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INTERVIEW

Japanese

ミソッカス

2016年09月号掲載

ミソッカス

Member:デストロイはるきち(Vo/Gt) ノブリル(Gt/Cho)

Interviewer:荒金 良介

-はるきちさん自身は商業ロックも好きで、そういう音楽もルーツにあるんじゃないですか?

はるきち:好きですよ。だから、大人たちに対してですね。"こうしたら良くなる"というアドバイスはアーティストを思ってのことなんですけど、バンドの寿命を縮めるから。こういうインタビューもそうだけど、アーティストの素を見せすぎだなと。

ノブリル:想像の余地を奪うのはあまり良くないのかなって。

はるきち:僕なんて大した人間じゃないので、掘れば掘るほど粗が出るから。昔のロック・スターだって完全じゃないだろうし、僕もそこに憧れていたんですよ。今は見せすぎだと思う自分がいるけど、他の人からは"どんどん発信しろ!"と言われて。こういうインタビューも本当はあまり好きじゃないんですけど......やった方がいいのかなと思う自分もいて、ずっと揺れ動いてます。その葛藤が「深き森のワルツ」に出てます。この曲は今回のアルバムのテーマみたいなものですね。ずっと悩んでいるけど、最後の「七色の迷路」で"ちょっとだけ出口が見えた気がする"という感じで終わるんですよ。

ノブリル:そう、明確に出口が見えているわけではないですからね。

-えぇ、そうですよね。

はるきち:ずっと悩みながら曲を書いてますから。

-今回はミソッカスのモヤモヤ感が赤裸々に出た作品で、今までと聴き応えがまるで違います。

はるきち:全体的にポップだけど、哀愁があるなと。「夏のイリュージョン」もそうですね。Mr.Childrenの作品に「雨のち晴れ」(1994年リリースの4thアルバム『Atomic Heart』収録曲)という曲があって。うだつが上がらない会社員が主人公で、今は雨だけど、明日は晴れるかなっていう曲なんですよ。当時、僕は大学生だったけど、社会に出たらこういう気持ちになるのかなと思ってたんです。共感とは少し違うけど、グッと来るものを感じて。「夏のイリュージョン」は僕流の「雨のち晴れ」みたいな曲ですね。夢を持っていたけど、会社の忙しさにバタバタして、現実を受け入れていくみたいな。まぁ、暗いアルバムができました。

-いや、別に暗くはないですけどね。

はるきち:はははは(笑)。

ノブリル:暗いかもしれないけど、応援歌的なニュアンスを感じますね。今回は対峙してる悩みがあって、歌詞を書いてる印象を受けるので。地に足がついてる感じがします。イソップ寓話のようにフィクションだけど、その中に教訓があるみたいな。現実に根差したものがフィクションになると、取っつきやすくて学びやすいから。

-今作はハジけた明るさもなければ、どん底の悲しみに溺れているわけでもない。その狭間で揺らめくミソッカスの心情が表れてますよね。そのリアルさがこの作品の素晴らしさだなと。

はるきち:あぁ、めちゃ嬉しいです。今回はただひたすら迷ってるだけですからね(笑)。

ノブリル:前作の歌詞も好きだけど、今作の方が好きですね。ビターエンドの映画を観ている感じで。

-自分の根っこにある感情を音楽にできたのは、今後のミソッカスにとっても大きなことじゃないですか?

はるきち:そうですね。次の作品は明るくしよう、ポジティヴにしよう、と思ってる自分もいるから。だけど、それも商業主義に犯されているのかなと。

-本当に"深き森の迷路"に入ってますね(笑)。

はるきち:はははは(笑)。

ノブリル:不満が溜まってる方がいい曲を書いてくれると思ってますから(笑)。

はるきち:不満というか、ずっと迷ってます。これでいいのか、悪いのか、よくわからないみたいな。いいアルバムができた自信はあるけど、売れるかわからないし。売れたら正解なのかと言われたら、それも違う。でも売れないと、続けられない。今回は溜まっていたものを吐き出したつもりだけど、まだモヤモヤしてますね。

-そうでしょうね。

ノブリル:モヤモヤしてるということは、何かを変えたいわけじゃないですか。これでいいやと言い出したら、僕はバンドを辞めてる気がします。

はるきち:ほんと? でもモヤモヤしすぎて、それで「HITSUJI SAVE ME」(Track.5)という曲を書きましたからね。

ノブリル:ははははは(笑)。

-やはり実体験でしたか(笑)。

はるきち:ロックに何を求められているのか、わからなくなってしまって。語らないロックのかっこよさってあるけど、SNSは発信しないとツールとして使えない。自分の中で矛盾があるんですよね。TwitterはやるけどInstagramはやらないとか、基準があるんですよ。ここをやりすぎると、魂を売ってる感じになってしまうとか。そのロック・バンドにとってのいろいろな物事のボーダーラインをどれくらいの人がわかってくれてるのかなと。ロック・バンドとはなんぞや? って、ずっと悩んでます。

-「HITSUJI SAVE ME」はミソッカス版"しくじり先生"みたいな曲だなと。"俺みたいになるな!!"と。

はるきち&ノブリル:はははは(笑)。

はるきち:僕、愚痴ばかりなので、もうノブリルに任せます。

ノブリル:えっ、僕ですか?

はるきち:僕はもうスッキリしました(笑)。今言ったようなことを思いながら曲を作ったので、響く人には響くだろうなと。