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INTERVIEW

Japanese

瀧川ありさ

2016年11月号掲載

瀧川ありさ

Interviewer:吉羽 さおり

-なるほど。その人たちは、その当時から成長もしているんですかね?

そうなんです。「夏の花」で幼かった子が、大人になった曲があったり(笑)。

-まさに、ドラマの脚本を書いているみたいですね。

そういうのが好きなんだと思いますね。

-例えば"僕"を使うときは、この子に何か言わせたいことがあるのかなとか、この子の身体を借りて伝えたい思いがあるのかなとかも思っていたんです。

それもあるかもしれないです。"わたし"だと、リアルすぎてしまうこともあるんですよね。"僕"だと、ひとつの人格みたいなものができるので、逆に素直に思いを吐露することができるというか。"わたし"で本心を言うよりも、"僕"で伝えた方が言いやすいのはありますね。それも自然に出ているのかもしれないです。

-「日々モノクローム」も古い曲ということでしたね。この曲では主人公は"わたし"で、ちょっと内省的な曲で。自分の心情がリアルに映ってもいるんですか?

これは3年前くらいに書いた曲なんですけど、モラトリアムな1曲ですね。10代のころ、人との別れを経験したときに、自分だけがその場所に取り残されているように感じて。なので、リアルにモノクロだったんです。"暗っ!"っていうくらい(笑)、日々が暗いなぁと感じていて。例えばやっと誰かと繋がることができたときに、本当に世界って色づくんだなというのも感じていて。ひとりぼっちだと何も色がつかない、街がモノクロにしか見えないなっていうときのことを歌った曲なんです。

-シングル曲などでは、発端としては切なさや悲しみがあっても、行き着く先は希望があって、明るいものも多い。この「日々モノクローム」では、そこに行き着いてないんですよね。それは瀧川さんとしては、珍しい曲でもある。

アルバムの中の曲なので、逆にそれもいいかなと思って。無理に希望に持っていかなくても、そういう日があってもいいかなっていう。絶望し切ったまま終わっても、アルバムの他の曲で違う希望が描ければいいんですよね。なのでこの曲ではそのころのまま、何も変われずに悲しいままにしておきたかったんです。

-カントリー/フォーク的なサウンドがさらにセンチメンタルな風合いを呼ぶ曲です。一方、Track.8「Sugar」などはモダンな打ち込みのサウンドで、アルバムならではの曲ですね。

これは今の自分だからこそ、余裕ができたなという曲で。BONNIE PINKさんなどを手掛けている松岡モトキさんに編曲をしてもらっているんですけど、私の好きなサウンドなんです。肩の力を抜いた曲を作りたいなと思って。シングルの曲しか知らないような人が、こういう曲もあるんだなって一番思えるような曲がこのあたりのものだと思うんです。

-今作の中でTrack.10「17番地」が、個人的にいいなと思っているんです。この曲では、"わたし"と"僕"、ふたりの登場人物が曲の中にいて、それぞれの思いから物語を語り合う感じがとてもドラマチックで。

ふたりぼっちな感じがありますね(笑)。そして、最後の方には"まだ知らない誰かと目が合う"と、実は他者がいたりする。私は東京で生まれ育って、小さいころから人混みの悲しみみたいなものを感じていて。それを"17番地"という自分が生まれ育った街をテーマに、ノスタルジアに浸り切った曲にしています。

-東京で育っているだけに、故郷や、いわゆる田舎のある人への憧れは強いんですか?

かなり強いです。なのでその憧れで、ガランとした感じの、ちょっとゴースト・タウンのようなところを空想しながら書いた曲ですね。人がいない街で生まれ育った子が、東京に出て大人になった視点で書く、というのも裏テーマとしてあります。

-先ほど、同じ街を描いているという話がありましたが、それぞれの曲で時間軸が少しずつ違っていることでスケール感も生まれています。その、瀧川さんの内にある空想の街というのは、かなり鮮やかで具体的なものなんですか?

結構、作っちゃってますね(笑)。夢でしか行かない場所ってあるじゃないですか。あの延長なんです。小さいころから自分の中にはあるんだけど、存在しない街のような感じで。話はちょっと逸れますけど、それをもとにファンクラブに"Youchronia.(=ユークロニア)"という名前をつけたんです。"Youchronia."という言葉には、時間という概念が存在しない理想郷という意味があって。自分の中にそれがあるなっていうので、この名前をつけたんです。脳内の心象風景があって、そこを描いていることが多くて。聴いてくれる人はそれぞれの世界観で解釈してくれると思うので、それがまた楽しみなんです。

-ということは、歌を作り始める前からあったんですね?

今思うとあったのかなって。ひとりっ子だったからだと思うんですけど、ひとり遊びの中で夢と現実の狭間のような感覚というか。そこでできあがっている遊園地とかが小さいころからあったんですよね。"あの遊園地、最近行ってないな。あ、あれは夢か"っていうような(笑)。そういうのが多いんです。でもそれが良かったのかもしれないですね。13歳から曲を書き始めたとき、簡単に言えばそういうものがネタになったりもしたので。「17番地」とかの世界観は、そこからきていますね。