Skream! | 邦楽ロック・洋楽ロック ポータルサイト

MENU

LIVE REPORT

Overseas

!!!

Skream! マガジン 2013年08月号掲載

2013.07.04 @代官山UNIT

Writer 山口 智男

いやー、すごいライヴだった。びっくりした。決してナメていたわけではないんだけれど、完全に認識不足だった。チケットが即日、ソールド・アウトになったと聞いたとき気づくべきだったのだ。気づいていれば……。
最強、あるいは最凶とも謳われるライヴ・バンド、!!!(チック・チック・チック)3年ぶりの来日公演。チケットが即完したことからも多くのファンが彼らの帰還を心待ちにしていたことがわかる。開演時には身動きが取れないほど、すし詰め状態になっていたスタンディング・フロアーはNic Offer(Vo)率いるバンドがステージに現れ、1曲目の「Get That Rhythm Right」を演奏しはじめたとたん、縦に大きく揺れはじめた。
うわ、やばいと思いながら、慌てて揺れに合わせ、体を動かしはじめたものの、“Hey ho there's an open casting call 4 heroes”というファンのシンガロングで演奏がスタートした「All My Heroes Are Weirdos」からどんどん揺れは大きくなっていき、そのままスタンディング・フロアーの真ん中にいたらライヴをちゃんと見ることができないと判断して、後ろに下がることにしたのだが“そこで立ち止まるなよ”と言いたげなお客さんたちの厳しい目つきに負けて、とうとう最後列の柱の陰に弾きだされてしまった(泣)。
うわー、ここじゃステージが見えない。どうしよう?!と思いながら、なんとかステージが視界に入るポジションを確保。ホッとしつつ、大勢の人の頭がぐらんぐらんと揺れている光景の向こうでTシャツに短パンというやけにラフな格好で歌い、踊り、アグレッシヴなまでに観客に訴えかけているNicを眺めながら、なるほど、最凶とはうまいことを言ったものだと感心させられた。
因みに短パンの柄はTHE ROLLING STONESの『Some Girls』のジャケットのイラスト(!!!の「One Girl/One Boy」のPVを参照されたし)。『Saturday Night Fever』のJohn Travoltaを連想させるNicのダンスは、どこかMick Jaggerの動きも思い出させる。
カリフォルニアのサクラメントで結成され、現在はニューヨークを拠点にしているディスコ・パンク・バンドである!!!。誰もが知っているようなヒット・ナンバーを持っているわけではない。しかし、2004年のFUJI ROCK FESTIVAL出演を皮切りにこれまで計7回、来日している彼らはその度に熱演を繰り広げ、日本のファンに自分たちの存在を印象づけてきた。たぶん、中には!!!のダンス・ビートがないと生きていけない体になってしまったというファンも少なくないんじゃないか?!いや、それは大袈裟だとしても8回目の来日となる今回の即完公演はその積み重ねが実った1つの結果。そういう足で稼ぐ地道な活動がちゃんと報われているところがうれしいじゃないか。
気づけば、今年4月にリリースした5作目のアルバム『Thr!!!er』から「Fine Fine Fine」以外の全曲を披露していた。これまでアルバムにおいてもライヴ感を重視していた彼らが緻密なスタジオ・ワークに挑んだ『Thr!!!er』は、ある意味、ポップとも表現できる新境地をアピールしたが、それに対して、やはり物足りないと言う意見もあった。しかし、その『Thr!!!er』の曲もどうだ。ライヴではしっかりとライヴ・ヴァージョンに生まれ変わり、過去の代表曲に負けないぐらい観客を盛り上げた。因みに「One Girl/One Boy」ではアルバムに参加していたSonia Mooreのピンチヒッターを、メンバーの奥さんの友人だという日本人の女性シンガーが見事、務めた。
アンコールを含め、1時間半に及んだライヴは彼らのライヴを待ち焦がれていたファンを大いに満足させたはず。ただ、『Thr!!!er』の曲を軸にしたセットリストや現在の彼らからすると、若干小さいように思える会場を考えると、東京1夜限りだった今回の来日公演は『Thr!!!er』のショウケースという意味合いもあったのかもしれない(追加公演として、翌日のイベントにも急遽、出演した)。すでに本格的な来日ツアーの計画が進行中だというから、!!!は近いうちに日本にまた戻ってくるに違いない。

  • 1