Skream! | 邦楽ロック・洋楽ロック ポータルサイト

MENU

INTERVIEW

Overseas

!!!

2015年10月号掲載

!!!

Member:Nic Offer(Vo)

Interviewer:山元 翔一

デビュー当時より、!!!(CHK CHK CHK)はダンス・ミュージックやパンクという音楽を概念的に捉え、そこに存在する哲学に忠実なレコードを生み出してきた。そしてそれは時として"ダンス・パンク"や"ディスコ・パンク"といった言葉の範疇で語られてきたのだが、彼らにとってそれは必ずしも歓迎される見方ではなくなった。6作目となる今作『As If』では、ミニマルなハウス/テクノやディスコから、ソウルやゴスペルといったブラック・ミュージックまでをごちゃ混ぜのカオスと洗練されたサウンドで聴かせる。音楽性の研鑽を掲げ、様々なトライを重ねていながらも、これまでと変わらずに作品の根幹を成すのは極めてシンプルな瞬間の美学。ここにあるNic Offerの言葉の端々からその精神を感じ取ってもらえれば幸いだ。

-2013年にリリースされた前作『Thr!!!er』はとてもポジティヴなテイストの作品でしたよね。前々作『Strange Weather, Isn't It?』(2010年リリースの4thアルバム)まで、あなたたちは怒りや悲しみ、そして混沌を暴力的且つ快楽的に鳴らしていたと思うのですが、前作ではサウンド面やフィーリング面においてにも大きな変化がありました。リリース後、世界各国でプレイしてどのような反響が得られましたか?

『Thr!!!er』は、みんなのリアクションがしっかりと感じられた作品だった。レコードがリリースされてすぐに反応が来たのが前作だったんだ。あれは確実にエキサイティングなレコードだったから、いいリアクションが来るんじゃないかなとは思っていたね。

-その前作から約2年半ぶりとなる『As If』がリリースされますが、この作品や制作におけるスタート地点はどういったところだったのでしょうか?

『The!!!er』を作り終える前から新作の制作は始まっていたんだ。『Thr!!!er』を大まかに作り終えてからリリースされるまで随分かかったけど、ライティングは常に続けていたんだよ。だから、"あのときがスタート地点だった"というような正確なものはない。前作とずっと繋がっていたからね。とにかく作業をし続けたんだ。

-ツアー中も曲を書いていたんですか?

ツアー中はそこまで書いてなかったけど、Rafael(Cohen/Vo/Gt/Key)は結構ラップトップで作業していた。ショーが終わるとホテルに帰って曲を書いたりしていたな。たまにそのアイディアを俺に見せたりして、そこからふたりで作業したりもしてたよ。

-前作からはどういったフィードバックが得られたのでしょうか?

言葉で説明するのは難しいな。いいフィードバックも得られたけど......究極を言えば、Michael Jacksonの『Thriller』ほど成功はしなかった。あれはがっかりだったね。俺たちは、Michaelの『Thriller』よりもデカイ作品になると思っていたから。

-それはどういった点においてですか?

もちろん3,000万枚売れることを期待していたわけじゃない。でも、もう少したくさんの人が好きになってくれるんじゃないかと思ってたんだよ。でも、万人が好きじゃないという事実がわかると、やはり多少はがっかりするものさ。そうはいっても、いい反応が得られたとは思うけどね。

-今作の制作において1番の鍵となった要素や楽曲はありましたか?

各曲それぞれ全然違うからそれは選べないな。"この曲ができたからレコードの全体像が見えた"というような曲は特にない。それくらい、それぞれすべてに異なる特徴があるんだ。強いて言うなら、「All U Writers」(Track.1)でアルバムの幕を開けたいという気持ちはあったかな。最初のトラックは変わってるから。グルーヴもちょっと他とは違うし、歌詞もおかしいし、同時にうまくストーリーも語っている。俺にとって、あの曲はちょっと変わったジャンルなんだ。テクノ/ハウスっぽくもありながらポップ・ソングでもあって、だからといって伝統的なポップ・ソングでもない。だから、その質問に答えるとしたら「All U Writers」かな。

-では、制作の突破口となったような曲は特にはないのでしょうか?

いくつかあるけど、「All The Way」(Track.6)かもしれない。俺たちにとっての突破口というのは、今までに自分たちがやったことのないことを成し遂げたときなんだ。以前は自分たちに作れると思っていなかった曲ができあがる瞬間。それができあがると、すごく自由を感じる。「All The Way」を作っているときは、その自由を感じられたんだ。90年代のハウスでありながらSONIC YOUTHのような要素もあって......あれは作っていて興奮したな。

-今作は前作、前々作からの変化という大きな流れを汲みながらも、ミニマル・ミュージックやハウスといったクラブ・ミュージックからの影響が色濃く、これまでのどの作品とも違うテイストに仕上がっていますよね。これまでの音楽性の変化の中で、今作はどういった点がこれまでと異なると認識されていますか?

俺が思う異なる点は、今までの中でスタイルが最も幅広いということ。これまでのどの作品よりも遠くに手を伸ばしていると思うし、1番意欲的なレコードだと言えるね。本当に様々なことにトライしたから。

-今作の幅広い作風の背景にあったエネルギーや、制作するうえでの原動力はどんなものだったのでしょうか。

そうだな......エネルギーは、自分たちが聴く音楽からもらっているかも。俺たちはいつも新しいことに興奮するし、そこから、自分たちもそれを成し遂げたいという野望が生まれる。モチベーションは、常に音楽のファンであるということから生まれるし、その音楽に興奮することから大きくなっていくんだ。

-制作中、影響を受けすぎてしまうから他のアーティストの音楽は聴かないというミュージシャンもいますが、あなたたちは違うようですね。

俺たちは、他のアーティストの作品を聴くのが大好きなんだ。音楽を制作するうえでは、オリジナリティはもちろん大切だし、それは自分たちの中からのみ生まれてくるものだと思う。でも、どんなに聴かないようにしたって、自分が1度受けた影響っていうものは、自分の中に深く根づているものだろ? 俺たちにとって、他のアーティストの作品を聴くっていうのは、科学者たちがいろいろなアイディアをお互いにシェアするのと似ている。何か新しい化学反応が生まれたら、それをみんなでシェアして、そこからまたそれを他の誰かが広げて行く。そうすることで、あるアイディアが、1番高いレベルまで達することができるんだ。俺たちにとっては音楽も同じ。他の人のアイディアから何かを学ぶということは、とても重要なことなんだ。様々なアイディアに触れることで、革新が生まれるんだよ。人から何か学びつつ、常に自分たちをその中に入れ込めばいいのさ。他の人から影響されたくないというアーティストたちは、自分を入れ込むことができないんだろうな。曲の中に自分らしさを出せればそれでいい。それができれば、同じものを作るのではなく、そこから変化した作品を作ることができるんだ。