACK TO THE ROCK'N ROLL"と題して、5日間全10ステージの熱いライヴを行ったINORAN。もともとは昨年、50歳を祝し同公演を行う予定だったが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で延期になり、1年越しの開催となった。筆者は4日目、9月29日の2ndステージに足を運んだが、1日2ステージというハードな公演とは思えない、爆裂なパワーとエネルギーが渦巻くライヴで、ステージから放たれる轟音に痺れた。ライヴハウスで生の音の塊を浴びる衝撃と開放感、バンドの鳴らす音楽で踊る喜びという、シンプルだが格別な時間が、タイトルにもあるロックンロールへの回帰にも繋がっているのだろう。余計な思考を吹っ飛ばして、身体で、心で楽しむライヴとなっていた。

そのエネルギーの塊となる音を生み出したのが、INORAN BAND──Ryo Yamagata(Dr)、u:zo(Ba/ex-ROS/ex-RIZE etc.)、Yukio Murata(Gt/my way my love etc.)、そしてINORAN(Vo/Gt)。ギラギラとした分厚いギター・リフとダイナミックに刻まれるビートによる「grace and glory」で、ショーをスタートし、ハンドクラップで応える観客にINORANは"東京、会いたかったぜ"と叫ぶ。ノイジーな残響の中、さらに重みを増したリフが響き、そのヘヴィさをキャッチーなメロディが爽快に切り裂いていく「Get a feeling」へと続く。グランジ/オルタナティヴの空気と歪みがたっぷりと効いたギターや、ドライヴ感のあるビートがとにかく気持ちがいい。この"TOKYO 5 NIGHTS"は久々にメンバー揃ってのライヴになったと思うが、安定感、バンド感ともに抜群だった。培ってきたグルーヴの確かさや、メンバーそれぞれが楽しみながらプレイしているステージのいい空気感、そして阿吽の呼吸があるからこそ、緊張感のみなぎった音が縦横無尽に放たれて、スリリングに観客を刺激する空間が生まれている。INORANはMCで"ここに立てることを信じて、この景色を強く望んでいたので、とても嬉しい"と語った。ミュージシャン、バンドはステージに立ってこそだと改めて感じるステージだ。

アンセミックな「Don't you worry」からの中盤は、バンドの真骨頂。徐々に音が重なり合ってサウンドスケープがどんどん広がり、重厚感を増していく「Come Away With Me」のサラウンドな迫力から、ギターが図太い咆哮を上げて「COWBOY PUNI-SHIT」へと突入する。観客はただただ音に飲まれ、こぶしを掲げ恍惚感に立ち尽くす感覚だ。インプロ的にそれぞれの楽器で対話し、グルーヴの密度を上げると、さらに音量が上がったか? と思うような爆音で「Hide and Seek」へとなだれ込んでいく。息つく間もない展開に、長く熱っぽい拍手が巻き起こった。こんなふうに手を真っ赤にするくらい拍手や手拍子をするのもニュー・ノーマルならではの文化だと語るINORAN。そして、コロナ禍では人との繋がりなど、当たり前と思っていたものが尊いものだと改めて感じられたという。ミュージシャンとしてこれからも進み続ける、最後はみんな笑顔になって帰ってもらう、そういう活動を続けたいと力強く宣言すると、ショーは終盤へと入っていく。「We've Lost Control」では、これまでINORAN BANDでやっていなかったこととして、Murataがメインのヴォーカルをとった。バンドとしてまだまだその懐に様々な武器を隠し持っていることを伝えると、「Rightaway」の間奏では、当日29日に誕生日を迎えたINORANへのサプライズも。u:zoがバースデー・ソングの音頭をとり、ステージには盟友 SUGIZOからのプレゼント、"天下一品"のカップ麺が運び込まれた。このプレゼントを受け、"じゃあ、ここからこってりいっちゃおうかな"と笑顔を見せたINORAN。ラストはメンバーの熱いシンガロングに幸福感がクレッシェンドする「All We Are」で、続く未来への希望を響かせた。INORANの"また必ずこのバンドで戻ってくる。そのときは、遊んでくれな"という言葉に、大きな拍手が贈られる。2ステージ制で時間こそ限られたものだったが、濃密で贅沢なロックンロール・ショーを堪能した。

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