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INTERVIEW

Japanese

sleepyhead

2018年11月号掲載

sleepyhead

Member:武瑠

Interviewer:藤谷 千明

-今回Skream!初登場ですが、これまでも周囲の編集者やライターの方から武瑠さんの評判を聞いていました。私の周囲のメディア関係者は武瑠さんのことを仕事を超えた熱量で推しているし、惚れ込んでいる人も多いんですよ。

それはありがたい話ですよね。だけど、"関係者に受けるバンドは売れない"っていうイメージもあるじゃないですか。

-ありますね、マニア受けで終わってブレイクしないというイメージが(苦笑)。

過去にはそれを"怖い"と思うこともあったんです。だからこそバンド時代は"嫌われないように、キャッチーにしなきゃ"みたいな強迫観念が深層心理にあって。もちろんその当時はやりたいことをやっていた、やっていると思っていましたけど、どこか"みんなに理解されないといけない"という気持ちも強かったのかも。

-かといって、今やっている音楽も内にこもっているわけではなく、フィールドを広げられるようなポテンシャルを持っていると思うのですが。

でも、客観的に考えれば考えるほど、売れる/売れないって、やっている音楽の内容じゃなさそうだなとは感じます。"どこの村にいるか"が大事になっていて、どこのジャンルにも属してないと評価されにくいみたいな。だから今は、無理してその定規に合わせていかなくてもいいかなと思ってます。もう"ミュージシャン"じゃなくてもいいのかな。実際"ミュージシャン"だけをやっていると、CDの売上や動員がないといけない、大人数に理解してもらえない音楽はダメだという思い込みもあったんですけど。今はCDが売れなくても、例えば自分がデザインした服や、設計した家があったとして、それが売れたらOKというか。

-なるほど。

それは"理解されなくていい"という意味じゃなくて、自分が感動できる、カッコいいと思える、単純にドキドキできるものを表現できるのが一番で、"3D音楽"と呼んでいる、複合的に音楽以外のものをミックスした表現をやっていきたい。無理してそぐわない門を叩いて開けようとするのとは、もう違うフェーズに入っているのかなって。こういうことを言うと、よく"開き直ってる"と言われるんですけど、そういうことじゃないんですよ。全員が全員、"運動会"をやりたいわけじゃないからさ。

-先ほど"ミュージシャンじゃなくていい"とおっしゃっていましたが、とはいえ、音楽もブランド(million $ orchestrA)などの活動も、"ミュージシャンの余技"的なものでもなく、全力投球でやっていますよね。

ブランドの方は少し前から周りの雰囲気が変わってきた感じではありますね。やってることはずっと同じなのに、評価されるのに時間がかかるんだな、と。自分の弱点はわかりづらいことなんで(苦笑)。"どんなことやってるんですか?"と聞かれたときに、説明に時間がかかるんですよ。

-"こういう音楽をやっています"だけで伝わるものでなかったと。

"基本は音楽なんですけど、MVのCGと連動して服ができたり、さらに過去には小説もあったり......。それは映画における3Dや4Dにあたるので、「3D音楽」って呼んでます"、という説明が必要なんですよ。それってTVだと伝えるのが難しいんですよね。"面白い!"、"フェスで入場規制!"的なフレーズではまとめられない。人間が一瞬で認識できる文字数の限界って十数字だとかいいますし、そういう世の中に流れる情報社会にはそぐわない活動をしているのかもしれない。でも、自分はそれが一番面白いなって思ってるので、淡々と面白いことをやりながら仲間探しをしていた。それを貫き続けたからこそ、今回このメンバーが手を貸してくれたんだろうし。俺が復活したときにダサいことをやっていたら、絶対みんな手助けしてくれなかった人たちだと思っています。

-友情を担保にしたコラボでもないし、当然知名度を当て込んだものでもない。

全員ビジネス的な打算はないですね。だって儲からないですもん(笑)。単純にこのメンバーでいい作品を作りたかった。ブランドでもそうなんですけど、"コラボ"って売れない時代なんですよ。例えば、SKY-HIのファンがこれを聴いて全員ファンになってくれるだとか、そんな甘い期待をするほど馬鹿ではないので。でも種をまいていけば、これを聴いて"面白い"と思ってくれる人が増えるんじゃないかなって思うんですよね。

-最後に、武瑠さんの理想のアーティスト像ってありますか?

楽曲やMVのクオリティをもっと上げることと、MVに出てくるもの全部がオリジナルで、家具も実際に作ったりするような、音楽の種から生まれた枝、木、村......。そこから生まれる社会すべてを体現できるようになればといいなと思っています。だから、音源を出してツアーをまわるルーティーンみたいなものとか、それだけにはあんまり興味がないというか、プラスアルファを作ることができればいいですね。でも、あんまりそういうことをやっている人がいないので、理想とするミュージシャンはいないです。